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[29186] 【ネタの書きなぐり】IS×逆シャア インフィニットストラトス×機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
Name: BBB◆e494c1dd ID:62c2f512
Date: 2011/08/20 05:14
一夏の中の人的にユニコーンが結構見られますが、逆襲のシャアも悪くない
 ネタ的にどっかにクロスしたものがあるでしょうが一人ではなく二人ではどうだ!
 多分後に書き足します






 0 【途切れぬ確執】







「ちぃ!」

 白と赤が第三アリーナの空中を駆ける。
 一瞬で視界の外へと消え、構えたライフルからなでしこ色のビームが赤に向かって放たれた。

「いい加減にしろ!」

 ビームライフルを放った白のIS、赤のISはそれを回避して黒にカラーリングされた長大なビームショットライフルで応射。
 明るい黄色のビームが白のISの傍をかすめる。

「いい加減にしろだと! 元は貴様が原因だろうが!」
「俺は断っただろう! それを貴様が無理強いした!」

 なでしこ色と黄色のビームが飛び交い、どちらもそれに当たる事はない。

「もう突っかかってくるな!」
「忘れろと言うか!」

 ISでも類を見ない超高速機動、ISを起動しハイパーセンサーで知覚を補佐していなければ呆気無く見失う。
 だが互いにどちらに動いたか、素早く認識して予測を交えた機動と射撃。
 ビームでビームを相殺し、PICにスラスターを吹かせつつビームサーベルを引きぬく。

「引き摺られ過ぎているぞ!」
「私が私でない証拠などこにある!」
「だったら! この体はどう説明する!?」

 白のISが持つなでしこ色のビームを放つサーベルと、赤のISが持つ黄色のビームを放つサーベルが激突しつばぜり合いの閃光を放つ。

「ならばこの記憶こそどう説明する! なぜ私は貴様を知っている!! この思いは! 説明してみせろ、アムロ!!」
「シャアめ!」

 二度三度の切り結び、互いに振り抜いた腕。

「記憶があるからと言って俺たちがそのままな訳がないだろう!?」

 白いIS、全身装甲型の「νガンダム」は頭部バルカンを打ち放ちながら後退する。

「記憶があるからこそ私だと断言するのだ!」

 赤いIS、全身装甲型の「サザビー」は上昇してバルカンを避け、腹部拡散メガ粒子砲を浴びせ掛ける。

「屁理屈を! 記憶があるからどうだって言うんだ! 俺たちが本人だって言うなら、そのままの姿で無ければ何の意味もない!!」
「では本人でなければ何とする!? 記憶は! そしてこの感覚は!」

 PICとIS各所にあるスラスター、サブスラスター、マイクロスラスターを活用して従来のISをはるかに超える機動で空中を弾かれたように駆けるνガンダム。
 それに追撃を掛けるのはサザビー、バックパックのスラスターや装甲に仕組まれた姿勢制御スラスター、更に全身にも姿勢制御スラスターが取り付けられ肩にもはフレキシブルショルダースラスター。
 νガンダム以上の推力を持って迫り、狙いを付けたビームライフルのトリガーを引き絞る。

「そこだ!」
「甘い!」

 νガンダムは飛来するビームを左手のサーベルで弾き逸らし、そのまま左腕のシールド裏に取り付けられているビームキャノンで撃ち返す。

「なぜ認めん!」
「違うからだよ!」

 話は平行線、そして戦闘も平行線。
 モンド・グロッソでも滅多にお目に掛かれない超高等技術のオンパレードに観客席にいる生徒たちは視線が釘付け。

「す、すげぇ……」
「こ、これが白き流星に赤い彗星……」

 その観客席の中でIS学園のみならず、各国政府関係者などから注目されている存在にイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットが呟く。

「二年生や三年生って皆あんなのなのか?」
「そんな訳無いよ、あの二人が異常……じゃない、すごいだけなんだよ」

 世界で唯一の男のIS操縦者、織斑 一夏が聞けばフランスの代表候補生、シャルロット・デュノアが途中で咳をしながら返した、

「……ただの噂かと思っていたが、それにあの白い方もかなりやる」

 普段から一夏の事を除き表情を変えないドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒが少しだけ表情を歪めて言う。
 次回のモンド・グロッソのブリュンヒルデ最有力候補にも挙げられるだけの事はあったかと、繰り広げられている空中戦に下を巻いた。

「アムロ・レイにキャスバル・ソム・ダイクンだっけ? 実際に見てみると納得だわ」

 白と赤の二機のISを眺めながら中国の代表候補生、凰 鈴音が腰に手を当てつつ頷いた。

「日本の代表候補生にジオン共和国の代表か……、途轍もないな」

 どんな攻撃をしたか、どのような回避や防御を行ったか、多くのことを見逃しながら篠ノ之 箒が感嘆。
 それは自由時間の恒例になっている二人の他者には理解出来ない口論を交えた模擬戦。
 高度な戦闘であるが故に二人の模擬戦はほぼ全てが映像として記録され、他のIS操縦者に参考とされるほどのもの。
 この動きはあの動きを誘発させるものだろう、こっちの動きは牽制して戦術の幅を狭める攻撃じゃないか? など議論されることも少なくはない。
 それだけ高度な戦いを繰り広げる二人は異常、噂になるのも頷けるほどである。

「ええい! 堕ちろ!」
「させるか!」

 縦横無尽、時には直角以上の角度で曲がりぶつかり合う。
 サザビーがビームトマホークを投擲し、νガンダムがビームサーベルで叩き落す。
 その時にはサザビーは拡散メガ粒子砲を撃ち放って、右手のビームショットライフルをνガンダムが避ける方向を読んで撃つ。
 νガンダムは迫る拡散メガ粒子砲を急上昇して避け、その上昇途中に左腕のシールドを飛来するビームの射線上に投げる。
 ビームとシールドが接触し、シールド裏に搭載してあったミサイルが爆発、発生した爆煙で互いの姿が見えなくなるも。

「そこ!」
「やらせん!」

 視界の効かない爆煙の中で的確に捉え、至近距離でのライフルの打ち合い。
 爆煙の右からはνガンダムのビームが、左からはサザビーのビームが突き抜けていく。

「貴様はなぜそうも!」

 ビームのぶつかり合いで爆煙が吹き飛び、現れるのはビームサーベルでつばぜり合いを行う赤と白。

「貴様こそ! エゴばかり押し付けて!」
「そう言う貴様は他者にその力を利用されているだけではないか!」

 切り結ぶ、互いの右手にあるビームライフルを向け、銃口が重なる。
 トリガーを引くのは同時、ビームが砲身間近の至近距離でぶつかり、互いにその余波でビームライフルが爆散、弾けるビーム粒子がシールドバリアーに干渉して大きく減衰する。

「いつ利用された! 日本か!? それとも親父か!? 違う! これは俺が決めたことだ!!」

 二人はそれを織り込んだ上でビームサーベルを振るう。
 異なるニ色がぶつかり合い、閃光と共にビーム粒子が干渉し合う。
 サザビーは右手の袖からもビームサーベルを取り出し、νガンダムに斬りかかるも振り下ろされた右手のビームサーベルをνガンダムは半身で避け。

「サーベルのパワーが負けている!? 馬鹿な!」

 サザビーはパワーダウンを起こしたわけではない、なのに左手のビームサーベルは今にもνガンダムのビームサーベルに押し切られそうになっていた。

「ちぃっ!?」
「貴様は!」

 ついには押し切られ、ビームがサーベルに接触し焼き斬られててサザビーは素早く手放す。
 サーベルが爆散し振り下ろされたサーベルを辛うじてサザビーは避け、返しに右のビームサーベルを横薙ぎに振るがνガンダムは急上昇で避けるついでにサザビーの顔に蹴りを入れる。

「ええい!」

 シールドバリアーに蹴りを阻まれつつνガンダムはそのまま上昇、背部にマウントしてあるニューハイパーバズーカでサザビーを狙い打つ。
 それに対しサザビーは上体を仰け反らせたまま僅かに後退、その直後に弾頭が通りすぎた。
 すぐにスラスターを吹かせてサザビーは追いかける。
 その間にνガンダムは宙返り、バズーカの砲口をサザビーに向けて狙い放つ。

「アムロ!」

 サザビーはバズーカを迎撃出来ないと判断して、スラスターを吹かして紙一重で避ける。
 その時には上体を大きく仰け反らせていたνガンダム、バズーカをパージしながらサザビーへと頭を向け。

「当たれ!」

 頭部バルカンの掃射、狙いはサザビーではなくバズーカの弾。
 空を切るバルカンは狙い通りにバズーカの弾頭へ、サザビーが爆発範囲外に逃れる前に届いた。
 強烈、巻き込まれれば稼働不可能になるほどの威力を持つ爆発。

「読まれたか!」

 それをシールドで防いで、爆風で大きく損壊して使い物にならなくなったそれを投げ捨てるサザビー。
 ビームサーベルを横に構えたままサザビーは突っ込み、νガンダムは迎え撃つ。

「パイロットの意思で変わるのならば!」

 νガンダムの振り下ろしとサザビーの横薙ぎ、二本のビームサーベルの軌道が重なり接触、閃光を放つ。

「ちぃっ!?」
「やはりISなど信頼できんか!」

 増大したビームサーベルの出力、競技用のリミッターを掛けられ変動するはずのない数値が限界値を超えていた。
 その高威力のサーベル、当たれば絶対防御さえもを貫く軍用兵器と変わらない代物。

「シャア!」
「アムロ!」

 互角となったビームサーベルでの切り結び、弾ける粒子が二機を彩った。





 結局戦いに勝敗はつかなかった、二人の戦いはいつものことであり、いつものとこであるから教師たちが駆けつけその戦いを終わらせる。
 なにせ競技ではなく殺し合いになっているのだから絶対に止めなくてはいけない、二人の戦いがどこかで始まればすぐに連絡が入り教師たちが駆けつけることとなっていた。
 しかし生徒よりも数段上の技量を持つ教師たちでも割って入れるものではなく、織斑 千冬でさえも辛うじてというレベル。
 戦いになる理由はいつも決まっていた、「相手が気に入らない」「相手が悪い」と自分が悪く無いと主張する。
 実際はキャスバルがアムロに突っかかってきて相手をしてやっている、と言う状態になっていた。

「なぜわからん! 貴様のその力は誰かに使われるものじゃない!」

 金色のわずかにウェーブが掛かった長い髪の女性、同年代と比較して高い身長。
 切れ長の目は他の者に冷静で大人びた印象を与え、整った鼻筋や輪郭がそれを助長させる。
 名はキャスバル・ソム・ダイクン、IS「サザビー」の操縦者。

「だから自分で使っているだろう! それを貴様は勘違いをしてるだけだ!」

 声を荒げるキャスバルに声を返すのはくせっ毛で茶色のショートヘア、日本人にみられるやや幼い顔つきの女性。
 キャスバルよりも頭半分ほど低い、同年代の少女たちと同程度の身長。
 名はアムロ・レイ、IS「νガンダム」の操縦者。

「だったらなぜ代表候補生を受けた!」
「それを貴様が言えたことか!」

 いつも通り散々叱られた後職員室から出る二人。

「私は違う、自分で志願した!」
「俺だってそうだよ! 貴様は利用するかされるかしか考えちゃいないんだろう! だから他者を見下して!」
「私の立場でそれを考えるなと言うか!」
「違う! 考えすぎだと言っているんだよ!」

 大声で二人は口論、周囲から注目を集めるが構わず続ける。

「シャア! もうあの時のことだけに拘るな!」
「拘ってはいない! だが忘れることなど出来はしない!」
「ふざけるな! 拘っていないならなぜ俺に付きまとう!」
「それは貴様だからだ、アムロ! 貴様がアムロでなければ関わってはいない!」
「拘っているだろ! 小さいヤツ!」
「貴様が居なければこうなっては居なかった!」

 その口論の末、掴み合い殴り合いに発展してまた職員室へと二人は戻ることになった。




















 記憶ありニュータイプのままTS、アムロちゃんとキャスバルちゃん、セイラさんがソムだったんでキャスバルもなんとなくソムに、キャスバルの女性形などわからんがな
 アムロは日系人、シャアはジオン人? ジオン共和国人か
 アムロ日本代表候補生で簪涙目、二人が居るせいでIS学園最強と唯一の国家代表を名乗れない楯無涙目
 νガンダムとサザビーは第2世代機でありながら第4世代機相当の能力持ち(装備の換装無しでの全領域・全局面展開運用能力)、空間戦闘、重力下戦闘、低高度空中戦、水中戦闘にIS本来の活動場所の無空力宇宙空間、更には専用装備なしで大気圏突入能力も備える逸品
 νガンダムはパッケージでヘビーウェポンシステムとか胸熱、サザビーのパッケージは……うん、しかたないね
 共にファンネルなし、サイコミュ兵器に相当するのはBT兵器しかないけど持ってきたらセシリア以上に上手く動かしてファンネルを交えて高機動ドックファイトとかしちゃうからセシリア涙目、シャア辺りがイギリスと交渉なり情報奪取なりして取り付けそうな気もする、そうすればセシリアと接点ができるね
 νガンダムは逆シャアの時とは違って急造品ではなく時間を掛けて作った専用機、そもそもISが専用機だし
 アムロは二年生、シャアは三年生と想定、一夏たちと同学年じゃないし二人とも互いのことばっかりで事を終えるからIS本編に早々関わらないはず
 アムロは整備科、コンピューターとか機械いじりとか普通に無事な親父のおかげか普通に興味が湧いて整備科へ、整備科ってことで布仏姉妹と接点ができるか、それにテム・レイが技術者としてそれなりに有名なアナハイムのIS開発部長でデュノア社のライバルというか普通に負けているとかの関連でシャルロットと接点ができるかもしれない
 シャアはジオンの軍人、階級は大佐で首相の娘だから普通に扱いづらい、同じ軍人ってことでラウラと接点が出来るな、国が違えと上の階級の人物に不敬な態度は取らんだろうし
 箒と鈴音との接点は思いつかなかった、ニュータイプで二人の焦りとか感じ取りそうではあるが
 というかアムロとシャアの戦闘での会話はニュータイプ通信、アニメやゲームでの戦闘速度はオールドタイプである視聴者に合わせたものであるから実際は超速い、逆襲のシャアかISの戦闘シーンの速度を二倍か三倍速いしてみたら恐ろしさが分かるはず(PS3ガンダム戦記のアバンタイトルは遅いがガンダムの恐怖を、ガンダムとジオングの動きが超速いガンダム ザ ライドとか)
 これの七年後とかバナージとかが出てくるんだろう、ISはその仕様上ロボとかメカと親和性高くていいね



[29186]  1 【その境界線の先に立ち】
Name: BBB◆e494c1dd ID:51f4faa7
Date: 2011/08/20 13:01
 1 【その境界線の先に立ち】






「二重三重では足りない体制を敷いていたが暴走したと」
『……はい、何らかの手段で暴走するように書き換えられたそうです』
「きな臭いな、それで今シルバリオ・ゴスペルは破壊され搬送中か」
『その通りです、シルバリオ・ゴスペルのISコアは凍結処理にされるのが先ほど決定致しました」
「妥当だな……」

 通信に耳をかたむけるのはキャスバル、IS学園の一角にある三年の教室がある廊下の壁に背を預ける。

「しかし、上は何を考えている」

 国家代表候補生、専用機持ちとは言え競技など度外視した完全な軍用ISの暴走に対して生徒たちを向かわせる。
 ラウラ・ボーデヴィッヒはドイツ軍の軍人、こう言った事態にも対処できるだけの訓練と能力を備えているだろう。
 だが他の、特に唯一の男のIS操縦者である織斑 一夏は、実戦どころかISを扱った時間さえも少ない初心者中の初心者。
 いくら専用機持ちとは言え狩り出すのはずいぶんとお粗末な話、現に織斑 一夏は命に関わる大怪我を負った。
 その後白式がセカンドフェイズに移行したおかげでシルバリオ・ゴスペルを打ち倒すことが出来た、そうでなければ代表候補生皆死んでいた可能性も大いにあったが。

「……怪しいな」

 どうにもキャスバルには苦戦の末織斑 一夏のセカンド・フェイズと代表候補生たちが連携してシルバリオ・ゴスペルを打ち倒した、と言う状況には見えなかった。

「……それに篠ノ之 束の新型、テストには十分か」

 篠ノ之 束の妹、篠ノ之 箒が扱う『紅椿』、今キャスバルがハイパーセンサーを介してその時の映像を見る限りかなりの性能を有しているのが分かる。
 高機動で空を駆けシルバリオ・ゴスペルと打ち合う、その姿はサザビーの機動力と同等かそれ以上、伊達に第4世代と言うわけではない。
 この紅椿一機あればシルバリオ・ゴスペルを倒せた、それだけの能力は十分にあるとキャスバルは見た。

「如何せんパイロットがあれではな……」

 しかし戦闘のどれをとっても及第点に届かない、戦いという物を知らない子供だから仕様がないかもしれない。
 六対一と言う状況、五機を囮にして本命の一撃を叩きこむと言う戦術を採ってやっとの撃破。
 臨海学校に同伴する教師の中には生徒たちよりも優れた技術を持つ元代表候補生や日本の代表であった織斑 千冬もいた。
 他にもっといい手を採れただろう、だというのにこれなのだからキャスバルは怪しんでいた。

「いや、今気にするべきはこんなことではないか」

 裏に何かがあると気にはなるが、どうこうするものではないと意識を切り替える。
 新たな情報を得たら伝えるように言ってキャスバルは通信を切った。
 気に掛けるべきことはISに搭載されるオールレンジ攻撃用兵器の出来、アナハイムが試作運用している『ビット』。
 それを操作するイメージ・インターフェイスの調整がやっと終わり、ようやくサザビーに取り付けることが出来るようになったとのこと。
 無ければそれでいいのだが、有るのならば状況次第で装備しておいた方が良い。

 サザビーはジオン共和国のIS技術者によって、ジオン共和国首相の娘として、ジオンの赤い彗星として相応しい能力を備えたIS。
 実際の製造はアナハイム・エレクトロニクス社に任せられ、設計通りの仕様で造り上げられた。
 そもそも軍用としての設計であるために兵装も強力なものを装備しており、ビームショットライフルは絶対防御ごと撃ち抜く破格の威力を持ち。
 近接用のビームサーベル、ビームトマホークも一撃でIS操縦者ごと絶対防御を切り裂く威力。
 腹部に取り付けられている拡散メガ粒子砲も非常に強力、至近距離ならばエネルギー全快のシールドも余裕でぶち抜く。

 それでいて全身にあるスラスター類によって極めて高い機動性と運動性を誇り、なおかつシールドが消失していても生半可な実弾兵器をシャットアウトする強固なISアーマーを備える。
 そこにオールレンジ兵器であるビットが取り付けられれば、キャスバル本人の技量も相まってサザビー一機で十機のISを相手取り完勝を収めることが出来るとシミュレーションで弾きだされた。
 死角が無くなる、シミュレーション通りであればまさに敵なしと言える強さではあったが、キャスバル本人はそうは思っていない。
 ビットが取り付けられるのは何もサザビーだけではない、アムロ・レイが駆るνガンダムにも装備されることになっていた。
 それは奇しくも二人の記憶にあるあの世界であった出来事と似ていた。

 ビット自体の構想はジオンの方で有ったのだが、現実的に考え不可能に近いものであり構想のところで止まっていた。
 だがISの登場、技術革新でそれらは一気に進んで今に至り、オールレンジ兵器としてISに取り付けることが出来るようになった。
 そこで完成したオールレンジ兵器をアナハイムに流したのはキャスバル、ジオンの技術者がイギリスに劣る訳ではないが国力の差は簡単に覆せるものではない。
 そもそも国家の威信を掛けた代物であるために、注ぎ込んだ資金や技術者はジオンの倍以上に達しているだろう。
 ジオン共和国としては別に絶対に完成させる必要があるものではなかったため、なおかつビット無しでも世界最高峰の実力を持つキャスバルが居たためにあまり危惧していなかった。

 しかしながら近年同じ構想の兵器が開発されていると情報を手に入れ、実験の段階まで進んでいると聞きつければそれなりに危機感を出す。
 そこで難のある製造等をアナハイムに委託し、開発はジオン側で進めてようやく形になった矢先、イギリスがBT兵器と称して実験機に搭載して運用し始めた。
 半ば意地でもあったのか、遅れた分より優れた物として出せばいいとBT兵器を上回る性能へと引き上げた。
 その結果が高性能化による調整の難航を招いてしまったが、スペック上では全ての面でBT兵器同等以上と言う性能と相成った。
 無論そこにはキャスバルが要求する性能もあったがための高性能化。

 ニュータイプとしての脅威的な直感力と洞察力にたとえ敵味方が狭い領域で入り乱れていても把握できる空間認識能力。
 肉体的にもニュータイプというのは尋常ではなく、特に反応速度は速く、他者から見て最初から知っていたような動きに見えるほど。
 それらのおかげでIS自体がついて行けないという問題を生んでいた、それを解決したのはνガンダムとサザビーであり、尋常ではない反応速度を見せるキャスバルについていけるよう高性能化を図られたのがファンネル型ビットであった。

 その一応の完成を見せたファンネル型ビットの実験の目処が立ち、当然テストパイロットのキャスバルはビットの適性についてアムロ・レイにも検査を受けさせてみてはどうかと言った。
 結果アムロにも高い適性が見えたために、キャスバルと同様にテストパイロットとして選ばれた。
 キャスバルがやったことと言えばビットの製造をアナハイムに委託する事と、ビット適性の検査をアムロにも受けさせたらどうかと提案した事。
 もとよりキャスバルはアムロにその適正があると確信しており、事実数値上ではアムロの方が高い数値を示し軽い嫉妬を覚えていた。
 イメージ・インターフェイスやビットは元からあったために、あの世界でサイコフレームを横流しした時よりすんなりいった。
 そもそもνガンダムの設計はアムロ・レイとその父、A.EのIS開発部長テム・レイによって行われ、ビットの搭載も考慮されていたのでνガンダム自体に大した改修は行われない。

 とりあえずはあの世界のνガンダムとサザビー、サイズや操作方法が違えどほぼ完璧に再現したと言える出来であった。
 そこにビット、ファンネルと言っていいオールレンジ兵器が搭載されればキャスバルが望む形でアムロとの雌雄を決することが出来る。
 あの時負けたのはナナイ・ミゲルの思念により意識を逸らされ、その一瞬の隙にアムロにしてやられた。
 あれがなければまだやりようはあった、そう考えキャスバルはよりあの世界の状態に近づけようと望む。

「……感傷だな、だがそれもいい」

 確かに記憶に引き摺られているだろう、だからこそはっきりさせたかった。
 私はシャア・アズナブルなのか、キャスバル・ソム・ダイクンなのか。
 内に秘めるこの思いは必ずや成さねばらない、それが決定付けるものであるとキャスバルは確信していた。

「……あの」
「……ん?」

 物思いにふけっていたところに、声を掛けられて視線を向けるキャスバル。

「何かな」
「はい、もうすぐ授業が……」
「それは不味い、遅れると何かと文句を言われてしまうな。 少々考え事をしていて助かった、また同じ光景を見たら声を掛けてくれると助かるよ」
「は、はい!」

 キャスバルが軽く微笑むと同学年の少女は嬉しそうに頷いた。
 三年生の中では凄まじいほど人気があるキャスバル、大人びたその容姿に似合う落ち着いた言動、IS学園で順序を決定付けるISの操縦技術は抜きん出ている。
 更にアムロとの戦いで見せた激しい激情は人間味を溢れさせる、そんな事も相まって熱狂的なファンも居る始末。
 キャスバルもそんな人物のあしらい方も上手く、優しくするため強い求心力を持っていた。
 そんなキャスバルもアムロに固執して、アムロから見れば情けない奴にしか見えないのだから相手にしたくないと思われている。

「それじゃあ行こうか」

 胸を張って廊下を進むその姿は、アムロを除いて情けない奴には見えないキャスバルだった。





 それから授業が終わり放課後、IS学園の一角、アナハイムが借り受けている専用の整備室にキャスバルは足を運んでいた。
 ISを展開してファンネルコンテナの取り付け、接続から動作確認まで行い、ジオンとアナハイムの技師たちの目の前で六基のファンネルを操ってみせた。

「……まだ反応が悪いな」
「……イメージ・インターフェイスに遅延が見られますね、調整します」
「頼む」

 ほぼ女性のみのIS学園に考慮して、女性技師ばかりの整備室。
 この調整が終わればアリーナで動かす予定になっている、おそらくは今頃アムロもファンネルの取り付けを行っているだろう。

「……調整終わりました、どうでしょうか?」

 その言葉を聞いてキャスバルはファンネルを動かす、先程よりも鋭く反応して飛ぶファンネルたち。

「悪くない、これなら何とかなる」
「もう少し煮詰めたいのですが、実働データが無いと完璧に合わせられません」
「その実働データとやらを今から取ってこよう」

 ISを待機状態にして、上手く量子化されたのを確認してキャスバルは足をアリーナへと進めた。

「ほう」

 キャスバルが第二アリーナに到着すれば、アリーナ内で模擬戦を繰り広げている者たち。
 六機のIS専用機、今年入ってきた一年生たちが声を荒らげつつ五機のISが一機のISを追いかけていた。
 口論を交えたそれは少年、世界で唯一の男のIS操縦者である織斑 一夏を攻め立てるものだった。
 それにほうほうの体で逃げ回っている少年、本気で攻撃をしている訳ではないがなんとなく直感で少年は悪く無いと感じ取ってキャスバルは動く。
 すぐにピットへ移動し、ピットゲートを開放、カタパルトに乗って一気にサザビーが加速していく最中。

「ファンネル!」

 三基ずつ収めた左右のファンネルコンテナからキャスバルの意思に反応してとファンネルが飛び出していく。
 ピットから飛び出し高速で五機のISに迫り、高速で切り返しながら周囲を飛び回る。

「……反応が惜しいな、戦闘では辛うじてと言うところか」

 いきなり現れ周囲を飛び回る赤い物体に多少なりとも困惑して足を止める五機のIS、それを見たキャスバルはファンネルを呼び戻してコンテナへと収める。
 サザビーのハイパーセンサーには六基のファンネルの状態が示され、跳び回ってごくわずかに消費したエネルギーが100%まで充電されたと表示されていた。

「あ、貴女は!?」
「感心しないな、競技規定では一対複数での物はなかったはずだが」
「……そちらこそ感心できません、ダイクン大佐」
「それはすまなかった、一機のISを複数のISで追い回すなど普通では考えられない状況だったからな」

 五対一と言う試合など競技規定には存在しない、基本一対一で他には二対二と言った数の上では同等になるものしか無い。

「今のはBT兵器!?」

 周囲を飛び回ったものの正体、それはイギリスの代表候補生が駆るブルー・ティアーズが持つBT兵器と同等の代物。
 イギリスのみが持つ第三世代兵器「BT兵器」をイギリスではない他国、ジオン共和国の国家代表操縦者が扱っていることにセシリア・オルコットが驚く。
 国家の軍事機密を他国のIS操縦者が扱っているのだから驚きもする、それを前にキャスバルは一言。

「勘違いはしてもらいたくはないな、これは『ファンネル』。 ジオンの第三世代兵器、BT兵器とは別物だと思ってもらって構わない」

 事実イメージ・インターフェイスを用いているが構造的には別物であり。
 ファンネルとブルー・ティアーズ、片方の開発に関わった者がもう片方の中身を見れば別物と断言するほど構造は違う。

「そんな事!」
「確かに、やっている事は差ほど変わりはしない」

 そう言ってキャスバルはサザビーの基本状態である全身装甲を解除し、一般的なISの搭乗者を見せる状態に移行させる。
 額にはU字にも見える赤いアンテナとその上に斜め上後方に伸びる角、腰回りには太ももまでしか無い赤いISアーマーのフロントスカート、その左にはト音記号風にアレンジされたCDの文字。
 肩には斜め上に伸びるISアーマーに覆われたフレキシブルショルダースラスター、前腕部分には外側には厚みのある丸みを帯びたガントレット。
 膝から下は裾広がりのようにISアーマーに覆われたスラスターが顔を覗かせている。
 非固定浮遊部位が一切見られない、全体的に見て至ってシンプルで余計な飾りを省いたかのような姿。

「同じコンセプトの装備が何故存在しないと言えるのか聞かせてほしいな」

 キャスバルはその姿でセシリアを見て、手振りを交えて問う。
 ISとは特殊な存在、ISで無ければ実現しなかった代物はいくらでもある。
 IS自体がそうであり、たった一機で戦車数百台、戦闘機数十機以上と言う破格の戦果を期待できる強力な物。
 ならばより機能性を求め、攻撃の威力が低ければ高くなるように、射程が短ければ長くなるように。
 BTもファンネルもその延長上に過ぎず、射撃、自走、遠隔操作と複数の要素を組み合わせた結果遠近問わず全方位から攻撃を加えられるオールレンジ兵器として結実したもの。
 言ってしまえば両方オリジナルであり、技術を盗んだ盗まれたと言う話ではなかった。

「少なくともこのファンネルはジオンが独自に開発したものだ、それだけは信じて欲しい」
「……分かりました」

 まかり間違ってもイギリスから盗んだものではないと、真摯に言うキャスバルにセシリアはしこりを残したまま頷く。

「それで少年、五機のISに追いかけられてどう思う」
「え? それはまぁ……、いきなり追いかけられるのはちょっと」

 いきなり話を振られて理由を言わずにいきなり銃口などを向けられるのは気分がイイものではない、頭を掻きつつそう言葉を濁しながらの一夏。
 それを聞いて他の五人はそれぞれがバツの悪そうな表情を浮かべる。

「だったら話し合いから始めてはどうかな? ISを振り回して追いかけている姿は見ていて気持ち良いものではない」

 これがISを使っていない校内での追いかけっこなら青春をしているで終わるのだが、オモチャにしては度が過ぎるISを振り回すのはナンセンス。
 軍用の側面を持つISだと認識していない、まさに子供の言動にキャスバルは少々呆れた。

「自分たちの立場、それを意識して動くべきだと覚えていて欲しい」

 六人の内の四人は国家のIS操縦者代表候補生。
 代表候補生だとそれなりに知られ、普段の言動がそのまま国のイメージとしてつくかもしれない。
 国家の代表になろうとするならば、大衆の注目を集めることと同じ意味でそれは学園内でも適用される。
 ならば人目を気にして動く必要もある、国家代表とはモンド・グロッソに出るだけではなくプロバガンダの意味合いも含まれている。

「……いかんな、小言が過ぎたようだ」

 いつの間にか国家代表から代表候補生たちへの説教になっていたことに気が付き、六人に謝るキャスバル。
 小言を言う事になるとは私も年を取ったか、いや、それが大人の責務ということか。

「………」

 そんな事を呟くキャスバル、六人とは2つほどしか離れていない年の先輩が年を取ったかと呟く姿はどこか可笑しさを感じさせられるもの。

「すまなかった、失礼する」

 そんな事は露知らず、あっさりと踵を返してキャスバルはアリーナの端に移動しようとするが。

「大佐、自分に訓練を付けてもらえないでしょうか」

 キャスバルの前に移動してきて留めたのはラウラ。

「ほう、訓練か」

 無論ラウラには思惑がある、実際に目にしたサザビーの動き、もし敵対することになれば祖国に対してどれほど脅威になるか推し量るもの。
 それだけではない、噂の域を出ないが第一回モンド・グロッソのブリュンヒルデである織斑 千冬よりも強いと言う話もある。
 ラウラはそれが気に食わない、敬愛する教官よりも強いなどと、実際に体感した教官の強さと同等以上などとは到底信じられなかった。

「良いだろう、ただ機械的に動くターゲットよりは誰かが動かすISの方がまだましか」

 実働データから実戦戦闘証明の方が得られる物が大きいだろうと判断し、キャスバルはラウラの申し出を受ける。

「では……」
「後ろの君たちもどうかな、私としては数が多いほうがいいのだが」
「でもそれじゃあ……」

 先ほどキャスバルが言った様に、競技規定には一対複数と言う数的不利になるようなルールはない。
 それを自分から申し出るのは、当然何らかの意味があってのこと。

「ファンネルの動きを確かめたい、さすがに六人以上になると数が合わないので困るが、どうだろうか」

 一人に付き一基、それで対応するとキャスバルは言う。

『……ねえ、この人私たちのこと舐めてない?』

 キャスバルの申し出は、六人の相手はファンネル一基で事足りると言われているようなものだと鈴音が五人に向けて通信で呟く。

『私達のことを見下していますわね、それにBT兵器の制御にどれだけ集中しなくてはいけないのかわかっていらっしゃらないんでしょうか』
『フン、例え上級生でも容赦する必要などあるものか、舐められたならその分思い知らせてやればいい』

 挑発染みた提案にメラメラと火が付いた鈴音、セシリア、ラウラの三人。

『うーん、でも実際の動きを見てるとそう思っても不思議じゃないと思ったけど……』
『だが六対一は流石に……』

 一夏たち六機の内、第三世代機が三機、性能を底上げされている第二世代機のカスタム機、そして世界にたった二機しか存在していない第四世代機が二つ。
 操縦者も代表候補生に最近メキメキと実力を伸ばしてきている一夏と箒、戦力としては一国を相手取れる戦力である。
 それを一機、一人でしかもオールレンジ兵器一基ずつで対応すると見下しているようにしか取れないもの。

「あのー、そのファンネルって壊れても……」
「構わんよ、ある程度の予備はある」
『だそうだ、落とされても問題ないようだしやってみてもいいんじゃないか?』
『動かす間もなく撃ち落としてやるわよ!』
『……問題としないなら、いいのか』
『……確かアナハイムだったかな、ちょっと気になるし僕もやってみるよ』

 血気盛んな三人に一夏の賛同、それについ乗ってしまった箒とシャルロット。

「いいですよ、先輩」
「助かる、準備は?」
「いつでも」
「ええ、すぐにでもやれますわ」
「ならばはじめようか」





 移動してAピット側にはキャスバル、Bピット側には六人。
 六対一、数の戦力比で見れば絶望的と言える。
 だがキャスバルにはそんな堅苦しい雰囲気を纏ってはいなかった。

「時間だ」

 軽く言う姿、その時にはラウラが大型レールカノン「ブリッツ」を、セシリアが特殊レーザーライフル「スターライトmkIII」のトリガーを引き絞っていた。

「ファンネル!」

 だが既にキャスバルはその射線上から退避し、背部のファンネルコンテナから六基のファンネルを射出していた。
 加速しながらスラスターカバーを展開しビーム砲身を伸ばす、ファンネルはそれぞれ違う軌道を描いて一人一基で向かっていく。
 それを見てそれぞれが迎撃、否、撃墜を狙った行動。

「甘いな」

 斬撃や銃弾をファンネルは機敏に回避し、応射のビームを放った。

「ぐっ! 速い!?」

 迫ってくるファンネルに向かって飛び、雪片弐型を振り抜いた一夏は盛大に空振りし、避けたファンネルは一夏の手痛い一撃を食らわせる。
 放たれたビームは白式のシールドバリアーに接触し、シールドエネルギーを減らす。
 驚いたのは一夏だけではない、それぞれがファンネルを撃墜する意思を持った一撃を放ち、その全てをファンネルたちは別々の軌道を描いて回避した。
 その機動性はブルー・ティアーズの物とそう変わりないのだが、まるで攻撃が来るのがわかっているように軽やかに動いてビームを返してくる。

「どうしてビットがあんなに動かせるんですの!?」

 セシリアもビットのブルー・ティアーズを飛ばし、迎撃に向かわせるもファンネルを狙ってレーザーを放ち、ファンネルはそれを回避と同時にビームを撃ち返してブルー・ティアーズを撃ち落とす。
 一対四、サザビーのファンネルは数の優位は見る間に崩してセシリアへと撹乱機動を取りながら迫る。
 明らかに機動力が違うように見える、だが数値上はそれほど差がないと言うのに全くと言って良いほど動きを予測できなかった。

「これ拙、うわっ!」

 狙い打つには小さく、その上ジグザグに動くファンネルを捉えられず、シャルロットはせめて弾幕の偶然を狙ってのマシンガンを放つ。
 だがそれすらもビーム砲身を向けたまま大きく旋回しつつ、シャルロットを狙い打つファンネル。
 なんとか回避するもすぐにファンネルは追ってシャルロットを狙い打つ、今度は避けきれずシールドバリアーに接触を許してしまった。

「こいつら動きすぎでしょ!?」

 面での攻撃でファンネルを落とそうと龍咆の拡散衝撃砲を放つ鈴音だが、ファンネルは距離を取って鈴音から離れていく。
 その間に双天牙月を量子展開で呼び出し、手元で連結させて振りかぶる。

「こんのぉー!」

 高速回転する手首と連動して回転する連結された双天牙月、一つの円盤に見えるほど回転させてファンネルに向けて投げつける。
 弧を描きファンネルに迫るも、一発ビームを撃ち出して双天牙月の軌道を逸らす。

「いっけぇぇぇぇぇっ!?」

 その時には四門の拡散衝撃砲を放った、それぞれの砲身を僅かにずらして、ファンネルと予測できるその回避領域へと叩きこむ。
 小さく狙いにくいファンネルは点の攻撃には強いが、面の攻撃には弱い。
 一瞬で範囲内から離脱出来る推力か、攻撃に耐えれるだけの防御力を持つか、そのどちらも持たなかったファンネルは回避行動を取らず許す限りのビームの連射を行った。
 赤い炎の散弾がファンネルと交差し、そのダメージでファンネルは爆散し、鈴音に向けて放たれたビームはきっちりと全弾撃ちこまれて甲龍のシールドエネルギーを大幅に削っていた。

「追いつけるのに当たらないっ!?」

 箒は鈴音がファンネルを落とす光景を余所目に、尽く攻撃を避けるファンネルに苦戦していた。
 右の雨月による刺突のレーザー、左の空避による飛ぶエネルギー刃、狙い放つも繰り出した時にはファンネルは既に射線上には居ない。
 白式同様極めて高い機動力を誇る紅椿の速度はファンネルの機動力を上回るも、箒が気づかない巧みなキャスバルの誘導により今一歩の所で距離を取られる。
 箒がダメージ覚悟で突っ込めば空中を滑るように横に移動して、紅椿に対して決して直線的に動かずビームを撃ち放つ。

「この動きは一体!?」

 紅椿は現行のISの中で最も高い性能を持つ、技術も何もないその機体スペックだけのゴリ押しでも大抵の相手は落とせる。
 だが今相手取るファンネルはその性能を持ってしても撃ち落とせない、まるで箒の動きが全て見透かされたように回避して攻撃を加えてくる。

「くそっ、なんで!」

 紅椿は箒の意思を汲み取り、取りたい動きを完璧に行っている。
 だというのにファンネルには届かない、箒はなんとか動きを抑えようと紅椿の展開装甲を稼働させ、背部非固定浮遊部位を切り離してビットとして放つ。

「いけっ!」

 旋回しながら紅椿のビットはファンネルへと向かう、その迎撃でビームを放たれ、それを回避させた時には次射のビームでビットの一基が撃ち落とされる。

「やっぱり!」

 読んでいる! キャスバル・ソム・ダイクンはこっちの動きを完全に捉えている!

「ならば!」

 全力全開、ビットを大きく旋回させながら紅椿をファンネルへと向かって飛翔させる。
 前面に展開装甲のエネルギーシールドを開き、まるで体当たりのようにファンネルへと突き進む。

「これでぇぇぇっ!!」

 ファンネルがビームを放ちつつ回避機動を取るも、即座に紅椿の軌道修正、ファンネルの機動力を上回る加速で捉えた。
 ビームを弾く前面に展開された強固なエネルギーシールドによる体当たり、まさに紅椿の高い性能に頼った全力全開の突貫でファンネルを轢き吹き飛ばした。
 そうでもしなければファンネルを落とせなかった、砕けて落ちて行くファンネルの残骸を見た後箒は顔を上げる。
 その先にはファンネルを無視してキャスバルへと向かっていくラウラの姿。

「羽虫など!」
「残念だろうが」

 ブリッツを撃ちながら、サザビーを捉えようと加速するも。

「毒蜂だ」

 ラウラの周囲を旋回していたファンネルがビームを放ち、シュヴァルツェア・レーゲンのシールドエネルギーを減らす。

「邪魔だ!」

 左手を向けてファンネルに向かってワイヤーブレードを複数放つ。
 急な角度変更をしながらファンネルに向かって飛ぶが、動きながらのファンネルは簡単に撃ち落とす。

「この動き、インコムにも似ているな」

 ワイヤーブレードをファンネルの囮に使い、キャスバルへと迫るラウラ。
 だがキャスバルが操るファンネルはそれを許さない、ワイヤーブレードを回避してビームを走らせ、ラウラへと直撃させる。

「くっ!」
「ファンネルを撃ち落としてからにしたほうがいい」

 回避と攻撃を同時に行うファンネルは、どう足掻いてもラウラに無視させない。
 ラウラがキャスバルへと至るにはファンネルを叩き落さねばならず、無視すれば鋭い一撃がラウラの背中に突き刺さる。

「小賢しい!」

 更にワイヤーブレードを追加で放つ、それぞれが時間差でファンネルへと殺到するも、すり抜けてラウラへと迫りながらビームを放つ。
 本体と繋がって複雑な軌道を描くワイヤーブレード以上に複雑な軌道、あっさりとラウラはファンネルの接近を許し、目前でビーム砲身の中に光が宿るが。

「小賢しいと言った!」

 翳していた左手が、手が届かない位置のファンネルを捉えていた。
 パッシブ・イナーシャル・キャンセラーを発展させたアクティブ・イナーシャル・キャンセラーによる『慣性停止結界』。
 ぐるりとファンネルの向きが無理やり変えられ狙いがラウラから外れる。
 ファンネルの推進力では到底逃れられず、大きく弧を描きラウラの目前をワイヤーブレードが通り過ぎてファンネルを串刺しにして破壊する。
 そのまま停止結界を解除して機能しなくなったファンネルを放り投げる。

「第三世代兵器だったか、接近戦では無類の強さを発揮できるか」

 その能力にキャスバルは感心し、未だ余裕たっぷりのその姿にラウラは不快感を表す。

「これで落とされたファンネルは三基、いや、四基か」

 キャスバルが見据える先には一夏が瞬時加速を用いてファンネルに接近し、すれ違い様に雪片弐型を振るって両断していた。
 未だ無事なファンネルはセシリアとシャルロットに向かっているファンネルのみ、その他のファンネルは破壊され使い物にならない。

「では訓練を始めるか」

 その一言でキャスバルの姿を隠すようにサザビーは全身装甲を纏っていく、その間にファンネルを呼び戻してコンテナに収納する。
 構成される腹部拡散メガ粒子砲、胸を置い隠す前に伸びる胸部装甲、頭部にはヘルメットのような形で覆われて鼻や口元にも赤い装甲。
 黒く彩られた目元は緑色のハイパーセンサーが灯る。

「実戦だろうな」
「勿論です」

 睨むようにラウラがサザビーを見る。

「手加減は不要と見える、本気で行かせてもらおう」

 先に動くのはラウラ、弾かれたように迂回しながらワイヤーブレードを射出。
 キャスバルはビームショットライフルを連射し、弧を描くワイヤーブレードを全て撃ち落として後退。
 チャージが終わっていないファンネルを射出し、腹部拡散メガ粒子砲をチャージ。
 ラウラはブリッツを後退するキャスバルに向け放つも、キャスバルの上空にあったファンネルがそれを撃ち落とす。

「なにっ!?」

 余りにも呆気なく通常では考えられない事をやってのけるキャスバルにラウラだけではなく、他の五人も驚く。
 驚きの余り次の動きに遅れを生じさせた隙をキャスバルは見逃さず、腹部拡散メガ粒子砲をラウラへと浴びせかけた。

「っ!」

 迫る黄緑のビームの波に全力で上昇し回避行動を取るラウラ、その瞬間にはファンネルがラウラの周囲に付いていた。
 後方斜め上からのビームを一撃、シュヴァルツェア・レーゲンのシールドバリアーはそれを防いでエネルギーを消費。
 舌打ちをしながらファンネルに向けてワイヤーブレード、それを呆気なくすり抜けてファンネルは砲身をラウラに向けたまま旋回。
 次の瞬間にはラウラの下方からもう一基のファンネルからの一撃、意識の死角からの一撃を避けれずまたもシールドバリアーに接触。
 そしてラウラはたった二基のファンネルの檻に閉じ込められた。

 一基の相手をすればもう一基が死角から撃ち込み、なおかつ攻撃を読んで動かされるファンネルを撃ち落せず回避も虚しくラウラは蜂の巣にされる。

「もっと周囲に気を配るといい」

 ファンネルに気を取られすぎてキャスバルの声に振り返るラウラが見たものは、目前に迫った明るい黄色の光であった。
 避けることが出来ず限界を迎えていたシュヴァルツェア・レーゲンのシールドバリアーはビームショットライフルの射撃で撃ち抜かれ、絶対防御を発動させられて落下していくラウラ。
 それをすぐに抱き留めたのは一夏、キャスバルも武装を解除して一夏のもとに向かう。

「筋は悪くない、ファンネルの動きも見えていたようだ。 だが見えるだけでは駄目だ、それに君は一点に集中しすぎた」

 ラウラは意識は失っておらず、一夏の腕の中でキャスバルを見た。

「ファンネルの動きの予測は彼女のBT兵器を参考にしたな? はっきりと言えば彼女と私とでは運用方法に違いがある、その違いをもっと速く認識して切り替えるべきだった」

 ファンネルを使っている時は本体は動けない、そんな物が意識の中にあったのではないか? そう問われてラウラは頷いた。

「意識の割り振り方をもっと学ぶといい、君たちは未だ発展途上、これから更に強くなれるだろう。 無論、精進し続けたらの話ではあるが」

 そう言ってキャスバルは一夏を見て。

「彼女を頼めるかな」
「はい」
「では頼む、ファンネルを四基も壊されるとは思っていなかった。 これでは叱られてしまうな」

 ふっとキャスバルは笑ってピットへと戻っていく、その後すぐに箒たちも一夏の傍に寄ってきた。

「……完敗ですわ」
「あんなに動くだなんて思っても見なかったよ」

 ファンネルを撃ち落せなかったセシリアとシャルロットが残念そうに呟く。
 特にセシリアはがっくりと肩を落として溜息、自身よりも遥かに卓越した制御を前に自信を失っていた。

「装備の違いって奴でしょ、それにしても一基であんだけしてやられたんだから、六基全部を相手にしたら速攻で落とされるんじゃないの?」
「確かに、一基に手間取るだけで先ほどのラウラ以上の目に遭うのは間違い無いだろう」
「……これほど簡単にしてやられるとは」
「と言うか、瞬時加速で奇襲掛けなきゃ落とせる気がしなかったぞ」

 それぞれがオールレンジ兵器の恐ろしさと、それを操ってみせたキャスバルに畏怖を覚えた六人だった。

「……ラウラ?」
「なんだ?」
「……いや、何でもない」

 一夏の腕の中のラウラは一夏に擦り寄る、それに気が付いた他の四人がまた騒ぎ出すのは当然であった。

「一夏! ラウラは私が運ぶ!」
「そうだね、僕もそれがいいと思うよ」
「なんなら私でもいいわよ? 一夏に運ばせると碌な事にならないし」
「ええ、ここは一夏さん以外の方が運んだほうが賢明ですわ」
「なんで俺がラウラを運んだら碌な事にならないんだ?」
「わざわざ手間を掛けることもない、それに私は一夏に運んで欲しい」

 一夏がラウラを抱えるポーズは俗にいうお姫様抱っこ、するりとラウラは一夏の首へと腕を回す。

「この高さで落ちるのは危険過ぎるからな」
「ああ、そうだな」

 危ないことにかこつけて一夏とスキンシップを図るラウラに、冷ややかな視線を向ける四人であったがラウラは全く気にしない。
 当のラウラは一夏のぬくもりを感じつつ、先ほどの戦いを思い出していた。
 確かに実力はかなりのもの、アリーナで眺めた時にはまだ何とかなると思っていたが実際に対峙すれば新たな装備と相俟って凄まじい強さ。
 はっきりと言えばセシリアのBT兵器よりも数段厄介、性能的にはそれほど変わらないだろうが制御する人物の質が違う。
 それにファンネルはまだ完璧ではない物言い、物自体は完成はしたが微調整が済んでいないだろう代物であれだけの動き。

 完全なものになればどれほどのこうかを発揮するのか、そもそも本当にキャスバルは本気を出していたのか。
 底の見えぬキャスバルに僅かながらも恐れを抱いたラウラだった。




















 なんかクソ長くなったんで分け
 時系列的には三巻と四巻の間?
 アムロ以外には強いシャア、子供なんて余裕ですよ
 宇宙世紀シャアかIS世界キャスバルか、一応どっちつかず状態
 ファンネルのお話、全方位から迫り来るビームは避けれまい! それにプラス本体の射撃が混ざります、アムロとシャア変態すぎる
 アムロちゃん出番なし、このシャアは大尉を想定したけどなんか違う気がする
 つーかビット扱えるセシリアは普通に凄い部類だけど、アムロとシャアが変態的な能力で霞んで見える
 だからこそセシリアとアムロの接点が出来そう、ビットの扱い方云々
 基本的にアムロとシャアは武装を量子化していない、バズーカを背中にマウントしていたりする、その分機体に回して出力上げてそう


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