富士五湖の山中湖(山梨県)などに生育し、絶滅危惧種に指定されているマリモの一種「フジマリモ」が、東京都内の会社員宅の庭先で「発見」された。50年以上前の夏に採取してから育て続け、水槽の底を埋め尽くすほど増えた。夏休みの自由研究が絶滅危惧種の保存につながり、研究者も驚いている。
フジマリモを育て続けているのは、都内在住の亀田良成さん(63)。小学生のころ毎夏のように山中湖を訪れていた。小学3年だった1956年、湖畔に打ち上げられている緑色の藻を採取。持ち帰って水槽で育て、58年に夏休みの自由研究で「山中湖の研究」として観察記録をまとめた。直径2〜3センチの数個のマリモが浮き沈みする様子や、砂粒を巻き込んで丸くなる様子を詳しく記録した。
その後、50年以上、家族で育ててきた。庭先の木陰に水槽を置き、水の補給はほぼ雨水だが、日当たりや水の管理に気を配ってきた。今では三つの水槽の底にいっぱいになった。
フジマリモは56年に山中湖で確認、58年に県の天然記念物となり採取できなくなった。観光開発などで生育環境が悪化し、絶滅したと考えられてきた。2007年に湖底の石に付着している藻が再発見されたが、球形のものは見つかっていない。西湖でも確認されているがわずかで、絶滅危惧種に指定されている。
亀田さんは、最近までフジマリモが絶滅の危機にあるとは知らなかった。今春、登山仲間の植物学者に話したところ大変驚かれた。国立科学博物館植物研究部(茨城県つくば市)の辻彰洋研究主幹が形態観察と遺伝子解析でフジマリモと確認した。
亀田さんは「こんな貴重なものになっているとは思わなかった。さらに注意深く育てたい」と話す。
絶滅を避けるため、亀田さんはフジマリモの一部を同博物館に寄贈。分散して育てることになった。
辻さんは「最初は信じられなかった。これほどきれいな球体のフジマリモは山中湖ではもう見られない。育て方を確立して、将来は山中湖に戻したい。自由研究でも科学的に大きな役割を果たす可能性がある。自然への興味を大切にしてほしい」と話している。(中村浩彦)