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【社会】

挑発やねだり…ほぼ全員経験 里親の苦悩、孤立深く

2011年8月24日 07時07分

 東京都杉並区で里子の女児=当時(3つ)=を虐待死させたとして、里親が逮捕された。この里親は容疑を否認している。ただ、里親を経験した人たちに聞くと、里子と信頼関係を築くのは容易ではなく、苦悩を深め、虐待の危険を身近に感じた体験を語る人も。問題を共有しにくいため孤立しがちになる里親の支援を求める声も上がっている。 (杉戸祐子、竹上順子、沢田佳孝)

 「里親による虐待は『あってはならないこと』ではなく、『あっても不思議じゃない』と考えるべきだ」。三人の実子を育てながら、児童約百人の里親となってきた「全国里親会」評議員西川公明さん(68)=川崎市麻生区=は話す。

 苦労は数知れない。一歳半で委託された女児は西川さんと妻(69)に懐かず、半年間、夫妻の顔を見ると泣きわめいた。背負って散歩すると、すれ違う人に両手を差し向けて叫び、助けを求めた。週一日、「泣かない日」をつくるところから始め、めったに泣かなくなったのは小学校高学年になってからだった。

 実母による虐待が原因で委託された四歳の女児は大人を怒らせ、もてあそぶような言葉で挑発し、夜中になると泣き叫んで「ピャー」という奇声を発した。「バカ!」「ハ(ヤ)クシネ!」「ババのオッパイ、ウンコ付いてる」などと繰り返す三歳の男児もいた。

 「子どもは大人に相手にしてほしくてちょっかいを出してくる」と西川さん。「自然と自分にセーブがかかるが、どうしてもムカッとすることはあるし、虐待する里親の気持ちが理解できたときもある」と明かす。

 赤ちゃん返りなど、里親を困らせるような「試し行動」はほぼすべての里子にみられるという。児童相談所に長年勤務し、十三年前から里子の女の子(16)を育てる津崎哲郎・花園大特任教授(児童福祉論)は「この大人は信用できるのか、自分を本当に受け止めてくれるのかを知ろうとしている」と説明する。

 里親の元に来てしばらくは、子どもも警戒して「見せかけのいい子」の時期が続くが、少したつと、おんぶや抱っこ、買ってほしいものをねだり続けるなど際限のない要求が出始める。

 児相では、里親に試し行動があることを事前の研修で知らせているが、津崎特任教授は「しっかり伝えられているかどうか疑問」と指摘する。里親の専門担当者がいる児相が少ない上、職員が三〜四年で異動するため、必要な配慮やノウハウが蓄積されていないケースが多いという。

(東京新聞)

 

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