ホーム > 報道・広報 > 2011年aff(あふ)8月号 > aff(あふ)バックナンバー > 10年12月号目次 > affインタビュー 第44回
「食はバランス。ごはん・大豆と減塩で」を合言葉に、生涯健康な暮らしを実現しましょう。 |
やもり・ゆきお
昭和12年、京都府に生まれる。昭和42年、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在、武庫川女子大学国際健康開発研究所所長、財団法人兵庫県健康財団会長、京都大学名誉教授、WHO循環器疾患専門委員を兼任。主な著書に『「長寿食」世界探検記』『カスピ海ヨーグルトの真実』『大豆は世界を救う』などがある。 11月20日が「かんぶつの日」に制定された理由 家森さんのお話では「11」は「いい」、「20」の漢数字「二十」を縦書きにして組み合わせると「干」という字になることからだという。「健康にいい乾物(干物)を、食卓に取り入れましょう」という気持ちがこもっているそうだ。 新刊の『遺伝子が喜ぶ長生きごはん—タウリンとマグネシウムの健康パワー』。朝日新聞出版、定価800円+税 |
地球を歩いて調べた長寿の栄養源
「ちょうどいいタイミングでいらっしゃいました」家森幸男さんはニコニコしながら、1冊の文庫本を差し出した。刷り上がったばかりの最新刊『遺伝子が喜ぶ長生きごはん』。帯には「カスピ海ヨーグルトを広めたDr・ヤモリが説く究極の長寿食『古膳(こぜん)』のススメ」と書いてある。 家森さんは生徒に講義するように、ていねいに話し始めた。 「私は長年、脳卒中ラットの研究を続けてきました。その実験によって、脳卒中と食塩の関係が明らかになりました。食塩の摂り過ぎは脳卒中を招く一因ですが、同じ量の食塩を摂っても、大豆や魚などのたんぱく質をしっかり摂っていれば、脳卒中になりにくいことが分かった。そして、家系的に脳卒中になる可能性はあっても、正しい食事でその発症を防げることも分かったのです」 家森さんが京都大学で病理学を学んでいた当時、日本人の死亡原因第1位だった脳卒中のリスクを、何とか軽減したいと思っていた家森さんは、人間からデータを取り、脳卒中ラットの研究成果を裏付けることはできないかと考えた。そしてWHO(世界保健機関)の協力を得て、食事と栄養、病気との関係を解明する調査を始めたのである。 人が1日に排泄した尿を調べることで栄養評価をする方法を考案し、25年間に25カ国61地域に足を運んだ。そこで人々の尿を採取し、データを分析。ケニア南部からタンザニア北部にかけて住む先住民マサイ族の村に逗留し、オーストラリアの先住民であるアボリジニと同じ食事を食べながら、ともに過ごした日々もあった。 日本の伝統食の食材が健康に導く
そして、気の遠くなるような調査の末にたどり着いた結論が「健康と長寿に深く関与する2大栄養素は、タウリンとマグネシウムだ」ということだった。「タウリンは魚介類に含まれるアミノ酸の一種です。タウリンを摂取すると、交感神経の働きが抑えられて血圧が下がり、血管に脂肪がつきにくくなることが分かりました。 マグネシウムは塩分の排出に重要な役割を果たし、血糖値を調節するインスリンの働きを助け、また最近では動脈硬化の予防にも役立つことが分かってきました。私たちの体内のマグネシウムは加齢とともに減っていくので、食事で補わなくてはいけません。マグネシウムが足りなくなると、血管の壁にナトリウムがたまって水分で壁が厚くなり、血圧が上がりやすくなるからです」 マグネシウムは生活習慣病の予防や改善に大きな鍵となる栄養素なのだという。 「マグネシウムが豊富に含まれているのは海藻類や魚介類。雑穀や豆類、ナッツ類、野菜類にもマグネシウムが多く含まれています。 豆類には、マグネシウム以外にも食塩を腎臓から追い出し、血圧を下げる働きがあるカリウムが豊富ですし、大豆に多いイソフラボンは、血管を拡げ、血管内に血栓を作りにくくする一酸化窒素を活性化してくれます。豆類は積極的に取るようにしましょう。 私たち日本人は、古来よりこれらの栄養素を豊富に含む食事をしてきました。日本人が昔から使ってきた食材は、健康を支える栄養素があるものばかり。伝統的な食文化である乾物類も、もっと取り入れたいものです」 日本かんぶつ協会の会長でもある家森さんは、乾燥豆を含む乾物の上手な利用方法も広めていきたいという。ちなみに毎年11月20日は「かんぶつの日」だそうだ。 |