創業100年超え企業（個人企業、各種法人を含む）は、全国で2万1,000社(2009年9月30日時点)あった。都道府県別では山形の構成比が最も高かった。

　本調査は、東京商工リサーチの企業データベース（集計時点のtsr-van2提供社数225万1,071社）のうち創業年データ（対象：214万4,155社）から、創業100年超え企業（創業1908年以前）を抽出し、集計・分析した。

◎「創業は易く守成は難し」、世界的名門企業も破綻する時代

　米国サブプライムローン問題に端を発した世界同時不況で、世界経済は「100年に1度」の危機状況に陥った。その余波は米国経済の象徴である自動車産業を直撃し、ビック3のゼネラル・モーターズ（ＧＭ）とクライスラーが経営破綻した。

　このうちＧＭ（創業1908年）は創業100年を超える名門で、企業が永続的に繁栄することの難しさを垣間みせた。

◎創業100年超え企業は、全国で2万1,000社

　東京商工リサーチの企業データベースから抽出した創業100年超え企業数（個人企業、各種法人を含む）は、今年9月30日時点で2万1,000社にのぼり、全体に占める構成比が0.98％となった。

　創業年代別でみると、明治以降の創業が1万7,238社（構成比82.0％）で8割を占めるが、奈良時代までさかのぼる企業もみられた。また江戸時代創業は3,496社（同16.6％）だった。大まかな区分でみると、明治30年から39年までの創業が5,631社で最も多く、次に明治20年から29年までが4,250社、明治10年から19年までが2,686社となった。

◎最古の創業企業は、西暦578年の金剛組

　創業が確認できた企業（宗教法人を除く）のうち最も古かったのは、寺社建築工事の（株）金剛組（大阪府）で創業が西暦578年（敏達天皇6年）だった。同社は飛鳥時代に四天王寺建立のために創業され、2006年に旧金剛組から建設事業を継承して新会社として再出発した。

　次に「いけばな」の（財）池坊華道会（京都府）が同587年（用明天皇2年）。甲州西山温泉で旅館経営の（有）西山温泉慶雲館（山梨県）の同705年（慶雲2年）。城崎温泉で旅館経営の（株）古まん（兵庫県）の同717年（養老1年）。粟津温泉で旅館「法師」を経営する（有）善吾楼（石川県）の同718年（養老2年）と由緒ある湯治場の老舗旅館が続く。

◎創業100年超え企業構成比、都道府県別の最高は山形

　都道府県別の創業100年超え企業数では、東京が2,368社でトップ。次に大阪が1,164社、愛知1,103社、京都1,032社、新潟886社、兵庫730社、静岡725社、長野612社と続く。

　都道府県別において、創業100年超え企業構成比が最も高かったのは、山形の2.5％。次に京都の2.4％だった。山形は酒蔵や旅館が目立ち、京都は呉服・帯地、染色など和服関連が多かった。このほか新潟2.3％、三重1.98％、長野1.96％、滋賀1.93％、福井1.93％、福島1.8％と続く。全国平均の0.98％を上回ったのは35府県にのぼった。

　これに対して構成比が低かったのは、沖縄の0.07％、神奈川0.47％、北海道0.48％、宮崎0.52％、東京0.53％、鹿児島0.55％の順。

◎地区別社数、近畿が最多

　全国9地区（関東は東京を除き、近畿は北陸3県を含む）のうち、創業100年超え企業数が最も多かったのが近畿の4,606社だった。次に関東4,122社、中部3,355社、東京2,368社、東北2,049社、九州1,722社、中国1,416社、四国907社、北海道455社の順だった。

◎売上高別、年商5億円未満が6割を占める

　創業100年超え企業を売上高別でみると、年商5億円未満が1万3,784社（構成比65.6％）となり全体の6割を占めた。また年商10億円以上は4,494社（同21.4％）で、このうち年商100億円以上が1,096社（同5.2％）だった。さらに上場企業は388社（同1.8％）で、資本金1億円以上が1,662社（同7.9％）となった。

◎業種別社数、卸売業,小売業が最多

　業種別では、創業100年超え企業が最も多かったのは卸売業,小売業の9,924社だった。次に製造業5,709社、建設業1,864社、宿泊業,飲食サービス業828社、不動産業,物品賃貸業が732社と続く。また創業100年超え企業の構成比が最も高かったのは学校法人など教育,学習支援業の2.17％だった。次に製造業の2.12％、卸売業,小売業の1.9％、漁業の1.7％の順となった。

◎都道府県別、長寿企業が目立つ業種は旅館、酒類製造、薬品関連、菓子製造

　都道府県別での創業年の古い上位3社の業種をみると、最も多かったのが旅館,ホテルの21社、次に清酒などの酒類製造が17社、菓子製造販売が10社、薬品製造販売が9社と続く。

　「100年に１度」の世界同時不況により、行き過ぎた「利益至上」のグローバリゼーション型経営に疑問符が打たれ、これに伴い「日本型経営」の見直し機運が高まってきた。日本型経営の長所は、創業100年超えの長寿企業で随所に見られる。具体的には、「本業を重視しながら、時代に合わせて変化する柔軟性」「身の丈にあった経営」「従業員重視の信頼経営」などが挙げられるが、このほかに創業当初の家訓や、社是などを保持しているところも多い。

　長寿企業は地域経済の核であり、地域の多様性を維持するうえで欠かせない存在でもある。先行きの不透明感が深まるなか、その柔軟性としたたかさを学ぶ必要がある。