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August 21, 2011

安愚楽牧場 債権者説明会(補遺)+弁護団の考えへの批判的コメント

 昨日のエントリーには、すでに3000件を超えるアクセスがありました。
 いただいたコメントの中で、どうしても理解にしくいところがあるとのご指摘がありましたので、コメントします。併せて、被害者弁護団の紀藤弁護士の意見に対する批判的コメントをいたします。

【オーナー制度と牛売却代金按分分配方式の整合性について】

 申立代理人の説明の中で

 《収益スキーム》
 出資者は、牛のオーナー(所有権)を取得 契約番号ごと牛の個体あり
 代金は、牛の価格に、飼料代、飼育料などを上乗せして市場価格の10倍
 オーナーには、配当があるし、牛は成長して価格があがり、また、繁殖牛は仔牛を産むので不当ではない。

 という部分と

 添付資料の「今後の弁済方針 2」の部分、すなわち

「契約継続中のオーナー、期間満了のオーナー、中途解約のオーナーを区別せず、債権額に按分して弁済する」という部分が、整合しないではないか、というコメントをいただきました。

 つまり、Aという特定の牛のオーナーは、その所有する特定の牛aのオーナーなのであれば、Aはaの売買代金から弁済を受けるべきであって、すべての代金をプールして按分弁済することは、おかしいのではないか、という疑問であろうと思います。

 この点は、おっしゃるとおり矛盾しています。
 販売時には、特定の牛のオーナーになるような宣伝をしていたけれど、実際には、1:1対応、あるいは1:n対応ではなかった(少なくとも、時間の経過によってそのような対応関係は崩れた)ということを、安愚楽牧場側も認めているということです。

 そのうえで、実質は「安愚楽牧場」という事業に対する出資持分なのだから、個々の対応関係はこの際、捨象して、全体の売却代金、ないしは牧場ごとの売却代金を、全オーナーの債権額に按分して弁済するということを提案しているのだと思います。

 これは、法律的にはかなりアクロバティックな論理展開をしないとむつかしいので「あくまで申立代理人の現在の考えであり、裁判所の承認を得ていない」ということが付記してあります。

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 被害者弁護団の紀藤弁護士のラジオ出演における発言の全文が以下にアップされています。

 http://theworldismine999.blog.fc2.com/blog-entry-18.html

 弁護団の意見は、一言でいえば現経営陣が業務を続ける民事再生では、お金の流れの解明が不透明になるので、会社更生か破産の方がよい、というご意見のようです。会社更生か破産ならば、安愚楽牧場が委任したのではない、まったく第三者の弁護士が、管財人となって、すべての業務を行い、不正行為の洗い出しを期待できるというのです。

 私の意見は、反対です。
 おそらく、弁護団には、大規模な法人の民事再生手続きの申立を経験した方がいらっしゃらないのではないかと推測します。

 昨日のエントリーに書いたとおり、本件では

「手持ちのキャッシュが尽きるまでに、牧場と牛をどこかに譲渡し換金できるか」

 が勝負です。

 これに成功するかどうかで、弁済率が大きく変わってしまう。
 これから、これまでの経緯を知らない管財人が就任して、実態を把握するだけで、かなりの時間をロスすることでしょう。
 1日ロスする毎に、数千万円から1億円近い餌代と飼育代が流出するのです。
 そして、手持ちキャッシュが尽きてしまえば、牛のほとんどは餓死せざるをえず、商品価値はゼロになるのです。
 それだけでなく、それらの牛を衛生的に処分する必要が生じますが、その費用は「共益債権」として、安愚楽牧場の手持ちキャッシュから支出せざるをえないのです。

 このようなことを考えると、ただでさえやることが多い申立代理人に、この段階で横やりを入れることは得策ではない。
 当面は、牛と牧場のスポンサー探し、ここに専念してもらえるような環境をつくってあげましょう。
 
 牛と牧場の譲渡を、早期にきちんとやり遂げてもらい、経営者の個人資産の調査や経営責任の追及、刑事責任の追及は、その後、じっくりとやればいい、そう考えます。

 現在の申立代理人、監督委員団、東京地裁の破産再生部は、それを託すに足るメンバーだと思います。

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Comments

昨日の説明会の件、遠方で参加出来なかったものにとって大変参考になる内容でした。

私が今一番知りたいのは配当ではなく元金がどの位戻るかということなのですが、先生のお考えをお聞かせ願えればと思います。

Posted by: たくママ | August 21, 2011 at 10:40 PM

 たくママさんのご質問に回答します。
 私も、説明会を聞いただけですので、正確なことはいえません。
 ただ、募っていた投資額が、牛の価格の10倍だったというのですから、元金が10%戻ってくれば、よしとしなければならないのものと思います。申立代理人の柳澤弁護士が、例として挙げていた数字も10%でした。
 ただ、これは最大限期待できるとして、ということであって、大幅に下がる可能性も否定できません。
 

Posted by: 近藤早利 | August 22, 2011 at 12:44 AM

先生のあぐらの記事とっても、分かりやすいです。
私もオーナーですが、今は感情的になりすぎてはいけない気になりました。あぐらの記事をどうぞ取り上げて言って下さい。

よろしくお願い致します。

Posted by: なな | August 22, 2011 at 12:21 PM

19日の東京説明会に出席した者です。
破産にしろ民事再生にしろ1円でも多く返してほしいだけなので、
どちらでもいいのですが、民事再生の方が多く返ってくるという
数字的根拠がないので先生の意見をお聞きしたいです。
栃木・柳沢弁護士事務所は、7/25に初めて安愚楽と協議を始めたとありました。
8/19現在で26日目ということですよね。
だとすると、破産管財人との本件熟知の差というのは特にないのではと思います。
また、最終的に全てを売却するということですから、
清算型の民事再生になるので、それも今破産になるのと
それほど差がないのではと思っています。
「このままうやむやに終わらせてしまいたくない、
全て吐き出して1円でも多く返してほしい!」ただそれだけです。

Posted by: しまりす | August 22, 2011 at 12:47 PM

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