ドライオーガズムとは
まずはじめに、「ドライオーガズム」とは何でしょうか。
簡潔に言ってしまうと「男性が射精せずに、性的快感の絶頂に達すること」です。私個人は、射精を中心にオーガズムの定義を考え、射精とオーガズムの峻別を妨げるこの言葉が、あまり好きではないのですが、射精のオーガズムが精液で濡れるのに対してドライ、ということのようです。
一般にオーガズム(orgasm)は、(i)興奮期、(ii)高原期、(iii)オーガズム期、(iv)消退期の4段階を経て、(i)興奮期、(ii)高原期において性器周辺の充血・発汗が、(iii)オーガズム期において発汗に加えて、特に骨盤底筋群を中心とする筋肉の硬直や不随意収縮など無意識的な身体反応が観察されるとされます。
ドライオーガズムは、上記のオーガズムの条件を備えたうえで
- ときに射精のオーガズムより遥かに大きな快楽を伴う
- ときに1回のオーガズムが数分も続くことがある
- ときにオーガズムが果てしなく連続する
- ときに四肢までもを含む広範囲の筋組織の不随意の硬直・緊張・痙攣および解放を伴う
などといった特徴が見られます。
1.射精のオーガズムより遥かに大きな快楽
射精しないのに、どうしてオーガズムだと分かるのか?これは、とくに男性には理解の難しい問題かも知れませんね。しかし、あなたの射精のオーガズムもハッキリしている時と、単に射出した感覚程度の弱い時があるでしょう?そして、それがどんなに微弱でも、オーガズムとそれ以外の性的快感は区別できますよね?
ドライオーガズムもそれと同じで、到達すれば、必ずそれがドライオーガズムであると分かります。
これは、「イクというのがどういうことなのか分からない」と言っていた女性がオーガズムを体験した時に、それがハッキリ分かるというのと同じです。つまり、「ドライオーガズムに達したかどうか確信できない」うちはまだ達していないということになります。
それが射精の何倍であるか、というのは主観の問題でもあり簡単ではありませんが、体験者の多くが図のようにイメージをしているようです。感覚的な問題をこの種のグラフで表現することに、いかがわしさを感じる方もいるでしょう。しかし、これを科学的グラフではなく「感覚的表現の方法」とすると同意される方が多いようで、またそれがこの種のグラフが多用される理由なのだろうと考えます。
その意味では、ドライオーガズムのもたらす快楽の理解の手助けにしてよいでしょうし、私自身の実感とも共通します。「射精のオーガズムの数十倍、数百倍」という体験者の表現からすると、実際にはもっと差があるのでしょうが、巨大な図になってしまいますね。
これをご覧になった男性は、「自分の快感はこんなにちっぽけなのか」と落胆されるかもしれません。その落胆は無用のものであると、このサイトの中で説明して参ります(特に「ドライオーガズムとは>男女のオーガズム>実は男性の方がオーガズムに恵まれている?」において)。そして、青いグラフのオーガズムすら得られない女性が多数なのだということも心にとどめておいてください。そのことは、あなたがいずれ大きな悦びに目覚めた時に、必要な理解になるかもしれません。
さて、以下に、詳しく見ていきましょう。
2.1回のオーガズムが数分続くことも
ドライオーガズムは、強烈なだけでなく時間が長いことも特徴です。 短いこともあるのですが、それでもオーガズムの始まりから終焉して落ち着くまで30秒程度は続くでしょうか。射精のオーガズムが、上記(iv)消退期の落ち込みが急激で、まるでジャンプをして落下するかのようにぶつ切りで終わるのと比較すると、離陸して着陸するかのようなプロセスをたどります。
そのフライトは、各回によって様々で非常に多様です。低空飛行のこともあれば急上昇して高空飛行からアクロバット飛行に移行するようなこともあり、長短も様々です。射精のオーガズムはほぼ数秒の出来事ですが、ドライオーガズムは数分にも及ぶこともあり、オーガズムの最中にあまりの快楽の強烈さと、長さのために意識が遠のいたり(ときにしばし失ったり)、身体があまりに硬直するために呼吸不能に陥ったりという経験も少なくありません。連続するとき(マルチプルオーガズム)には、離陸してから低空、高空、急上昇や急降下、アクロバット飛行、ときに慣性飛行などの繰り返しで飛びっぱなし、ということになりますね。上図はそのときを表現しています。
女性のオーガズムを「空を飛ぶよう」とか、逆に「落ちる」とか、または「頭が真っ白になる」などと表現することがありますが、これらの表現が出て来たわけが、ドライオーガズムを経験すると本当によく分かります。
詳しくは、別項に譲りますが、女性が膣内やその奥深くで感じるオーガズム(いわゆるポルチオオーガズムなど)と、深いドライオーガズムは同じと考えられるからです。
3.果てしなく連続するオーガズム(マルチプルオーガズム)
これも、一般的な男性には理解の難しい事項かも知れません。 と、いうのも、多くの男性にとってオーガズムとは射精を伴い性行為の終着点を意味するからです。
ドライオーガズムは連続して得ることが可能です。 1回が長く、そしてそれが続くため、ときに数十分もの間、ほとんどオーガズム状態となることも珍しくありません。連続と言ってはいますが、1つのオーガズムが終わらないうちに多重的にオーガズムが次々と折り重なるような感覚に襲われたり、その1つ1つが長いために、実のところどこからどこまでが1回で、連続したのが何回なのかというのを説明するのは自分でも難しいのです(それ以前に、あまりの快楽で数など数えていられませんが)。
4.ときに四肢までもを含む広範囲の筋組織の不随意の硬直・緊張・痙攣および解放
女性がオーガズムの際に、膣を中心に、ときに全身を痙攣させたり硬直させたり、絶叫したりするのと同様に、男性のドライオーガズムの際にも
- 骨盤底筋や全身を硬直・痙攣させながら絶叫する
- 身体が自らディルドやエネマグラを強烈に締め付けようとする
- 強烈な快感に伴って筋肉が不随意に収縮し、一気に解放される
- 解放プロセスで0.8秒程度の間隔で不随意収縮を繰り返す
といった共通点がみられます。この全身の痙攣や硬直は、最中に足や臀部の筋肉が「つる」とか、翌日に肩が凝るとか首筋や腹筋、腰などが痛むといった症状として現れるほど、激しい筋肉の緊張・硬直そして解放を伴うものです。この強烈なドライオーガズムの最中には、腰を浮かせてのけぞったり、逆に腰を付けて両足を痙攣するように空中にさまよわせたり、さらに上半身も15cmくらい起した状態で硬直していたりと、通常であればかなり保持が辛いはずの姿勢で硬直・痙攣し、数十秒から数分もの間、快楽に耐えているということが往々にしてあります。
そのときに、当人はどのような感覚を味わっているのでしょうか。
射精の数百倍にも及ぶとは、どんな快楽か
へ続きます。
人が深いオーガズムを求めるわけ
もともと人間の性は、リプロダクションの性とオーガズムの性との組み合わせによって成り立っているものなのです。もしも、人間の性行為が動物と同じように、子を生むだけが目的であるならば、そこには当然シーズン性があってもよいはずです。ところが現実の人間の性行為には、シーズン性は介在していません。まさにオーガズムの性こそ、人間の性と動物の性を遠くへだてる文化の産物といってよいでしょう。
―― 吉武輝子