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「放送外収入」を増やすという私利私欲行為の宣伝に電波が安価に利用されているという事実

木走日記

木走正水(きばしりまさみず) プロフィール


■クロスオーナーシップがなぜ生まれてしまったのか〜ライバルのいない独占「事業」TV放送に群がる魑魅魍魎達(読売、毎日、産経、出遅れた朝日、日経)

 欧米の先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェックを確保するために、新聞社と放送局が系列化する「クロスオーナーシップ」を制限・禁止する制度や法律が設けられていますが、日本ではこれが抑制できませんでした。
 
 その結果、読売新聞と日本テレビ、朝日新聞とテレビ朝日、産経新聞とフジテレビ、毎日新聞とTBSといった新聞とテレビ・ラジオの系列化が進み、テレビが新聞の再販問題を一切報じないことなどに見られるようにメディア相互のチェック機能がまったく働かず、新聞もテレビも同じようなニュースを流し、ある事象には今回のように同じように沈黙するという弊害が生じているのです。
 
 なぜ日本ではクロスオーナーシップの悪弊がはびこってしまったのか、それはTV放送の創生期にまで遡ると見えてくるのです。
 
 日本最初の民放である日本テレビ放送網が本放送を開始するのは、昭和28年(1953年)8月、今から60年前のことであります。
 
 この新しいメディアであるテレビにもっとも執心していたのが当時の読売新聞社社長である正力松太郎であり、当時の正力は読売新聞社長という枠を越えてたいへん精力的に活動しています、TV放送にもいち早く法整備の段階から参画し日本初の民放である日本テレビの初代社長にも本放送開始前の昭和27年(1952年)就任しています。

 TVに限らず電波は有限であり限られた公共財でありますから、民間放送枠も限られています、したがってTV放送は多くの国々で国による認可制(免許制)を取っているのですが、日本で最初の民間免許を取得したのが読売新聞グループだったわけです。
 
 あわてた他の新聞社が読売に追随してTV放送免許を取得していきます。
 
 7月に地デジ化されましたが、それまでの東京キー局のチャンネルの順番がそのまま、免許取得の順番を時系列で表しています、4チャン(日テレ・読売新聞G)、6チャン(TBS・毎日新聞G)、8チャン(フジ・産経新聞G)、10チャン(NET(後のTV朝日)・朝日新聞G)、最後に12チャン(東京12チャンネル(後のTV東京)・日経新聞G)と相次いでクロスオーナーの系列が完成していきます。
 
 当時発行部数日本一だった朝日新聞が後に読売新聞に抜かれるわけですが、このTV放送進出に読売に大きく後れを取ったことも敗因のひとつに上げてよろしいでしょう。
 
 さてテレビ局は民間会社とはいえ、限られた電波を独占しているわけですから、営利追求に走ることなく、当然ながら公共の利益をしっかり守ることが第一に求められています。

 放送法第四条にも明確に放送番組の編集に縛りを与えています。
第四条  放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
<データソース>
放送法(昭和二十五年五月二日法律第百三十二号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO132.html
TV局の電波使用料はその「公共性」をかんがみきわめて安く抑えられてきたのです。

 これにより彼らは「例えば、日本テレビが支払う電波利用料は年間わずか3億7600万円なのに対して、売上高はその738倍の2777億円。TBS、テレビ朝日、フジテレビなど他のキー局も電波を格安で仕入れ、その数百倍の収益をあげている。まさに「濡れ手で粟」の商売」(週間ポスト10年11月2日記事)という、独占事業をいいことに荒稼ぎをしてきたのです。
テレビ局の「電波使用料」は売上高のわずか0.14%しかない
2010.11.02 10:00
本誌は総務省への情報公開請求によって、テレビ局が「公共の電波」を独占することでどれだけ荒稼ぎしているかを示す資料を入手した。

テレビ局は国(総務省)から電波の割り当て(放送免許)を受け、毎年、電波利用料を支払っている。下表はNHKや民放各社が国に支払っている「電波利用料」と売り上げを比較したものだ。

例えば、日本テレビが支払う電波利用料は年間わずか3億7600万円なのに対して、売上高はその738倍の2777億円。TBS、テレビ朝日、フジテレビなど他のキー局も電波を格安で仕入れ、その数百倍の収益をあげている。まさに「濡れ手で粟」の商売である。
【NHK】
電波利用料(A):14億8700万円
事業収入(B):6644億円
Bに占めるAの割合:0.22%
【日本テレビ】
電波利用料(A):3億7600万円
事業収入(B):2777億円
Bに占めるAの割合:0.14%
【テレビ朝日】
電波利用料(A):3億7000万円
事業収入(B):2209億円
Bに占めるAの割合:0.17%
【TBS】
電波利用料(A):3億8500万円
事業収入(B):2727億円
Bに占めるAの割合:0.14%
【テレビ東京】
電波利用料(A):3億6000万円
事業収入(B):1075億円
Bに占めるAの割合:0.33%
【フジテレビ】
電波利用料(A):3億5400万円
事業収入(B):1717億円
Bに占めるAの割合:0.21%
【その他、地方局計】
電波利用料(A):9億1251万円
事業収入(B):1兆2525億円

Bに占めるAの割合:0.07%
【全国128局計】
電波利用料(A):42億4641万円
事業収入(B):2兆9676億円
Bに占めるAの割合:0.14%
※週刊ポスト2010年11月12日号

http://www.news-postseven.com/archives/20101102_4829.html
この記事によれば、全国のテレビ局の総計でわずか42億4641万円しか電波使用料を払っていません、それに対して彼らの売り上げは2兆9676億円にも登っているわけです。

 この42億という数字、これがいかに安価なのか、例えば平成19年度におけるこの国の電波利用料収入は653.2億円ですが、なんとそのうち80%は我々国民が使用する携帯電話会社が負担しています、携帯電話会社が負担これすなわち通話代金を通じて私たち国民が負担しているわけです。

 この国のマスメディアは、テレビ局の電波使用料の値上げ案に関しては「公共の電波」を理由に反対し、都合よく自分達の「報道の自由」を前面に押し出し「国民の知る権利を守るため」といいつつ、実際に新規参入が認められないその独占市場である電波を安く使って「殿様商売」をしてきたわけです。

 このTV局の電波利権の問題は、クロスオーナシップの弊害によりラジオ局も大新聞も誰も報道できないこの国のマスメディアのタブーとなっていったのであります。
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