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2011年8月24日(水)付

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前原氏立候補―政策論争にかじを切れ

民主党代表選に前原誠司氏が立候補を表明した。外国人献金問題で3月に外相を引責辞任したばかりで、今回は出ないと言われていたが、きのう方針を転換した。党代表や重要閣僚を歴任[記事全文]

農業大規模化―戸別補償制度を見直せ

わが国の農業の大きな課題である経営規模の拡大へ向けて、ようやく具体的な数値目標を掲げた動きが出てきた。政府の「食と農林漁業の再生実現会議」(議長=菅首相)は米作などを念[記事全文]

前原氏立候補―政策論争にかじを切れ

 民主党代表選に前原誠司氏が立候補を表明した。外国人献金問題で3月に外相を引責辞任したばかりで、今回は出ないと言われていたが、きのう方針を転換した。

 党代表や重要閣僚を歴任し、知名度のある政治家が名乗りをあげたことで、ようやく少しは代表選らしくなってきた。

 27日告示、29日投開票の短期決戦には、中堅からベテランまで、いまのところ7、8人が取りざたされている。

 新代表は首相として東日本大震災の復旧・復興を担いつつ、鳩山、菅と2代続けて挫折した民主党政権を立て直すという重責を担う。そんな覚悟と準備を、候補者たちは果たしてできているのだろうか。

 乱立模様の一因として、新代表は来年秋の全党員が投票できる代表選までの「つなぎ」に過ぎないという考え方があるようだ。しかし、またまた任期1年の首相をつくろうというのか。これほど国民を愚弄(ぐろう)した発想はない。

 すでに政権運営能力に巨大な疑問符がつけられた民主党にとって、「暫定首相」などありえない。新代表が解散・総選挙を仕掛けることもありうる。前原氏の参戦は、そんな「本格首相」選びへの転換点になろう。

 すぐに政策論争を始めてほしい。そのためには、立候補するなら現職閣僚であっても菅首相の正式な退陣表明を待つことなく、所信を発信すべきだ。

 これまで、複数の立候補予定者が、党員資格停止中の小沢一郎元代表を訪ねたり、その処分解除を口にしたりしている。最大勢力の小沢グループの支持を取り付けたい気持ちはわからないではない。だが、いつまで「小沢か脱小沢か」という内輪もめをさらし続けるのか。

 小沢氏の処分は、党の機関が手続きを踏んで決めた。刑事裁判の判決も出ていないのに、見直す理由などない。そもそも、代表選の争点に浮上すること自体が見るに堪えない。

 「小沢詣で」のより深刻な問題点は、グループの票を欲しさに、候補者たちが基本政策や主張をあいまいにする傾向がみられることだ。

 これでは、党所属国会議員にも、国民にも、十分に判断材料を示せない。

 候補者は首相になるという気構えのもと、堂々と政策の旗を掲げなければならない。そして議員は、一人一人が全国民の代表であることを深く自覚して、投票行動を決すべきだ。それなくして、この危機のさなかに、代表選をする意味はない。

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農業大規模化―戸別補償制度を見直せ

 わが国の農業の大きな課題である経営規模の拡大へ向けて、ようやく具体的な数値目標を掲げた動きが出てきた。

 政府の「食と農林漁業の再生実現会議」(議長=菅首相)は米作などを念頭に、今月まとめた中間提言で「平地で20〜30ヘクタール、中山間地域で10〜20ヘクタールの規模の経営体が大部分を占める構造を目指す」とうたった。

 全国農業協同組合中央会(JA全中)も、今春の提言で同様の目標を示した。

 現状は、1ヘクタール未満が55%を占め、平均2.2ヘクタール。これを10倍程度に広げる意欲的な内容だ。

 零細農家への配慮から大規模化の目標を掲げてこなかった状況を変えたのは、昨年の農業調査の結果である。

 仕事として主に農業をしている人は、5年前の前回調査から19万人近く減って205万人余となり、平均66.1歳。昭和1ケタ生まれが4分の1強の59万人を占めた。昭和1ケタ生まれといえば最も若い人でも70歳代後半だ。時間的余裕は少ない。

 大規模化を目指して何をすべきか。まずは戸別所得補償制度を抜本的に改めることだ。

 制度が始まった昨年度はコメが対象だった。面積単位で一定額を支払う固定部分と、実際の平均販売価格が標準的な販売価格を下回った際の差額を補う変動部分の2本立てだ。

 ただ、規模とは関係なく対象としたため、大規模化どころか、他の農家などに農地を貸していた人が再び自ら耕作し始める「貸しはがし」を招いた。今年度は、品目を小麦など畑作物にも広げつつ、農地を集約した場合に受け手側に出す「規模拡大加算」を設けた。

 しかし、総額8千億円の予算のうち、規模拡大加算は100億円にすぎない。農地を集約する際、市町村や農協が仲介役を務める制度を使わねばならないなど、制約も多い。

 もっと踏み込んだ仕組みが必要だ。面積が一定以下の零細農家を補償対象からはずしたり、農地を貸す側も資金面で支援したりすることが一案だろう。

 「消費者負担型から財政負担型の透明性の高い農政に」。農林水産省は戸別補償の狙いをこうPRする。消費者負担型の典型は、価格支持につながる減反と、輸入米などへの高関税だ。

 補償制度の対象を減反に参加する農家に限っている点も見直さねばならない。納税者が納得できる形で農家の所得を補償しつつ、減反と高関税を段階的になくし、海外との経済連携協定を広げる環境を整える。道筋ははっきりしているはずだ。

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