1)環境放射能測定
2011年3月の福島第一原子力発電所の事故に伴って、環境中に放出された核種の観測・研究を始めました。東京大学アイソトープ総合センターで環境試料(土壌・河川・植物片)中に含まれる核種の同定及び線量の測定を行っています。これまでに福島第一原子力発電所正門前を中心に、飯舘村(長泥地区・小宮地区)、富岡町、南相馬市、二本松市などでサンプリングを行い、核種の同定および線量の測定を行ってきました。近く第1報を公表します。核種の測定には主にGe半導体検出器、液シンを用いています。同時に都内の雨水や環境水に含まれる放射性核種(主に131I, 137Cs)の観測も行っています。



頂いた試料の測定および解析結果を下記の表に示していきます。NaIシンチレーションカウンター(TCS-171B)はスクリーニング用に値を示しています。 (GM検知器のカラムでは、このGM検知器で判定する限り汚染がなさそうなサンプルを"-",汚染が疑われるサンプルを"△"で示しています)
Ge測定器のカラムにはAptec社製高純度Ge半導体検出器を測定に用いた結果を示しています。測定時間は7200秒(Live)です。

  • 数字はすべてBq/kg(1kgあたりのベクレル数)です。
  • 137Csについて線量値の公表を始めました。
  • 密度補正係数再計算のため、8の試料の線量の公表を一度外しました。
  • 60Coの同定の再検討を行いますので、一度すべての欄から外しました。
    No サンプル NaIシンチレーションカウンター(uSv/h as 137Cs) GM検知器(cpm) Ge検出器(簡易同定) Ge検出器(詳細) スペクトル
    1 井戸水30m 長野県上水内郡信濃町 0.04 -
    2 玄関前、表層3cm 長野県上水内郡信濃町 0.05 - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs(123+-10)
    3 植物 パセリ 長野県上水内郡信濃町 0.04 -
    4 畑、表層1cm 茨城県小美玉市 0.07 134Cs
    137Cs
    131I
    134Cs
    137Cs(1322+-20)
    5 畑、表層10cm 茨城県小美玉市 0.04
    6 植物 絹さや 茨城県小美玉市 0.04
    7 植物 芝生 茨城県小美玉市 0.04 -
    8 土壌 表層1cm 茨城県ひたちなか市 0.08 131I
    134Cs
    137Cs
    131I
    134Cs
    137Cs
    9 植物 雑草、高さ1m 茨城県ひたちなか市 0.08
    10 土壌 表層1cm 茨城県石岡市 0.06 134Cs
    137Cs
    131I
    134Cs
    137Cs(3927+-38)
    11 植物 雑草 茨城県石岡市 0.04 -
    12 土壌 公園内 神奈川県横須賀市 0.04 - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs(566+-10)
    13 植物 雑草 神奈川県横須賀市 0.04 -
    14 土壌+植物 住宅地 神奈川県横須賀市 0.04 - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs(1480+-38)
    15 植物 ぜんまい 福島県相馬郡飯舘村 0.05
    16 植物 ネギ 福島県相馬郡飯舘村 0.06
    17 植物 福島県相馬郡飯舘村 0.05
    18 土壌 庭土、表層5mm 静岡県田方郡 0.05 - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs (77+-9)
    19 植物 枯葉 静岡県田方郡 0.06 -
    20 土壌 花壇表土、表層5cm 茨城県守谷市 0.05 134Cs
    137Cs
    131I
    134Cs
    137Cs (2351+-29)
    21 植物 玄関前、庭木南側 茨城県守谷市 0.06 -
    22 植物 玄関前、庭木北側 茨城県守谷市 0.05 -
    23 土壌 畑、表層5cm 福島県郡山市 0.05 134Cs
    137Cs
    129mTe
    134Cs
    137Cs (1232+-21)
    24 土壌 表層1cm 福島県伊達市 0.42 560 134Cs
    136Cs 
    137Cs
    144Pr(144Ce) 
    95Nb
    110mAg 
    129mTe
    131I
    134Cs
    136Cs
    137Cs (38371+-114)
    25 土壌 表層1cm 福島県伊達市 0.33 350 131I
    134Cs
    137Cs
    144Pr(144Ce) 
    95Nb
    110mAg 
    129mTe
    131I
    134Cs
    137Cs(49769+-136)
    26 土壌 表層1cm 福島県伊達市 0.21 240 134Cs
    137Cs
    27 土壌 表層1cm 福島県福島市 0.17 210 134Cs
    137Cs
    28 土壌 表層1cm 福島県福島市 0.17 350 134Cs
    137Cs
    29 土壌 表層1cm 福島県福島市 0.27 400 95Nb
    134Cs
    137Cs
    30 土壌 表層2cm 東京都武蔵野市 * 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs (541+-18)
    31 植物 杉の葉 東京都武蔵野市 *
    32 土壌 表層2cm 神奈川県横浜市都筑区 * 134Cs
    137Cs
    33 土壌 表層3cm 神奈川県横浜市都筑区 * - 134Cs
    137Cs
    34 土壌 表層 神奈川県川崎市 * -
    35 土壌 表層10cm 神奈川県川崎市 * -
    36 植物 庭木 神奈川県川崎市 * -
    37 土壌 表層1cm 東京都練馬区 * - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs (115+-10)
    38 土壌 30cm 東京都練馬区 * - None
    39 土壌 表層1cm 東京都練馬区 * - 134Cs
    137Cs
    40 土壌 表層1cm 東京都港区 * -
    41 土壌 表層1cm 神奈川県横浜市青葉区 * -
    42 土壌 表層5mm 東京都狛江市 * - 134Cs
    137Cs
    43 土壌 表層5mm 東京都狛江市 *
    44 土壌 畑、10㎝ 千葉県八街市 * -
    45 土壌 畑表層 千葉県八街市 * - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs (286+-15)
    46 土壌 表層数㎜ 埼玉県さいたま市 * - 134Cs
    137Cs
    47 土壌 表層数㎜ 埼玉県さいたま市 * - 134Cs
    137Cs
    48 土壌 表層1㎝ 埼玉県春日部市 * - 134Cs
    137Cs
    49 植物 葉、茎 埼玉県さいたま市 *
    50 土壌 表層 神奈川県相模原市南区 * - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs (1360+-23)
    51 土壌 公園内 神奈川県相模原市南区 * - 134Cs
    137Cs
    52 土壌 手すりにたまった砂 神奈川県相模原市南区 * -
    53 土壌 庭、表層1㎝ 神奈川県横浜市港南区 * -
    54 土壌 畑、表層1㎝ 神奈川県横浜市港南区 * -
    55 土壌 空き地、表層1㎝ 神奈川県横浜市港南区 * -
    56 土壌 表層3㎝ 東京都府中市 * -
    57 土壌 表層1㎝ 神奈川県横浜市戸塚区 * - 137Cs
    58 植物 コケ 神奈川県横浜市戸塚区 * -
    59 植物 落ち葉 神奈川県横浜市戸塚区 * -
    60 水道水 茨城県取手市 * -
    61 土壌 表層1㎝ 茨城県取手市 * 130
    62 水道水 埼玉県川口市 * -
    63 土壌 表層1㎝ 埼玉県川口市 * - 134Cs
    137Cs
    64 土壌 表層2㎝ 東京都福生市 * 134Cs
    137Cs
    65 土壌 表層1cm 千葉県勝浦市 - none
    66 土壌
    67 土壌 -
    68 土壌 -
    69 土壌 -
    70 土壌 表層1cm 東京都目黒区 - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs (324+-14)
    71 土壌 表層1cm 東京都目黒区 - 134Cs
    137Cs
    134Cs
    137Cs (335+-10)
  • (参考動画)福島第一原子力発電所(正門前)で採取した植物片



  • Research cruse by R/V Tansei, Aug. 2010

    2)海洋堆積物からの環境評価
    採取した環境試料から"その場"の環境を明らかにすること、またこれを評価する新たな手法の開発についての研究を行っています。特に海洋堆積物を用いて、古海洋環境を高い精度で復元することを主なテーマに挙げています。

    そのためには堆積当時の海洋環境を高時間分解能で復元することが必要です。特にこれまでほとんど明らかにされてこなかった更新世後期から現世にかけて堆積した遠洋性海洋堆積物に着目し、他元素分析法と統計的手法を適用することで、堆積年代別の陸源砕屑物の起源推定を行います。これにより、当時の陸と海の環境の差を明らかにすることができます。また堆積物を構成する沈降物が海底面に到達後に受ける変成作用はその場の堆積環境によって大きく異なります。このことを定量的に評価するためには堆積物中の元素の化学状態分析が必要になります。そのため主にシンクロトロン放射光を用いたX線吸収微細構造法を堆積物に適用して、水平および堆積年代方向に元素の化学種変動を観測します。このことで海の環境がどのように変遷を遂げてきたのかを解き明かすことができると考えています。
    これまでに南太平洋、南極海、東京湾、鹿児島湾を研究対象にしてきました。


    担当講義

    東京大学内
    (前期課程)基礎化学実験I, II(無機[定量・定性]・有機)
    不定期・お手伝いとして
    (教養学部広域システム科学科)システム基礎科学実習I(栃木実習・化学)
    (教養学部広域システム科学科)システム基礎科学実習II

    日本大学文理学部
    (文理学部物理学科)化学の基礎I

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