IEA:石油備蓄放出 価格高騰の悪影響を見逃せず

2011年6月24日 1時0分 更新:6月24日 2時2分

 【ワシントン斉藤信宏】国際エネルギー機関(IEA)が23日、加盟国の保有する戦略石油備蓄を一斉放出する方針を決めたのは、原油価格の高騰が世界経済に与える悪影響を見過ごせないと判断したためだ。

 原油価格は1月以降、中東・北アフリカの政情不安が激化する中で急上昇し、2月下旬には1バレル=100ドルの大台を突破。その後も100~110ドルの水準で高止まりが続いていた。5月以降はやや値下がりしていたが、依然として90ドル台後半での取引が続き、特に欧州への供給を担うリビア国内の油田で生産中止が相次いだ影響で、北海ブレント原油の高騰に歯止めがかからない状態だった。

 世界最大の消費国、米国では春以降、ガソリン価格の高騰を受けて国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費に陰りが見え始め、景気回復の減速懸念が拡大していた。オバマ政権の支持率も、ガソリン価格の高騰に歩調を合わせるかのように低落。12年11月の次期大統領選をにらみ、原油価格の抑制は喫緊の課題となっていた。

 IEAはこうした事態を勘案し、リビア産原油の喪失分を上回る規模の備蓄放出が必要と判断。パリで記者会見したIEAの田中伸男事務局長は「断固たる措置で需給ギャップを埋める」と強調した。米国のチュー・エネルギー長官も「必要があれば追加措置の用意もできている」とIEAと呼吸を合わせた。

 一方、石油輸出国機構(OPEC)は、盟主サウジアラビアが単独での増産を表明したものの、OPECの内部対立から全体の増産を取りまとめることはできなかった。OPEC全体に対するサウジの統制力が弱まれば、「今後の危機で迅速に対応できない」(欧州系証券)との懸念の声が強まっている。

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