東日本大震災:「逃げる」基本に対策を 復興会議が提言

2011年6月25日 21時27分 更新:6月26日 0時51分

東日本大震災復興構想会議で菅直人首相(右)に提言を渡す五百旗頭真議長=首相官邸で2011年6月25日、久保玲撮影
東日本大震災復興構想会議で菅直人首相(右)に提言を渡す五百旗頭真議長=首相官邸で2011年6月25日、久保玲撮影

 政府の東日本大震災復興構想会議(五百旗頭真(いおきべまこと)議長)は25日、12回目の会合を首相官邸で開き、復興ビジョンをまとめた「復興への提言~悲惨のなかの希望~」を菅直人首相に提出した。提言は今後の災害対策を、被害を最小限に抑える「減災」の考え方を基本にすべきだと指摘。住居の高台移転や土地利用規制の緩和などによる復興プランを示した。地域・期間を限って規制緩和や税制優遇を認める「特区」活用も促した。復興財源は「復興債」で賄い、「基幹税」(所得税、消費税、法人税)を中心とした臨時増税で償還するよう求めた。

 同会議は復興基本法で首相への提言機関と正式に位置付けられ、提言を受け取った菅首相は「後世に残る重厚な提言をいただいた。最大限生かしてこれからの復興に当たりたい」と語った。政府は提言をもとに7月中にも復興の基本方針を定め、11年度第3次補正予算案に反映させる。

 提言は「大災害を完全に封ずることができるとの思想ではなく『減災』の考え方が重要」とし、「『逃げる』ことを基本とする防災教育徹底などソフト面の対策の重視」を提唱した。

 被災地を地形や津波被害などの状況に応じて、(1)平地の都市機能のほとんどが被災(2)平地の市街地が被災し、高台の市街地は被災を免れた(3)斜面が海岸に迫り平地の少ない市街地・集落(4)海岸平野部(5)内陸部や液状化被害地域--の5類型に分類。このうち(1)~(4)は復興のイメージを図でも示した。津波被災地は市街地の高台移転を基本とし、平野部を農地や工業用地とするなど利用形態の再編を提言している。

 復興財源は将来に負担を先送りしないため、臨時増税を「多角的に検討」するよう求めたが、与野党の批判や委員間の意見の違いを考慮して具体的な税目には触れなかった。

 復興の主体は「市町村が基本」とし、「特区」の活用などを提唱。産業再生では、漁港や平野部の農地の集約を提案した。

 福島第1原発事故では国に「一刻も早い事態の収束」を求めた。また、東北地方に再生可能エネルギーの関連産業を集積し、福島県を「先駆けの地」とするよう促した。再生可能エネルギー固定価格買い取り法案の早期成立も求めた。

 提言は当初「第1次」とされたが、五百旗頭議長は「先の展開を予知できない」と「1次」の位置付けを撤回。年内としてきた最終提言が行われない可能性を示唆した。背景には退陣を表明した首相の求心力が落ち、提言の実現性が不透明なことがある。【中井正裕】

 ◇「復興への提言」のポイント

・災害時の被害を最小化する「減災」の考え方が重要

・地形、産業が多様な被災地を5類型に分け、復興施策のポイントを提示

・区域・期間を限定し、規制・権限の特例などを設ける「特区」手法の活用

・復旧・復興財源は、次の世代に負担を先送りせず、臨時増税措置を基幹税を中心に多角的に検討

・国は一刻も早く原発事故を収束させ、原因究明と影響評価、事故対応の妥当性の検証を徹底的に行う

・再生可能エネルギー導入を加速。全量買い取り制度の早期成立、実施が不可欠

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