日本は医療データの「収集・分析・臨床へのフィードバック」のサイクルが、全く成立していないことは、以前より感じていたことだが、今日は、日本の医療データ分析が「この程度」なのだという一つの事例を紹介しよう。
日経メディカルオンラインに「レセプトを読み解く」と題する連載がある。
この連載をしているのは、日本の医療データ分析分野で著名な、
株式会社日本医療データセンターの社長、木村真也氏である。
日本医療データセンターは、複数の大手健康保健組合からの
レセプトや健診データを1000万件ほど集め、
分析対象となる健保加入者数は77万人という
この分野では、日本を代表する企業である。
2011年2月7日、日経メディカルオンラインに
「2型糖尿病の癌発症率は高い」は本当?
という記事が載った。
「2型糖尿病に罹患する患者の癌発症率は高い」
という仮説をレセプトデータから検証しようとした記事なのだが、
この記事を読めば読むほど、
「日本の医療データ分析の実態はこんなものなのか?」
と、がっかりするとともに、
「こんな、いい加減な記事を載せて、恥ずかしいと思わないのか?」
と、社長の木村真也氏の見識を疑わざるを得ない。
以下、まとめてみた。
・記事では「無癌生存率」「固形癌」と表記しており、「癌」と「がん」を区別せず、一律に「癌」としている。この代表的な用語の違いも分からないようでは、日本医療データセンターが持っているデータの品質はどんなものか? どの程度信用できるのか?言うまでもない。
・分析の対象者は大手健康保健組合の加入者である。健康保健組合の加入者は主に20歳〜60歳が対象だ。一方、がんの罹患者は多くの場合、50歳ぐらいから少しずつ増加し始める。実際に「がん」に罹患する多くの患者は、その企業を退職した後だ。日本医療データセンターのデータは、がん患者の多くを認識することすらできないだろう。さらに、がん罹患後の「死亡」まで追いかけることは夢のまた夢だ。
・日本医療データセンターのレセプトデータは、最も長いデータで80カ月、つまり7年もないのだ。糖尿病とがんの関係を調べるには、あまりにも観察期間が短すぎる。がんになったのは、糖尿病が影響しているのか?仮説を検証することは困難だ。それにもかかわらず、分析を行っているのは「医学常識を知らない」からと言えよう。「医学常識を知らない」企業が集めたデータを信用していいものなのか?日本医療データセンターのデータは、カネをかけて何の役にも立たない単なるゴミを集めている可能性すらあり、他のデータを含めて信用していいものなのか疑わしい。
・「無癌生存率」(※この癌は誤り。原文のまま)と題する2枚のグラフ。生存分析をする際によく使われるplan-Meiyer-Methodを使っているが、出てきたグラフはガタガタ。数名しか残ってないだろうと思わせる曲線である。このグラフは何の意味があるのか?仮説を検証できたと思っているのだろうか?こんなグラフをよく発表できるものだなと感心する。
日本の医療データの収集・分析分野の大手、
木村真也氏が率いる株式会社日本医療データセンター。
その社長が書いた日経メディカル・オンラインの記事を見ると
・医学の基本用語がわかってない
・医学常識を知らない
・医学統計が分かってない
この会社が集めるレセプトデータの品質は大丈夫なのだろうか?
「ノー。信用できない」が答えになるだろう。
他の日経メディカルの記事を見ても同様の問題が散見される。
「日経メディカルに記事を載せれば、宣伝になるだろう」ぐらいに
木村真也氏は思っているのだろうが、現実はその期待と逆で、
木村氏の信用、会社の信用を失っていると言ってよいだろう。
50人ぐらいの社員がいるようだが、
こんな会社の信用を落とすような記事を書く社長に
誰も注意をしないのだろうか?
このいい加減な会社と社長で、よく仕事が回るものだと思い、
株式会社日本医療データセンターの登記謄本や財務諸表を取り寄せてみた。
現在、オリンパスの関連会社になっているが、
創業以来、ずっと赤字で、一度も黒字になっていないようだ。
何度となく債務超過状態になり、そのたびに資本をいれているようだ。
こんな品質の仕事しかできないのようでは、無理もない。
残念だが、これが日本の医療データ分析の実態である。
2011年07月09日
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会社の内情もご想像の通りです。。
「創業以来ずっと赤字で、そのたびに資本を・・」や、「カネをかけてゴミ集め・・」まさにその通りです。。
「このいい加減な会社と社長で、よく仕事が回るものだ」
→実際、管理能力に乏しく属人化、顧客に指摘されデータを修正する始末です・・・
表向きはクリーンなイメージに映るかもしれませんが、現実は親会社への見せかけばかりの低品質な製品開発が乱立していて、作っては捨て、の繰り返しです。
健保加入者向けの個人サービスもミスが続き(根本解決しようとしない)、他人の疾病情報がDMで通知されたことも・・。