2011/8/23
カダフィーはリビアの信長であり、家康であった 時事/金融危機
■ 国家の主権が蹂躙された ■
首都トリポリに到達した反政府勢力は
ほぼ市内を制圧しました。
NHKのニュースは
「独裁者カダフィーに反抗する勢力が勝利した」
と伝えるでしょう。
しかし、私達が目にしている映像は
国家の主権がいともたやすく蹂躙されるという事実です。
イラク戦争はアメリカの暴挙でしたが、
今回の主役はフランスとイギリスを中心とするNATO軍です。
■ 中東の独立と軍事独裁 ■
第二次世界大戦後、中東諸国は相次いで独立します。
しかし、英仏独伊が支配した中東地域には
元々国家などありませんでした。
多くの部族が広い地域に点在し、
遊牧の民は国境など関係無く移動をしていました。
第二次大戦後、世界的に台頭した植民地独立運動の流れに乗って、
中東諸国も見かけ上の独立を果たします。
しかし元々部族社会で国民国家という概念の無い中東では
独立と言っても旧宗主国に都合の良い有力部族の長が
国王に祭り上げられ、傀儡国家となりました。
この時期中東諸国にも社会主義思想は流入しており、
社会主義政党(バース党)が多くの国に設立されます。
エジプトでは将校であったナセルが傀儡王権を打倒し、
彼に賛同する軍人達と軍政を敷きます。
彼はスエズ運河を欧米から奪還します。
ナセルは一躍アラブの英雄となります。
ナセルの輝かしい姿を目にした
カダフィーやフセインやアサドら若き将校らは、
同士を募って、欧米の傀儡政権を打倒します。
独立とは行っても部族社会の中東では
国家よりも部族の利益が優先します。
この様な社会では、議会制民主主義は上手く機能しません。
さらには、海外勢力が有力部族を影から操り
政権打倒を企てる恐れもありました。
そこで、革命を指揮した若き英雄達は
軍事独裁によって政権を安定させます。
■ カダフィーは信長である ■
群雄割拠する地域に統一国家を作ったという意味では
カダフィーはリビアの織田信長でした。
国家統一の初期段階は
武力による統一が行われます。
強い信念、高い理念、
そしてカリスマ性を持った人物が、
武力と恐怖によって政権を維持します。
■ 植民地支配からの独立とは何か ■
17世紀の植民地支配は、破壊と略奪の歴史です。
ロスチャイルドの会社「東インド会社」は
世界最初の株式会社として知られます。
しかし現在の会社とは異なり、
その実態は軍隊に近い組織でした。
彼らは国王から交戦権を与えられ、
海洋王国として先行していた
スペインやポルトガルに
武力で対抗してゆきます。
1588年にスペインの無敵艦隊は
イギリス艦隊に破れます。
イギリスはスペインの船大工にスパイを送り込み
強度の弱い船を作らせた為、
無敵を誇った艦隊は、
交戦では無く嵐で海に沈んだと言われています。
その後、国際都市として
多くの優秀な船大工を手に入れたオランダが
海洋大国として台頭します。
そして設立された「東インド会社」は、
強力な軍艦と軍隊を擁する戦闘集団でした。
彼らはアジアにおいてスペインやポルトガルと交戦し、
各地の要塞を陥落させてゆきます。
島原の乱では東インド会社は家康に味方し、
島原城を艦砲射撃します。
プロテスタントの国オランダにとって
島原のカトリック教徒は、異教徒同然だったのです。
スペインやポルトガルは
カトリックの布教を目的に侵略を行っていましたが、
東インド会社(オランダ)は交易が目的でした。
徳川家康は、宗教的侵略を目的とするポルトガルより
オランダ(東インド会社)を貿易の相手として選んだのです。
■ インドを支配する東インド会社 ■
東アジアはヨーロッパから遠く離れています。
東インド会社は、インドや東南アジアを軍事支配化に置き、
植民地経営を始めましたが、
次第にインドでは反乱が起こる様になり、
清や朝鮮半島や日本を直接支配する事は出来ませんでした。
■ アヘンで国を滅ぼす ■
東インド会社は中国で絹やその他の物資を手に入れ、
その対価としてアヘンを与えました。
街の至る所に、アヘン窟が出来、
人々は常習性のあるアヘンに蝕まれて行きます。
アヘンによる巨大な利益を本国に送金していたのが
香港上海銀行です。
この頃、アメリカのユダヤ金融も、
アヘンで大きな利益を手に入れています。
アヘンの蔓延は、強大な清帝国を内側から蝕んで行きました。
■ グラバーと坂本竜馬 ■
江戸時代末期、造船技術の進歩によって、
イギリス、フランス、アメリカが日本の近海を往来する様になります。
黒船として知られるペリー艦隊の来訪の目的は、
日本近海で操業するアメリカの捕鯨船に
食料と水を供給する交渉が主でした。
しかし、ペリー艦隊の威容を目にした幕府と市民達は
過剰に反応し、支配力の低下していた幕府は、
米国の要求を呑んで、鎖国政策が終焉を迎えます。
その頃日本はインフレの波が吹き荒れていました。
海外から近代的な武器を調達したい幕府は、
大量の金を海外に流出させました。
その結果通貨の金の含有量が減り、
貨幣の価格が下落し、米などの物価が上昇しました。
これは庶民の生活を苦しめ、
「打ちこわし」や「ええじゃないか」などの暴動が発生します。
地方の下級武士達の生活も逼迫し、
その不満の捌け口が、
弱気外交を繰り返す幕府に向けられます。
「尊王攘夷」を合言葉に、
地方の下級武士達は京都でテロ行為を繰り返します。
幕府はテロ対策特別班として、新撰組を組織し、
テロリストに対抗してゆきます。
■ テロリストを懐柔したロスチャイルド ■
幕府の衰退を日本進出の好機と見たロスチャイルドは
幕府に反発するテロリスト達を懐柔します。
薩摩藩、長州藩はそれぞれ強硬的な攘夷派でした。
夷敵であるイギリス軍艦と交戦しますが、
その結果は惨敗でした。
欧米の技術力を目の当たりにした
薩長は、若くて血気溢れる藩士を
イギリスに留学させます。
もちろん、これは幕府の法律に違反する行為です。
一方、幕府も日本で勢力を伸ばすイギリスに対抗する為、
フランスに人材を送り込みます。
ところが、当時のパリ万博で
薩長と幕府の留学生が一緒に行動していた様です。
彼らは欧州の地でロスチャイルドに懐柔されていたのです。
■ 坂本竜馬とトーマス・グラバー ■
ロスチャイルドは日本支配の先兵として、
当時26歳であったトーマス・グラバーを送り込みます。
グラバーはアメリカ帰りのジョン・万次郎の協力を得て、
幕府に反発する若きテロリスト達に接触してゆきます。
その内の一人が、坂本竜馬でした。
坂本竜馬の活躍は、昨年の大河ドラマで万人の知る所ですが、
亀山社中は、トーマスグラバーが長州藩に武器を売却する際の
ダミー会社でした。
当時の幕府の法律では、
外国人が日本の藩に武器を直接売る事は出来ませんでした。
そこで、亀山社中を間に立てたのです。
グラバーは亀山社中に武器を売却し、
亀山社中はその武器を長州藩に売却します。
長州藩の支払いは、米、麦、塩で行われ、
この取引を物々交換とする事で、
「外国が日本に武器を売却してはいけない」という法律をすり抜けます。
米・麦・塩を入手したグラバー商会は
それをジャーディン・マセソン商会に持って行き
それを薩摩藩が買い上げる事で、
この薩摩と長州の迂回取引が成立しました。
財政に余裕のある薩摩が、
長州に武器を用立てしたのでした。
この巨大取引を仕切る様な資金力は
若きグラバーにはありません。
彼が武器を長達出来たのは、
彼の後ろに、巨大なロスチャイルドが控えていたからです。
■ リビアの現状と、明治維新の類似点 ■
何故リビア情勢の分析で、明治維新を持ち出したかは
聡明な皆様には、もうお分かりでしょう。
カダフィーは信長としてリビアを統一した後は、
家康として、海外勢力の侵入を阻んで来ました。
フランスやイギリス、そしてアメリカなどの欧米諸国は、
明治維新と同じ方法で、リビアを開国させたのです。
先ず、リーマンショックによる経済危機を引き起こし、
金融緩和や国債の増発で大量の通貨します。
これらの資金は、食料価格を高騰させます。
当然、中東の国々では、インフレが発生し、
国民の中で不満が高まってきます。
若者達の不満は、破壊衝動として政府に向けられます。
国民に浸透した、欧米のスパイ(当然現地人)が、
まとまりの無い不満を、反政府組織へと組織化してゆきます。
欧米の諜報機関が中心となって、
反政府勢力に武器を調達し、
特殊部隊が潜入して、軍事訓練も行います。
そして、油田地帯を中心に勢力を持つ最大部族でありながら、
カダフィーと別部族の為に利権に預かれない部族を挑発し、
反政府の武力蜂起を起こさせます。
従来は圧倒的な戦力差で、
反政府活動は即座に鎮圧されてしまいます。
しかし、今回は、NATO軍が巡航ミサイルを100発以上撃ち込んで、
リビア政府軍の軍事拠点を破壊しました。
さらに、フランス軍は航空機を投入して、
ミサイルサイトや軍事空港などの防空能力を破壊しました。
これによって制空権を確保したNATO群は
ヘリコプターなどの地上支援用の航空戦力を投入する事が出来ます。
フランスはヘリコプター空母をリビアな派遣し、
地上戦の反政府勢力を上空から近接支援しました。
リビアは戦車部隊など強力な地上戦力を有していますが、
これらも航空機やヘリコプターからの攻撃で破壊したのでしょう。
■ 反政府勢力は飾り ■
TVではいかにも市民が手に銃を持って
政府軍に反抗する映像を流しています。
しかし、その市民戦力の中には
仏・イギリスの特殊部隊が紛れ込んでいるはずです。
彼らは事前の諜報活動で、政府軍の軍事拠点を把握し、
電波誘導装置を設置するなどして、
第一波の誘導ミサイル攻撃の的中率を高めたはずです。
内戦初期に北部の反乱勢力側の部族長が、
イギリスの特殊部隊隊員を拘束するという事件が起きています。
彼らは、何かの工作を行っていて、
部族長に接触した際に、彼を怒らせてしまったのでしょう。
こして見ると、今回のリビア内乱での反政府勢力は
国際世論を騙すための飾りでしか無く、
戦闘はNATO軍と、リビア政府軍の間で行われたという事になります。
イラク戦争でアメリカの派手な軍事行動を非難したフランスは、
国際世論に避難されない、巧妙な侵略戦争を行ったわけです。
■ 結局は石油利権の組み換え ■
カダフィーが権力を持っている間は、
欧州はリビアの石油利権を手に入れられません。
イラク戦争でビビッったカダフィーは、
近年、アメリカの軍産複合体の言うなりだった可能性もあります。
軍産複合体を牛耳るのは、ロックフェラーです。
今回はフランスを中心とするロスチャイルド陣営が、
ロックフェラーの石油利権を奪取する為に仕掛けた内乱でしょう。
現在中東で「民主化」と呼ばれる内乱は、
ほぼ全て、同じ目的を持つものと思われます。
■ 本丸はサウジアラビア ■
最終目的は、世界最大の産油国、
サウジアラビアに間違い無いでしょう。
サウジアラビアの周辺が騒がしくなっています。
カダフィー打倒のニュースに
イエメンやヨルダンやバーレンーの市民が蜂起しています。
必ず、この蜂起を扇動する欧米のスパイが居るはずです。
彼らは直接的に人々を扇動し、
TwitterやFacebookで政権打倒を呼び掛けているはずです。
そうして、周辺国の動乱は、
必ずやサウジアラビアに伝播するはずです。
東部の油田地帯はシーア派が多く居住する地域です。
サウジアラビアは石油による豊かな財源で、
食料の高騰を抑えているので、
周辺諸国の様に、生活苦による不満は高くありません。
しかし、サウジの王族は、
戒律の厳しいワッハーブ派でこれを国教としています。
油田地帯のシーア派をこれを面白く思っていません。
サウジアラビアの隣りの島国である
バーレンはシーア派が多く住む国です。
バーレンのシーア派は反乱を起こしており、
それがサウジ東部に伝播する事を恐れるサウジ政府は、
サウジの軍をバーレンに派遣し、暴動の鎮圧に当たっています。
バーレーンでサウジ軍とシーア派住民に大きな衝突が発生すれば、
サウジアラビアのシーア派住民が呼応して反乱を起こすかもしれません。
いえ、必ずや市民に浸透したスパイが
住民の反乱を煽る事でしょう。
■ NHKでは報道できない事 ■
いつもながらの妄想が暴走していますが。
年末くらいに、何が真実だったのか分かると思います。
NHKの表面的なニュースは、何も伝えません。
むしろ、影で世界を操る者達が、
人々に信じさせたい見せ掛けの姿を
プロパガンダしているに過ぎません。
明治維新における欧米の暗躍という歴史の裏側を
全く知らない日本人には、
世界で何が起きているかなど、想像すら付かないのです。
リーマンショック以降の経済の混乱と、
金融緩和や国際乱発による、
新興国や中東におこるインフレが、
世界の姿をどう変えて行くのか、
歴史の変換点を目の当たりに出来る私達は、
ある意味、幸せなのかも知れません。
12
2011/8/22
読書感想文には向かないけれど・・・桜庭一樹「私の男」 本
■ 夏休みの読書感想文が終わらない君達に ■
夏休みも残り10日となってきました。
この時期になると「拍手」が増える記事があります。
「夏休みの読書感想文が終わらないお子様に・・・カラフル」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/277.html
という記事です。
「ありがとう」とか、
「為になったゼ」という拍手コメントが寄せられるので
不精な子供達が丸写しして、
学校に提出しているのではないかと邪推しています。
この記事をきっかけとして、
原作を読んだ子供が居れば良いのですが・・・。
■ 「読書感想文」には向かない小説 ■
本日は「読書感想文」には向かない小説の紹介です。
「読書感想文」から検索して、
この記事にたどり着いた横着な君達、
勇気があれば、この記事を丸写しにしてみなさい。
きっと国語の先生に呼び出される事、間違いなし!!
・・・でも、高校生の読書好きのあなたなら、
大人の読書の世界の扉を開けてみるのも良いかも。
少なくともBL小説よりは、人生の糧になります。
■ 「少女には向かない職業」から一貫して「父」に拘る桜庭一樹 ■
作家には二種類の人種が居ます。
あくまでも冷静に社会や人間を分析し、
読者像を想定して、
読者受けする小説を書くタイプ。
伊坂幸太郎や、東野圭吾、宮部みゆき
恩田陸、など人気作家の殆どはこのタイプでしょう。
一方、自分の中にある妄執を文章にして排泄しないと
自我が保てない様な作家も存在します。
桜庭一樹はその代表的な作家でしょう。
彼女はライトノベルでそのキャリアをスタートさせますが、
「GOSIC」シリーズを除けば、
「少女」と「父親」の関係に囚われ続けています。
初期の名作「荒野」では、
作家の父は愛すべきダメ人間として描かれます。
娘は女クセの悪い父を嫌いつつも、
父には普通の娘の愛情を抱いていいます。
「少女には向かない職業」では、
父は娘の憎悪の対象となっており、
娘は父をバトル・アックス(斧)で殺害します。
「砂糖菓子の弾丸では撃ち抜けない」では
父親の歪んだ愛情の対象となる
海野藻屑という少女が、父親に殺されます。
桜庭一樹は「父と娘の愛」を、
ある種の妄執に取り付かれた様に書き続ける作家です。
そのどの作品でも際立っているのが、
思春期の少女達の、子供とも大人とも付かない
曖昧な存在感です。
濡れたネコを思わせる様な、
体臭と、湿り気と、温もりを感じさせる
この時期の少女独特の存在感を
これ程までに上手に表現出来る作家は他には見当たりません。
そして、彼女達は大人になる過程において
父親を「男」として意識します。
ある者は「愛する存在」として。
ある者は「憎むべき存在」として・・・。
■ 「私の男」は父と娘の到達点 ■
「・・・この十五年間ずっとそうであったように、降り続く雨の様な湿った臭いがした。それが、この男の体臭なのだ。」
桜庭一樹の小説は、湿った臭いに満ちています。
「私の男」でも、腐った様なオホーツクの海の臭い、
父親の雨の様に湿った臭いなどが、ページがら漂います。
雨の臭いをさせる父親、淳悟と腐野花は、父と娘です。
娘の結婚式直前から始まるこの小説は、
強い絆で結ばれた「父と娘」の歴史を遡る形で語られます。
各章で語り部を変えながら、
父と娘の歴史と秘密が徐々に明かされて行く様は
どんな推理小説よりもスリリングです。
嫁ぐ娘、花のモノローグが父の異常な関係と
過去の事件をを想像させる
「2008年6月、 花と、ふるいカメラ」
娘の婚約者の美郎の視点から、異常な父娘を観察する
「2005年11月、 美郎と、ふるい死体」
父淳悟の目から花との肉体関係がストレートに語られ、
そして過去の殺人の存在を暗示する
「2000年7月、 淳悟と、あたらしい死体」
花の視点から、第一の殺人が語られる
「2000年1月、 花と、あたらしいカメラ」
淳悟の恋人、小町の視線で父娘の異常な関係が描かれる
「1996年3月、 小町と凪」
小学校4年生の花が体験した奥尻島の津波と、
そして家族と淳悟との秘密が明らかになる
「1993年7月、 花と、嵐」
6章に分けて語られる父娘の関係は、
一言で言ってしまえば、「禁断の愛」です。
しかしその言葉が陳腐に感じられる程、
父娘の絆は純粋で、
断ち切る事など到底出来ない因果を含んでいます。
奥尻島の津波で家族を失った小学4年生の竹中花の前に現れた
背の高い切れ長の目をした青年腐野淳悟は
花をみつけると、嬉しそうに微笑んで彼女を抱き上げます。
花は初めて会う青年に、何故か自分と共通したものを感じ、
青年にしがみ付きます。
兄と妹、父と母の5人家族の中で
疎外感を感じていた花は、
淳悟の腕に抱きかかえられて、
始めて自分の居場所を見つけた気がします。
父は自分をトラックの荷台に放り込み
「花、生きろ」と言うと、家族の下に戻り、
そして家族は一緒に津波に呑まれてしまいます。
花だけが、家族から引き離されて、一人生き残ります。
花の中に、家族から阻害された恨みが黒く沸き立ちます。
ところが、淳悟の存在が花の心を満たして行きます。
遠い親戚というこの海上保安官のこの青年は、
花を引き取り、男手一つで育てると言います。
花も淳悟に安心して全てを任せます。
少し恥ずかしくても、津波で泥だらけになった体や髪を洗ってもらい、
淳悟の選んでくれたワンピースを喜んで着ます。
新しく父となった青年の父の手をしっかりと握り、
一緒のベットで、寄り添って寝ます。
「花は淳悟の物」である事を受け入れ、
「血の人形」としての自分の存在を受け入れます。
父である淳悟は、花を求め、
花は母の様な愛情で、淳悟を受け入れます。
父と娘の血の繋がりが、円環を無し、
娘は母として、父親を受け入れます。
北国の小さな街の人達は、
かわいそうな娘を温かく見守り育てていきます。
街の世話役の大塩のおじいさんは、
花と淳悟の関係を知る人物です。
彼は2人をずっと見守り続けますが、
ある日、2人の異常な関係に気づきます。
流氷が覆うオホーツクの海で、
花は自分と父親の関係を知るこの老人と対峙します。
そして、父と娘以外の世界を守る為に花は行動します。
父と娘は逃避行を続け、
東京でひっそりと暮らします。
花が働く様になってからは、
淳悟は仕事もせず、ひたすら花を守ります。
何時か父の元を離れる事を心に決めながらも、
花は心の底では、「骨になっても一緒」にいる事を願います。
血で繋がれた父と娘は、
離れても、決して断ち切る事の出来ない思いを抱きながら、
新たな一歩を踏み出してゆきます。
■ モラル・ハザードでありながら、不思議と不快感は無い ■
直木賞を獲った「私の男」は、
圧倒的な表現力と、圧倒的な構成力を持つ、
近年稀に見る傑作小説です。
しかし、その内容がインモラルな事から、
審査員の間でも、この作品に直木賞を与える事は
躊躇されたと言われています。
娘を持つ父の身からすれば、
実の父と娘の肉体関係を描いた小説などは
嫌悪感を抱かずに読む事が難しいはずです。
しかし、桜庭一樹作品に一貫する父娘の関係は、
不快感を覚えません・・・。
これは桜庭作品の父娘が実は不可分な存在である事に
拠るのでは無いかと私は考えます。
桜庭作品での父娘の間に他者性は希薄です。
娘は父の所有物であり、娘はその関係を受け入れています。
娘は父の外在物であり、娘は父に取り込まれる事で安息を得ます。
「荒野」では、父を他者の目で見始める事で物語を終わらせていますが、
「少女には向かない職業」では父を殺害する事で、その関係を断ち切ります。
「砂糖菓子の弾丸では撃ち抜けない」では、父による娘の殺害を娘が受け入れます。
「私の男」では、父との一体化から話は始まり、そして離別によって物語は収束します。
一見、「私の男」は異常から正常への回帰の様に見えますが、
時制を逆転する事で、やはり物語は父との一体化の構造を反復します。
「父の一部である娘」というテーマに桜庭一樹は妄執します。
このインモラルなテーマは反復され、
「私の男」では、見事に昇華の域に達しています。
ひたすら一体化を求める魂の姿が、
世のモラルなどツマラナイ事の様に思わせる程の強さを獲得しています。
■ 作家の成長を楽しめるライトノベルの素晴らしさ ■
実は私は「私の男」に至るまでに3年間を要しました。
このセンセーショナルな名作をイキナリ読んだら、
多分、拒否反応を示すのでは無いかと心配だったのです。
ですから、「GOSIC」を除く桜庭作品を
ライトノベルの時代から順番に読んできました。
丁度、角川が初期作品を文庫化し始めたので、
タイミングが良かったとも言えます。
「荒野」や「少女には・・」は古本屋で入手しました。
「砂糖菓子・・・」はなかなか手に入らなかったのですが
角川の文庫化に救われました。
桜庭の初期の作品は、父娘の物語だけでは無く
「推定少女」や「赤・ピンク」の様な少女の生態を描く作品や
「少女七竈と七人の可愛そうな大人 」の様な婉曲な父娘関係を描く作品もありますが、
やはり、グロテスクでありながら切実な父娘の愛を描く作品群が秀逸です。
■ ちょっと娘には読ませられない ■
私の娘は、理解しているのかは別として、
ちょっと難しい本を平気で読みます。
中一で三崎亜記や乙一を面白いという子供も変ですが、
中三の現在はJGバラードの「結晶世界」も平気で読みます。
(理解はしていないのでしょうが・・・)
一時、父娘ともに初期桜庭作品に没頭した時期がありました。
中学生には「荒野」当たりが共感を覚えるでしょうし、
「荒野」は思春期の女の子が読むには、最適な小説と私は思います。
ですから、初期桜庭作品は中学の図書館に全部寄付してしまいました。
奈須きのこの「空の境界」をオマケに付けて・・・。
これは梶井基次郎の「檸檬」に似たイタズラです。
果たして、これらの本が中学の図書室の書架に収まっているのか、
それとも有害図書扱いでゴミ箱に姿を消したのか、
ちょっと興味があります。
さて、こんな私ですが、「私の男」はさすがに娘には読ませれません。
18才以下はNGでしょう。
まあ、最近の女の子達は、ケイタイ小説やBL小説で、
かなりエゲツ無い読書に耽っていますが、
そんな表面的なイヤラシサとは根源的に異なる、
人間のケモノとしての一面を、「私の男」は切ない程に描いています。
さあ、夏休みの読書感想文にこの記事を書き写す勇気を持ったヤツは
はたして居るのでしょうか?
■ 「うさぎドロップ」との相違点 ■
漫画「うさぎドロップ」のラストは、
息子や私には少々以外でした。
家内は予想の範疇だったと言います。
「うさぎドロップ」の記事でも書きましたが、
漫画やアニメは、以外に普通の事を、普通に描く事が出来ます。
一方、小説で同じ題材を扱うと「私の男」になってしまいます。
構造としては同じ話なのですが、
小説と漫画やアニメとの相違点が明確です。
しかし、根っこの部分では通じる所もあり、
「私の男」は「裏うさぎドロップ」とも言えます。
いや、「うさぎドロップ」が「表・私の男」と言った所でしょうか。
この2作品、以外と同時に読むと、味わいが深いかも知れません。
2
2011/8/21
いよいよ始まるのか・・・高まるシナイ半島の緊張 分類なし
■ イスラエル軍の攻撃でエジプトの警官が3人死亡 ■
エジプトとイスラエルの国境周辺で緊張が高まっています。
18日にガザ地区からテロリストがイスラエルに侵入、
イスラエル領内で軍人を乗せたバスを襲撃しました。
テロリストはその後イスラエル軍と交戦し、
エジプトへと逃亡。
テロリストを追跡したイスラエル軍のヘリコプターが
エジプト国境を越えてテロリストを攻撃し、
周辺にいたエジプトの警察官3人が死亡しました。
イスラエルのバラク国防相が謝罪しましたが、
エジプトのシナイ半島で反イスラエルのデモが発生しています。
一方、ガザ地区からのロケット砲攻撃も激化しており、
イスラエル軍がガザ地区で地上戦を遂行する可能性が出てきています。
■ どこまでエスカレートするのか? ■
小競り合いは「いつもの事」と言えばその通りですが、
問題はどこまでエスカレートするかです。
中東情勢は民主化革命以降バランスが大きく変化しています。
エジプトは実権を軍部が握っていますので、
イスラエルが大人しくしていれば、
シナイ半島でこれ以上緊張が高まる事は無いでしょう。
15日のこのブログでも書いた様に、
エジプト軍は既にシナイ半島での緊張の高まりを予見していた様です。
事前に軍を増強しています。
これは対イスラエルの作戦であると同時に、
シナイ半島のテロリストの掃討作戦を兼ねています。
問題はガザ地区では無いでしょうか。
現在イスラエルは中東情勢が激変した為に
非常にナーバスになっています。
ガザ地区のロケット砲攻撃がエスカレートすれば
国内の右派の中から、ガザ地区掃討の気運が高まります。
2006年も同様にして、ガザ地区で大規模な戦闘に発展しました。
イスラエルはどうも裏でカダフィーやアサドと通じていた可能性があり、
リビアとエジプトの対立がイスラエルに有利に働いていたとも言えます。
さらにアサドがシリア国内を圧制で支配している間は、
ゴラン高原のイスラエルーシリア国境地帯は安定していました。
現在リビアとシリアは内戦状態です。
イスラエル周辺のパワーバランスは大きく崩れています。
ガザ地区のパレスチナ勢力を裏で操るのは
エジプトのムスリム同胞団です。
ムスリム同胞団は、エジプト国内で勢力を拡大していますが、
軍部と対立する事を避け、
現在はあまり目立った行動を起こしていません。
しかしガザ地区にイスラエル軍が侵攻すれば、
エジプトの世論は反イスラエルに大きく傾き、
エジプト軍が、ハマスとイスラエルの和平に失敗すれば、
国民の支持はムスリム同胞団に集まるでしょう。
エジプト軍はアメリカの傀儡とも言えますが、
アメリカの国力が低下する中で、
軍内部から反旗を翻す勢力が現れるかもしれません。
そうなれば、エジプトとイスラエルの緊張も一気に高まり、
追い詰められたイスラエルが自暴自棄な行動を取らないとも限りません。
■ キーワードはやはり石油 ■
イスラエルをめぐる緊張が高まれば、
石油価格が一気に高騰する可能性があります。
OPECでは既にサウジアラビアの権限が弱まっています。
中東有事が発生した場合、
サウジアラビアの原油の増産能力が問われてきます。
アラブ諸国はイスラエルを支援するアメリカや欧米諸国を
石油価格を盾に取って脅すでしょう。
もしこれらの国が減産に踏み切った場合、
サウジアラビアや、中東以外の油田の増産能力がこれを補えなければ、
原油価格は100ドル/1バレルを軽く越えて行くでしょう。
既に景気後退が明確なアメリカで
原油価格が上昇すれば、70年代の様なスタグフレーションが発生します。
不景気の中での物価高騰は、国民生活を直撃します。
中東情勢は、アメリカの国内情勢に直結する事に注意が必要です。
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2011/8/20
無邪気な高揚・・・シンガポール 時事/金融危機
■ 東洋の真珠 ■
仕事でシンガポールに行ってきました。
飛行機で7時間。
同じアジアなので「近い」という印象を持っていましたが、
7時間あればハワイに行けてしまいますね。
「東洋の真珠」とも呼ばれるシンガポール。
日本でも良く知られる様に、法律が厳しく、
ポイ捨ても罰金。地下鉄内の飲食も罰金。
一見、窮屈に思えますが、
国民は大らかで親切、かつ礼儀正しく、
他のアジアの国々とは全く別の文化を感じます。
シンガポールの中流以上の人達は、
日本人よりも洗練されていて
街並みも日本よりも欧米的です。
■ 若い国 ■
シンガポールはマレー半島の先端に位置する
東西42Km、南北23Kmしかない小さな島国です。
道さえ通っていれば、私なら2時間で南端から北端に到達出来ます。
もちろんジョギングで!!
シンガポールの歴史は浅く、
1613年にポルトガルが虐殺と破壊の限りを尽くして
シンガブラを滅亡させた後300年間は
漁民と海賊だけが住む土地でした。
1819年、人口わずか150人のこの島を
東インド会社書記官を務めていたイギリス人トーマス・ラッフルズが
上陸し、開発を進めて行きます。
ラッフルはシンガポールの地理的重要性に着目し、
交易の中継地としてシンガポールを発展させます。
イギリスの植民地として発展したシンガポールが
イギリスから独立するのは1963年。
マレーシアの一部としての独立でした。
さらにマレーシアから分離独立を果たすのが1965年。
丁度、私の生まれた年です。
華人(中華系)が76.7%、マレー系が14%、
インド系(印僑)が7.9%、その他が1.4%
とにかく国家として若いシンガポールは
歴史がありません。
中華系の人々は現在3世代目が中心世代ですが、
彼らは自分達をシンガポール人と言い、
中華系と呼ばれる事を嫌います。
そして、何と中国語を話せない人が多いのです。
シングリッシュとも呼ばれる独特の英語を話します。
「オーケーラー」と言うのが「OK」の発音。
シンガポール人同士の会話は、英語が聞き取れません。
しかし、ビジネスでは流暢な英語を話します。
シンガポール人は日本人よりも欧米人に近い印象で、
礼節を重んじ、法律を遵守する様は感動に値します。
「明治時代の日本」に似ているのかもしれません。
欧米の文化を無条件に受け入れ、信望しています。
それだけに政治も安定していて、
カントリーリスクが無い為に
海外から活発な投資を呼び込んでいます。
■ アジアの金融センター ■
シンガポールの産業の中心は「金融」と「観光」です。
シンガポールの中心部にこんな建物を見つけました。
「フィルーメンソン・ホール」です。
現在も使用されていて、
建物の前にはその歴史を示す案内板があります。
日本ではキワモノ扱いのフリーメンソンですが、
シンガポールではしっかりと歴史の一部として、
そして現在も活動する組織として認識されている様です。
「誰がシンガポールを作ったか」を考えれば、
シンガポールの現在の発展と、
そして金融センターとしての位置付けも理解出来ます。
日本では巧みに隠蔽されてきた歴史が、
シンガポールでは国民に受け入れられています。
ラッフルズは開国の祖として国民に人気があります。
これは「植民地教育」の結果なのでしょう。
国民の思考が完全に欧米人なのも、
植民地教育の賜物です。
公用語として英語を話し、
治安もインフラも整ったシンガポールは
欧米の金融マンにとって、生活し易い国の様です。
午後6時を過ぎると仕事を終えた金融マン達が、
巨大な高層オフィスから吐き出され
川沿いや路地裏のバーに繰り出します。
熱帯とは言え、海から吹く風は心地よく、
彼らはクーラーの寒いくらい効いた店内よりも
屋外のテーブル席に陣取って、歩道を占拠しています。
■ バブルの懐かしい臭い ■
シンガポールに現代的な高層建築が出来始めたのは
20年程前になると思います。
日本のバブルが終焉する頃、
シンガポールの建築ラッシュが始まり、
丹下健三や黒川紀章やアイエム・ペイらが
街を作り変えて行きます。
街の至る所で工事が進行中で、
インド人労働者達が働いています。
オフィスや商業ビルだけでは無く、高層の住宅が林立し、
中心街の物件は100uで日本円で3億程度だと
現地の人もビックリしていました。
上の写真は、ちょっと見、九龍城的な雑然さを思わせますが、
建築的には非常に面白い造詣をしています。
世界中の著名な建築家や、設計事務所が
シンガポールで様々なプロジェクトを進行中です。
中国のバブルが話題になりますが、
シンガポールの街は、「懐かしきバブルの香り」が満ちています。
世界から金融街に流入する莫大ばマネーが
このバブルを支えているのですから、
金融危機が勃発すれば、
この美しくて、礼儀正しい国の人たちの生活も
きっと一変してしまうと思うと、複雑な心境です。
(前回のアニメで「C」という作品は、勇敢にも金融をテーマにしていまいた。
内容はは未消化ながら、現代の巨大なギャンブルと化した金融の恐ろしさを
視聴者に警告するという試みは、興味深いものがありました。
ストーリーの終盤、世界的な金融危機が発生します。
アジアで最初に消滅したのがシンガポール市場であった事は
何かを予見しているようで、背筋が寒くなります。)
■ 無邪気な自信 ■
今、アジアに限らず新興国に溢れているのは「無邪気な自信」です。
彼らにとっては日本は既に衰退する哀れなアジアの島国に過ぎません。
かつて「JAPAN AS No.1]と浮かれていた時に
私達がアメリカに投げかけたのと同じ視線を、私は感じました。
「無邪気な自信」が絶頂に達して、脇が甘くなった時、
バブルは弾けるのでしょう。
そして、「無邪気な自信」は既に絶頂に達している様に思えました。
■ 東洋のギシシャ ■
シンガポールと日本の最大の違いは「年齢」です。
シンガポールの街中で老人は見かけません。
地下鉄でもシルバーシートを譲る相手が居ません。
金融危機後の世界は、こういう若い国から復興して行くのでしょう。
最も、金融と観光以外の産業の無いシンガポールがどうなるのか・・・
「東洋の真珠」が、「東洋のギリシャ」に成らない事を願います。
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2011/8/15
シリアが内乱状態に・・・日本のメディアは無視? 時事/金融危機
■ シリアってどこ? ■
日本の中学生に中東の白地図を渡して、
各国の国名を記入させたら、
多分、シリアは正解率が低いでしょう。
シリアは社会主義政党であるバース党が政権を維持し、
ロシアや中国と関係の深い国です。
1971年から2000年まで
アサド大統領(父)が君臨し、
現在もその息子が大統領を継いでいます。
アサド(父)は、かつてはリビアのカダフィーと双璧を成す
反米、反イスラエルの急先鋒でしたが、
カダフィー同様、イラク戦争でビビッてしまい、
アメリカの前に膝を屈しています。
■ シリアが内乱状態に ■
日本ではあまり報道されませんが、
現在シリアは内乱状態になっています。
永年に渡るアサド親子とバアス党の独裁に、
民主化を求める民衆が蜂起している。
欧米のメディアはそう伝えています。
政府軍は反乱を起こした民衆を攻撃しており、
南部の港湾都市を海軍が洋上から攻撃したとの報道もある様です。
欧米各国はアサド大統領(息子)に、
国民に対する攻撃を止める様に要求しています。
ロシアと中国はシリアと関係が深く、
国連決議に反対していましたが、
事態が悪化する中で、ロシアもシリア政府に自重を求めています。
■ ゴラン高原の不安定化 ■
カダフィーの方がキャラ立ちが良いので、
リビアに注目が集まりますが、
イスラエルと中東の安定を考えるならば、
シリアの内戦は大きな脅威となります。
シリアとイスラエルの間には領土問題があります。
第三次中東戦争に勝利したイスラエルは、
シリアの領土であるゴラン高原を実効支配しています。
領土を奪われたシリア国民は、イスラエルに寛容ではありあません。
しかしアサド大統領が強力に権力を維持していたので、
ゴラン高原のイスラエル国境周辺は治安が維持されて、
イスラエルはシリア国境での紛争勃発を
あまり心配する必要はありませんでした。
ところが、アサドの権力が低下した事から、
先日、パレスチナ人がゴラン高原のシリア国境を越えて
イスラエルに侵入するという事件が起きています。
■ ヒズボラを支援するシリア ■
シリアはレバノンの反イスラエル組織である
ヒズボラを支援しています。
2006年にヒズボラのロケット砲攻撃に端を発した紛争で
イスラエルはレバノン領内に深く侵攻し、
街々を破壊しました。
レバノンの政府は欧米の傀儡です。
一方、民兵組織から組織を拡大したヒズボラは
学校や病院を建てるなど、
レバノン国民の信頼を得て、
単なるテロリスト集団とは言えない存在となっています。
これはパレスチナにおけるハマスと似た状況です。
ヒズボラはシリアとイランから支援を受けて
勢力を拡大しました。
■ リビアよりも中東の安定化に影を落とすシリア内乱 ■
シリア国内の不安定化は、
ヒズボラ暴発を誘引する危険性があります。
もしアサド波が政権維持の為にヒズボラをけしかけたら、
中東情勢が一気に不安定化します。
■ ヨルダン国王を支援するサウジアラビア ■
中東民主化(?)の潮流は、
イスラエルの東側の国ヨルダンにも影を落としています。
イスラエルとヨルダンも領土問題を抱えています。
ヨルダン川の西岸地域をイスラエルが実効支配しているのです。
この地域はパレスチナ人の政党、ファハタが自治を行っています。
ハマスに比べて穏健派のファハタは、
議長のアッバスが欧米の傀儡である事から、
パレスチナ人の支持を失いつつあります。
ヨルダンもレバノン同様にイスラエルとの領土問題が解決しないので、
欧米諸国はアブドラ国王を支援して傀儡政権となっています。
ヨルダンにも民主化の波が押し寄せており、
国民は王妃の浪費を非難するなどして、
暴動が発生しています。
ヨルダンで民主化革命が進行すると
イスラエルとの関係が不安定化します。
ヨルダンはサウジアラビアとイスラエルの間にあり、
中東一の大国がイスラエルと直接対峙する事を防いでいます。
サウジアラビアはヨルダンを財政支援して、
ヨルダン政府の崩壊を必死で防いでいます。
■ エジプト軍がシナイ半島に展開 ■
ムバラク政権が崩壊してイスラム原理主義勢力の影響力の増したエジプトですが、
欧米が影から支援する軍部が未だに実権を握っています。
エジプト軍はイスラエル国境に近いシナイ半島で
アルカイダやイスラム急進派勢力の掃討作戦を進める為、
軍をシナイ半島に展開しています。
この動きが報道通りの作戦なのか、
それともイスラエルとの有事に備えた動きなのかは
定かではありませんが、
イスラエルをめぐる中東情勢からは目が離せません。
本日から東南アジアに出張の為、
「人力でGO」は金曜日までお休みします。
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