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| (9時間51分前に更新) | |||
協議会が選定した公民教科書は、教科に精通した教師ら調査員が推薦したものではなく、「新しい歴史教科書をつくる会」の流れをくむ育鵬社の公民教科書だった。
十分な説明や議論もないままの突然のルール変更、調査員が推薦していない教科書の選定―。全ては、このためだったのかと結論ありきの感が拭えない。
石垣、竹富、与那国の3市町の関係者で構成する「教科用図書八重山採択地区協議会」(会長・玉津博克石垣市教育長)が、2012年度から4年間、同地区の中学校で使用する公民の教科書に育鵬社版を賛成多数で選んだ。
歴史教科書には、八重山で多くの被害を生んだ戦争マラリアに関する記述が唯一ある帝国書院の教科書を賛成多数で選んでいる。
育鵬社の「新しいみんなの公民」は、どのような内容か。
日本の安全と防衛について「戦後の日本の平和は、自衛隊の存在とともにアメリカ軍の抑止力に負うところも大きい」と積極的に評価している。一方で、在沖米軍基地に関する表記は欄外で「在日米軍基地の75%が沖縄県に集中しています」とある程度。県民の過重負担や米軍普天間飛行場移設問題などに触れていないところに意図的なものを感じる。
世界平和への貢献についても、自衛隊の海外派遣の意義を強調し、軍縮へのリーダーシップなど、軍事力に頼らない平和への努力や憲法9条が果たしてきた役割は、ほとんど記述されていない。
教科書採択の流れは次の通りだ。協議会は3市町教委から諮問を受け選定作業を始める。会長が教科ごとに委嘱・任命した調査員が精査・報告し、協議会は9教科15種目を選定する。その結果を地区教委に答申し、それぞれの教委が最終決定する。
玉津会長は「しっかりと研究を重ねて、教科書を選定できた」と述べたが、制度を大きく変更した以上、選定会議でどのような意見が交わされたのか、説明責任をきちんと果たすべきだ。
国境に近く、古くから近隣の国々と交流を重ね、友好関係を築いてきた八重山の子どもたちが学ぶのに適した教科書か、疑問符が付く内容だからだ。
認識の偏りなどから、「つくる会」系の教科書を採用している自治体は、全国的に見ても少ない。
その中で、なぜ八重山で唐突な動きがあったのか。次々と明らかになる同地域への自衛隊の配備計画と、今回の教科書の問題が見えないところでつながっているのではないか、懸念を持たざるを得ない。
同地区での教科書採択は、これで決まったわけではない。協議会は今後、選定結果を3市町の教育委員会に答申し、それぞれの教委で審議する。
このうち竹富町の慶田盛安三教育長は、協議会開催に先立ち、「つくる会」系教科書を協議会が選定した場合でも、町教委で不採択を提案する考えを明らかにしており、混乱も予想される。
教科書は誰のためのものか。内向きでなく未来に開かれたものでなければならない。