ヘッドスライディング:summary
忙しい人のために要点だけ3つ。
このページはうんざりするほど長いんです(m(_"_)m)が、何が書いてあるかというとですね、
- 1:ヘッスラは安全だと主張する気はないし、べつにヘッスラ好きでもない。怪我するぐらいならやめて欲しい。
- 2:ただ、ヘッスラは遅いという主張のうち、説得力のあるヤツはひとつも見たことない。例えば「ヘッスラの方が早いなら陸上100mでもやるはず」だなんて、バカ過ぎて笑っちゃう。
- 3:ヘッスラは遅いというのは迷信だと思う。
というようなことです。うち、主に言いたいのは2で、左カラムの目次
←←←で言うと、「飛べば推進力を失う説を疑う」までは全部それ。分量的には、たぶん7割近くを占めます(つまり、2以外はそんなに長くない)。2には起承転結とかストーリー展開とかは基本的になく、ひたすら羅列です。「Aという説について考える。次にBという説について考える。次にCという説について考える。次にDという説について考える・・・」という感じ。なので、基本的にどこからどういう順番で拾い読みしても大丈夫です。5 - 6行読んで面白くなかったら、読むのをやめてください。我慢してそれ以上読んでも、だんだん面白くなったりはしません。
だいじなことなので2回書きます。どこから読むにしろ、5 - 6行読んで面白くなかったら、それ以上読んでも無駄です。速やかにこのページを閉じてください。
で、3は、特に言いたいわけでもないのですが、2を受けての結論がそうなるのは仕方ないということで。僕がこの長文を書いたモチベーションは「ヘッスラについて何かを主張したい」というような積極的なものではなく、ヘッスラは遅いに決まってるという個々の説についての、「んなバカな理屈はないだろ」という、受動(リアクション)的で消去法的なものです。
あとは関連で、
- ヘッスラで、踏み切ってから落ちるまでは何秒か
- オリンピック選手は1秒あたり何歩走るか
- ショットガンタッチで、ボタンを押してからボールが床に落ちるまでは何秒か
- 走り幅跳びの究極のフォーム
- ヘッスラと駆け抜けを比較した実験データ
- ヘッスラによる怪我の実例
などの話題に興味ある人は読んでみてください。もっとも、考えれば(あるいはGoogle先生に訊けば)誰でもわかるようなことしか書いてないのですが。読んで、文句を言いたくなった人は、こちらから誹謗でも中傷でも嘲笑でもなんでも、気軽に送ってください(匿名可)。ブログのコメント欄に書くという手もあります。いちばんありがたいのは、文句あるいは誤謬の指摘をご自分のブログに書いていただき、お前の主張を批判する記事を書きましたよ、とご連絡いただくことです。もれなく感謝&リンクします。短く言うとカンシャンドリンク。
ヘッドスライディング:introduction
ほんとうのところどうなのか
ヘッドスライディングより真っすぐ駆け抜けた方が速い、という説は、あまりにも強固に信じられている。「怪我のリスクとかはさておき、はやさだけで言ったら頭からダイブした方がはやいんじゃないか」なんて言ったら大変だ。ナニ言っとるや、そんなわけないわ、絶対遅いって、決まっとるがや、おまさんアタマ大丈夫かや、という激烈な反応が返ってくる。その論拠としてネット上でよく見かけるのは「言うまでもなく」「当然ながら」だ。Wikipediaの「スライディング」の項の「履歴」を見ると、例えば「2007年5月13日 (日) 16:07時点における版」にはこういう記述がある。
打者走者の一塁へのスライディングは、本来全く必要性が無い。(中略)当然ながらスライディングよりも走りぬけたほうが速いから、早く一塁に達するために、通常はスライディングを行わず、そのまま一塁を踏んで駆け抜ける。
「もちろん」とか「明らかに」なども多く用いられる。
「当然ながら」が論拠と呼べないのは言うまでもないと思うが、論拠の必要性すら意識されないまでに当然視されている現状の、ひとつの理由はたぶん、素人受けする派手なプレーだからだろう。クルマの世界におけるドリフト走行のようなものだ。ドリフト? はん、確かに派手で速そうに見えるだろうが、オレらから言わせりゃあんなものは無意味なケツ振りダンスよ。本当に速いのはグリップ走行よ。そう発言する人はしばしば得意げに鼻の穴をふくらませ、素人を見下ろす目線になる(想像)。正直なところ、「ヘッスラ? ププッ、宙を飛ぶから速いってか?」と言う人々の口調にも似たものを感じることが(たまに)ある。素人受けするものを無意味だと貶すのは、通っぽくてカッコイイのである。「推進力を失う上に、ズルズル滑れば摩擦で減速するばかり」と言われるところなんかも、ヘッドスライディングとドリフト走行は妙に似ている。
ドリフトにもいろいろあるんだろうが、ヘッドスライディングにもいろいろある。仮に、ベースのはるか手前で踏み切ってズルズル・ズザーーーッと滑るのを「ズザー」、荒木雅博や蔵本英智が見せるような、滑る距離が極少(場合によってはゼロ)なのを「ダイブ」「ダイビング」または「ダイレクトダイビング」と呼ぼう。スライディングとはすなわちブレーキをかけることなので当然遅い、とかよく言われるのは「ズザー」のことだろう。それでも下図の通り、リーチの点ではアドバンテージがある。そしてダイブなら、ブレーキがかかるのは触塁後だ。
ダイレクトダイブなんて怪我するに決まってる、ともよく言われる。イチローが二塁をまっすぐ駆け抜けようとしてセカンド井口資仁とぶつかった、という話などを知ると、駆け抜けとヘッスラのどっちが危険かは場合によるとも言えるが、たしかにヘッスラで怪我した実例は多い。1994年の「国民的行事」10.8決戦で立浪和義が内野ゴロでヘッスラしてセーフになったが肩を脱臼して退場、という例はよく知られているし、プロと違ってほとんど報道されることはないが、少年野球での骨折や脱臼の例も多いはずだ。
ただ、だからといって「怪我するに決まってる」はないだろう。ダイブして左手でダイレクト(あるいはほぼダイレクト)にベースタッチ、その後ベースの右をズザーッと滑って停まる、というヘッスラ(仮に「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」、略して「左手ダイブ」と呼ぼう)を、観測所員は2008年のわずか1週間の間に二度目撃した。一度は6月27日の中日対横浜戦一回表、横浜から移籍したばかりの二番小池正晃が三ゴロでヘッスラ決めてセーフになった(記録はサード村田のエラー)例。もう一度はその翌週、7月3日の中日阪神戦八回表、荒木雅博がセーフティバントを試み一塁に雨中のヘッスラ敢行、しかしピッチャー渡辺の絶妙のグラブトスでアウトになった(記録は投ゴロ)例。左手ダイブなら安全だ、と言いたいわけではない。げんに怪我しない実例の方が(プロでは)圧倒的に多いのであり、「怪我するに決まってる」はあまりに乱暴な言い分だ、と言いたい。
▼more...
しかしながら7月3日の荒木のヘッドスライディングには、こんな後追い記事が出た。
荒木「全身痛い」 7・9ヘッドスライディング後遺症(名古屋タイムス)
中日の荒木雅博内野手(30)が「ヘッドスライディング後遺症」に悩まされている。3日の阪神戦(甲子園)の八回にセーフティーバントを試み、一塁へヘッドスライディング。アウトになったものの、落合博満監督(54)は「ああいうやつがいる限り大丈夫」と賛辞を送った。だが体へのダメージが大きく、思い切りプレーできない状態に陥っている。
ユニホームが破れ、ぼろぼろになったヘッドスライディングから5日がたった8日の広島戦前、荒木は「まだ体全体が痛い。全身に(痛み止めの)注射を打ちたいくらい」と「症状」を話した。気迫あふれるプレーの衝撃は、それほど大きかった。
手負いの切り込み隊長は「バットが振れない」と嘆く。3日の阪神戦まで7試合連続で安打を放ち、打撃は上昇気配をみせていたが、その後4試合は19打数2安打の打率1割5厘。体が思うように動かない。
守備にも影響。「できればあまり飛び込みたくない」と話しており、ダイビングキャッチに不安を感じている。8日の広島戦ではダイビングをためらって一、二塁間のゴロを捕球できずに悔しがる場面があった。以下略
(2008年7月9日更新 / 高柳 隆)
たったひとつのセーフと引き換えに、5日たっても全力プレーできないというのでは、本人にとってもチームにとっても野球ファンにとってもプラスとは言えない(まして、このときの荒木はアウトになったんだし)。やっぱり危ないのだろうか。通常の「ズザー」と「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」の違いは、すべってから触塁するか触塁後にすべるかだけなので、なぜそんなに全身打撲になるのか理解できないんだが。「受け身をとってから触塁」と「受け身と触塁をほぼ同時」の違いなのか。
いずれにせよ、安全だと主張する気はない。高校野球で横行する「ひたむきさのアピールとしての九回二死でのヘッスラ」がアホらしい(或いは醜い)という意見にも同感だ。それはともかく、ほんとにヘッスラは遅いのか。
◆◆
この話題を語るとついつい人は「速いか遅いか」にフォーカスしがちだが、野球では(だけでなく、陸上競技も自動車レースも)じつは、速度を競うわけではない。男子100m走の世界記録保持者は「人類最速の男」と呼ばれたりするが、それは慣用表現であって厳密にはちょっと違う。勝敗(アウト/セーフ)を決するのは速度(fast or slow)ではなく「どっちが先か(early or late)」だ。「スライディングよりも走りぬけたほうが速い」というのが仮に事実だとしても、そのこと自体に意味はない。問題は「どっちが触塁が早いか」である。速くなくても早けりゃいいのだ。
陸上競技は胴体で判定する決まりなので、走者はたいてい胸を張ってゴールインする。もし「胴体に限らず体のどこか」でいいとしたらどうか。ランナーが象なら鼻を使うだろうし、人間の場合は手でしょう。手を前方に伸ばすことには速度面のマイナスがあるはずだが、リーチ(腕の長さ)を生かすことのプラスは、それをはるかに上回る(と、いうのは想像で言ってるのだが、下の写真なんか見れば明らかだと思う)。ちなみに水泳選手は、腕を真っすぐのばした体勢でタッチしないと損なので、「ゴールまであと1掻き半」と判断しても、体勢によっては1掻きで止めたりする。半掻きぶんの推進力を捨ててでもリーチの有利さをとる、すなわち
「速さを捨てて早さをとる」
のである。これは想像ではなくて、水泳選手がそう語るのを聞いたことがある。競っているのは速度ではなく早さなのだから、それが当然だろう。
では、短距離走でゴールテープが地上80センチの高さに張ってあり、それに触れないとゴールが認められないとしたらどうか。やっぱりゴールの瞬間に上体を倒して手で触りに行くでしょう。地上3センチだったらどうですか。馬なら踏みに行くだろうが、人間は(怪我のリスクを無視して言えば)ダイブが有利なような気がする。「人間も馬と同様に前肢、すなわち手をのばす」という言い方をしてもいい。下の2枚のシルエットはよく似ているではないか。
◆◆
マーティ・キーナートも、ヘッスラなんぞバカのやることだと主張している。
ヘッドスライディングは禁止せよ:Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記
スポーツジャーナリストのマーティ・キーナートは『スター選手はなぜ亡命するか』(KKベストセラーズ 1998)で次のように述べている。
絶対に無理なことでもとりあえずは死ぬ気で努力しているのだというポーズを見せることが美徳とされる日本では、誰もこの(一塁への)ヘッドスライディングを変だと思わないようで、だからこそ頻繁に目にすることができる。(p.200)
そして、アメリカではヘッドスライディングをした場合、アウトにしてしまうことすらあるらしい。
ヘッドスライディングをした場合、アメリカの審判は必ずといっていいほど、アウトのコールをするのだ。アメリカの審判はみなヘッドスライディングが走者のスピードを低下させるうえに、ケガも招きやすい無意味なプレーであることを、じゅうぶんわかっているからである。(中略)審判たちにしてみれば、スピードを低下させ、ケガの危険を冒してまで、一塁にヘッドスライディングするようなばかは、アウトとコールされても当然なのだろう。」(p.202-3)
1:「アメリカではほとんど誰もが一塁へのヘッドスライディングのバカバカしさを知っている」
2:「まれにやってしまうバカもいるが、そんなのは(たとえセーフでも)審判がアウトのコールをする」
という主張のようだが、ところで、しかし、事実だろうか。
たまたまだが、「メジャーリーガーが一塁にヘッドスライディングしてセーフになった」例をふたつ発見した。
ひとつは第2回WBC2次ラウンド1組第3試合、カリフォルニア州サンディエゴ、ペトコ・パークにて行われたメキシコ対キューバ戦(2009年3月17日)の記録。4回裏。もうひとつは同じ年のMLB ペナントレース、メッツ対ヤンキース戦(2009年6月27日)の記録。5回裏。高校野球は別として、プロでの一塁へのヘッドスライディングなんて、もともとあまりないプレーである。同じ年の3月と6月に北米大陸でこういうことが起きているということは、「けっこう起きてる」というか、「日本と大差ない」のではなかろうか。しかも、2例ともセーフになっている。
▼more... アウトになった例だが、動画もひとつ見つけた。
2007年9月1日、レッドソックスのルーキー右腕クレイ・バクホルツ(Clay Buchholz 23歳)はオリオールズを相手に、メジャーデビュー2戦目(初先発)にしてノーヒットノーランという近藤真市ばりの快挙を達成した。
これはその試合の七回表の映像。
先頭打者、オリオールズの四番ミゲル・テハダの放った打球はセンター前に抜けるかと見えたが、ボストンのセカンド、ダスティン・ペドロイアが必死の Diving Stop、立ち上がりざまに一塁送球。テハダは一塁ベースに向けて同じく必死のダイビング(見ればわかるが、まさに「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」)、しかし間一髪アウトッ!!!!。場内興奮の坩堝、やんやの大喝采。これが「ヘッスラなんて速度を低下させるだけの無意味なプレー」というコンセンサスがある国の光景だとは到底見えない。
上のリンクが機能しない場合、
YouTubeでご覧ください。
僕の心証としては、この件についてのマーティ・キーナートの主張はぜんぜん信用できない。
ヘッドスライディング:Thomas Brad "Trey" Hillman
ヒルマンの意見
トレイ・ヒルマン監督時代の日本ハムは、一塁へのヘッドスライディングを禁止していたそうだ。
ヘッドスライディングは禁止せよ:Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記
プロ野球チームの日本ハムでは、1塁へのヘッドスライディングは禁止されているらしい。選手がその規則を破り、1塁へヘッドスライディングをし、負傷する出来事があった。その時、ヒルマン監督は次のようにコメントしている。
手首には小さな骨も多く、けがをしやすい。一塁にヘッドスライディングをしても走り抜けても大した差はないんだ。それ以上にリスクが大きすぎる。ファイティングスピリットの表現としては違うと思う。(asahi.com 北海道版より)
これはどっちかと言うと「ヘッスラ遅い派」に親和的な発言、に、一見、見える。実際「Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記」でもそういう文脈で紹介されている、ように読める。だけどですよ、じつはぜんぜん違うのですよ。ヒルマンは
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1: 強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。 |
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2: だが、大した差はない。 |
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3: その割に、怪我のリスクは大差がある。 |
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4: また、ファイティングスピリットの表現としてヘッスラするのは馬鹿げている。 |
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5: だから私のチームでは禁止する。 |
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と言っているわけだ。僕は4には大いに同感。3と5には、どっちかと言えば賛成。
プロについては、大人なんだしプロなんだからオウン・リスクでやるのもアリだと個人的には思うが、アマチュアのみなさん、ヘッスラなんてやめた方がいいですよ。ヘッスラで怪我ったってせいぜい突き指だろ、と、僕も思ってたのですが、小指付け根の骨折だとか肩の脱臼だとか手の甲の骨折だとかいう実例を知るにつれ、次第にそういう気分になりました。プロ野球選手が骨折すれば全国ニュースになるけど、無名のアマチュアの骨折なんて新聞にも載らないので、実例がどれほどあるのかわからない。骨折なんて滅多にないのかも知れないし、結構あるのかも知れない。どっちにしてもやめた方がいいと思う。
スポーツにおける「危険だからやめろ」の話はなかなかむずかしい。例えば「オーバーヘッドキックで着地に失敗して腕を骨折するサッカー少年」なんて、世界中に毎年数人はいるんじゃなかろうか。「青春の蹉跌」なんて、アメフトの試合でタックル受けて首の骨を折ってショーケンが死ぬ映画ですよ知ってますか(ちょっと違うかも)。柔道で、日本の中高の部活でここ28年で起きた死亡事故は、内田 良によれば114件もあるそうだ。ほんとだとしたら、日本では毎年4人の少年が柔道で死んでることになる。
柔道についてはよくわからない(興味を持つべきだとは思う。ちゃんと精査も精読もしてないけど内田 良によれば、フランスの柔道人口は日本より多いにもかかわらず、フランスでの柔道による死亡事故はこの28年間でゼロらしい。一方日本では114。ほんとだとしたら、ちょっと考えるべきだ)けど、少なくともサッカーにおけるオーバーヘッドキックには危険もあるがメリットもある。一方ヘッスラは、ヒルマンの言う通り、タイムにはどうせ大した差はない。しかも判定には、つねに疑問がつきまとう。メリットあるんだかないんだか、はなはだ疑わしい。
ところで、このページで考えたいのは「怪我のリスクとかガッツとか味方を鼓舞する効果とかはさておいて、どっちがはやいのか」だ。それについてヒルマンはこう言っている。いずれも非常に珍しい見解である。
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1: 強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。 |
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2: だが、大した差はない。 |
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ヒルマンは「ヘッスラ遅い派」と真っ向から対立する主張をしている。多くの人はそうは考えず、「走り抜けた方がもちろん、明白に、絶対に早い」と主張する。僕も長い間そう信じてきた。しかし。走り抜けた方が明白に早いなら、どうしてTBS 筋肉番付「ショットガンタッチ」では、誰もが頭から飛び込むのか。
ヘッドスライディング:shot-gun-touch
「ヘッスラは遅い」説を疑う(ショットガンタッチとの比較)
思えば少なくとも20年間、まっすぐ駆け抜ける方が早い、と信じて疑ったことはなかった。ちょっと興味を持ったのは2007年暮れ、「五輪予選で一塁にヘッドスライディングした川崎宗則にイチローが激怒」という記事を見かけてからだ。すこし検索して「ヘッスラなんて遅いに決ってます」というのが世間の常識であることを確認し、安心した。ところが一方、「ショットガンタッチではみんな頭からいくではないか」という指摘に出会い、ギョッとした。たしかにそうだ。それに対して膨大な反論があることも知った。そもそも「ヘッスラは遅い」論とはどのようなものなのだろうか。
ベースへの滑り込みは、ベースを駆け抜けるよりも不利だと思うのですが(HATENA)
1 回答者:2007-08-09 09:49:48
駆け抜けた方がもちろん早いです。
2 回答者:2007-08-09 09:51:02
明らかにスライディングよりは走り抜けた方が早いでしょう。
4 回答者:2007-08-09 09:54:49
不利です。おっしゃる通りブレーキがかかります。ファーストへは走り抜けた方が速いです。
7 回答者:2007-08-09 14:21:51
当然ながらスライディングよりも走りぬけたほうが速いから、早く一塁に達するために、通常はスライディングを行わず、そのまま一塁を踏んで駆け抜ける。
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
ANo.9 / どんな人:経験者 / 自信:自信あり / 回答日時:07/07/04 12:04
地面に固定されたベースを踏むと言う行為においては、手で触りに行くよりも足で触りに行った方が早いことは明白です。
■ちょっとした疑問や質問はここに書いてね86■ / 物理(学問・理系)-2ちゃんねる過去ログ倉庫
773 ご冗談でしょう?名無しさん 投稿日:2008/01/05(土) 21:49:21
一旦トップスピードに乗ったのなら駆け抜けるのが一番いいのは物理的に自明。
「もちろん」「明らかに」「当然ながら」「明白です(自信あり)」「自明」。宗教かこれは。かなり無気味だ。
僕の意見は上記ヒルマンコメント2項目の通りだが、こういうみなさんを見て特に思うのは「2」ですね。「ヘッドスライディングをしても走り抜けても大した差はない」。そりゃそうでしょう。所詮「最後の数メートルをどうするか」の話だ。どっちが早いとしてもまさに「タッチの差」、どうせ大した差にはならないのではないか。だからどっちが早いとしても「もちろん」とか「明らかに」とか言われることには違和感がある。
ヘッドスライディングと、全速力でベースを駆け抜けるのと(Yahoo! 知恵袋)
回答日時:2007/6/1 15:07:45 回答番号: 37,729,012
走り抜ける方が早いです。争いのない事実です。ジャンプするために踏み切る時間。ジャンプするための無駄なエネルギー。地面から1m近い高さにある手をわざわざ地面近くのベースにまで持っていく無駄な時間。様々なことを考えて、明らかにヘッドスライディングは遅いです。
ジャンプするためのエネルギーが無駄かどうかを論じるのに、それが無駄だという前提を用いるのは変でしょう。そりゃジャンプするには時間もエネルギーも使うだろうが、走り抜けるのにだって時間もエネルギーも使う。どちらが早いか、という話だ。
この図で、ほらね、ヘッスラの方が早いっしょ? と言いたいわけではない。この図で、ふたつのことを主張する。ひとつ:現実にこれほど都合よくいくかどうかはともかく原理的には、地面を後ろに蹴って惰性で倒れるだけでヘッスラになる。つまり、ヘッスラにはジャンプが必須であり、ジャンプには駆け抜けプラスアルファのエネルギーが必須、ってのは自明でもなんでもないということ。より端的に言えば、ダイブには特別な予備動作は不要、ということ。もうひとつ:「地面から1m近い高さにある手をわざわざ地面近くのベースにまで持っていく無駄な時間」なーどーというのはそれこそ自説に都合のいい机上の空論であって、実際にはそんなタイムロスは存在しないということ。
それとも、倒れ込むのは時間がかかり過ぎるという指摘なんだろうか。それなら(目標まであと2歩の距離でダイブするとして、走っている時の重心が地面から1mの高さにあるとして、触塁のためにはそれが地上30cm の高さまで落ちる必要があるとすれば)、70cmの高さを自由落下するのに要する時間が、2歩を走る時間より短いか、あるいは同等程度であればそれで充分だろう。
全力疾走時に1歩を走るのに要する時間は、『DVD 日本人に適した最速の走り方(西東社/¥1,500)』によれば、小学生でもトップレベルの短距離走者でも同じく 0.25 秒前後だという。2歩あたり0.5 秒。一方、地球上の、地表近辺での重力加速度を9.8として、物体が初速ゼロ(垂直方向の初速の話です)から70センチの距離を自由落下するのに要する時間は、高校物理公式集(1)によれば約 0.38秒だ。2歩を走るより余裕で速い。
ちなみに1メートルの自由落下に要する時間は約 0.46秒だ。「ヘッスラで跳んでる間に何歩走れると思ってるんだよwww」、みたいな意見もよく見かけるが、「www」とか書く前に自分で考えろよ。おおざっぱに言って2歩弱だ。0.46秒で3歩走れるようなランナーなら3歩だが、そういうランナーならダイブした場合も(チョー単純計算で)3歩ぶんの距離を跳べる理屈になる(もっとも、どの時点を落下開始とみなすべきか、決めるのはむずかしそうだが)。
◆◆
ヘッスラの方が速いなら陸上の100m でみんなヘッスラするだろ、という説も、非常に人気がある。
ヘッドスライディングについて(MSN 相談箱)
直感とか感情論とか根性論とか物理方程式を持ち出すまでもありません。実際にハッキリとしています。1/100を争うような陸上競技の短距離走でのゴールシーンを思い出して下さい。誰一人としてスライディングなんてしませんよね。走り抜けた方が速い事はタイムが如実に語っています。
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
>駆け抜けた方が早ければ、何でそのまま走り抜けて足でタッチしに行かないんでしょう?(nobio 註:ショットガンタッチのこと)
ただ、これは、競技が違いますので何とも言えません。貴方の例えのようないいかたで逆のことを言うと、「ダイブした方が早いなら、陸上の100m走は最後にダイブして入った方が早い」と言うことになりますが。100走が最後にダイブしないのですから駆け抜ける方が早いのではないかと思いますけどね。

【野球】ヘッドスライディングは遅い?
11:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 10:57:51 S8ICS4UJ0
「100m 走で最後にヘッスラしてるか?」って聞いたらなんて答えるんだろうな。
▼more & more...

22:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 11:00:23 6sAhcU+u0
>>11
俺もヘッスラより走り抜ける方が速いとは思うけど、
100M走は胸がゴールを越えないと駄目だからその質問はおかしい。
41:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 11:06:07 Bi+cPa3h0
もしヘッドスライディングが早いのであれば、陸上の100m競争で誰かがやっているでしょ。
もしあったとして、現在は禁止になっているとかさ。そういう事実ってあるの?
44 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:06:25 ID:LLuykjqq0
オリンピック短距離走でなぜ誰も滑らないのか考えろ
答えはそこにあるだろう
49 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:07:11 ID:vSk4f0ZM0
100mは手じゃなくて胸の到達時間だから比較に出すのはどうかと思うが
141:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 11:27:21 AV+BSf7K0
陸上競技でヘッドスライディングしてゴールするやついないだろ?
駆け抜けたほうが断然早いんだよ
158 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:31:46 ID:Ec8Ofei90
ヘッドスライディングのほうが速かったら100分の1秒を争う陸上100メートル走で
ヘッドスライディングでゴールする選手がいるはず。
駆け抜けたほうが速いんだよ
167 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:34:20 ID:2GI8Yojp0
>>158
100m走は胸の到達タイムを競う競技です
173:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 11:34:54 I5eFFGq7P
もしスライディングの方が速ければ、陸上競技のゴール間際でみんなスライディングしてるw
309:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:04:05 HXzl2gw50
つか、ヘッスラのほうが速いなら、陸上の短距離競技でゴールする時に使えばいいんじゃね?
315:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:06:03 37ggmvQb0
>>309
陸上短距離は胸がゴールの基準だからヘッスラは意味がないと散々既出
332:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:10:47 HXzl2gw50
>>315
胸が基準だろうが、関係なくね?
ダイビングした際に胸がゴールライン超えればいいんだろ
タイミングの問題だけじゃん
339:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:13:20 AYVoNXq00
>>11で完璧な答がでてたw
ヘッスラのが速いとかプロが恥ずかし過ぎるわ
583:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 14:29:33 yAYwZZ7v0
ヘッドスライディングの方が早いなら
陸上100mの選手はみんな最後ヘッドスライディングするだろ
749:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 18:01:26 d8re03Jq0
ヘッドが早いんなら陸上の短距離走でもゴールの時はダイビングするだろ
そうじゃないってことはそういうことだ
Posted by at 2010年07月28日 00:30
陸上を例に出す奴の文章読まない率ハンパねえな
ヘッスラの主たるメリットは腕のリーチを生かせる点にある。陸上は、指先がゴールラインに触れてもゴールと判定されないんだから、ヘッスラしても意味はない(とは言え、多少はある。胸もトルソーだが肩もトルソーだ。走って胸でゴールラインに達するよりも、ダイブして肩がゴールラインに達する方が、人体重心からのリーチは数十センチ有利なはずだ。為末大も「血まみれ&骨折覚悟なら最後は倒れ込んでゴールした方がはやい」と発言している)。
いや、待ってください、みなさん。
みなさん、さっそく為末説に対する反論を考えたいところかも知れないが、この話のポイントはそこじゃない。「○○の方が早いなら陸上100mでもそうするはず」という理屈が本当に正しいのかどうか、だ。例えば今江やイチローや平野が下図のような動作(いわば「片足飛び込み」)をするのは、その方が早いと思っているからだろう。しかし、陸上100mでこんなことをする選手はひとりもいない。では、イチローがこんなことをするのは、イチローがアホだからなのか。あるいは、陸上の選手がこれをしないのは、陸上の選手がアホだからなのか。どちらでもない。「○○の方が早いなら陸上100mでもそうするはず」という言い分が間違っているのだ。
左:今江敏晃、中:イチロー、右:平野恵一
野球と陸上はルールが違うので、野球で有効な動作が、陸上にとって有効でないことはふつうにあり得る。「陸上選手がやらないのが、野球でも無意味だということの証明」なんてこと言うのはアホな人である。(ちなみにスピードスケートは足の爪先(ブレードの先端)でゴール判定する決まりなので、これと似た動作がよく見られる。ブレードは空中でも認められるので、その点が野球とちょっと違う)
高校野球の宗教
上からのボールの話(nobio 註:ショットガンタッチのこと)は確かにそうでしょう。走っていれば腕は地上1mにあり、滑り込めば腕は床の高さになるわけで、この話は条件が違いますね。
ショットガンタッチはスケート以上に野球と似ている。走っていれば腕は地上1mにあり、滑り込めば腕は床の高さになる。その通り、それは野球でもショットガンタッチでも同じだ。「条件が違いますね」とあるが、何が違うのかわからない。
◆◆
ヘッドスライディングについて(MSN 相談箱)
ヘッドスライディングでは跳躍するための「ため」が必要になります。これがロスとして助走の段階で速度の低下を起こしてしまうわけですが、走っている状態での「ため」の動作は微妙であり、本人にも速度の低下を認識するだけの動作ではありません。試しにその場でジャンプしてみてください、足首だけでのジャンプではほとんど飛び上がることはできず、「ため」がどれほど大事なことなのか認識できるはずです。「ため」に使う力を速度の向上に振り分けた方が実用的ではないかと思います。
また、ヘッドスライディングの動作を開始する地点も理想の場所があるはずです。一定ではないバッティング動作から走行状態に入り、歩数を合わせることにもロスが発生すると考えられます。これらを総合的に考えた場合、走り抜けた方が「安定的」に早く走り抜けられるのではないかと思います。
「足首だけでのジャンプではほとんど飛び上がることはできず、『ため』がどれほど大事なことなのか認識できるはずです」という文脈からすると、「ため」とはヒザと股関節の曲げ伸ばしを指すのだろう。その「ため」が速度の低下を招くのだと。ムチャクチャ言うなあ。ヒザと股関節を曲げずにどうやって走るのか。ヒザを曲げずに走れるのなんて、欽チャン走りだけだ。股関節を曲げずに走ることは、通常、人類にはできない。
ヒザと股関節を曲げるのは構わないが、ヘッスラに行く最後のひと蹴りでは跳躍のための特別な「深い曲がり」が必要で、そのぶんがロスになるという意味だろうか。下図1-05 は「ショットガンタッチ」でのロナウジーニョのダイブのスロー再生だが、これを見る限り確かに最後の踏み切りにタメ(膝と股関節の深い曲がり)を感じる。しかし、そのせいで速度が滞っているとは感じられないのだが。踏み切りが「よっこらしょ」って感じに遅くなるとしたら、それはダイブがヘタな人なんじゃなかろうか。
図1-05 | Ronaldinho Gaucho in "Shot-Gun Touch" | TBS「筋肉番付 」2008
30分の1秒/コマ
タメによる踏み切りの速度の低下は、微妙な差だから僕には視認できないのかも知れない。しかし一方リーチの差はけっこう大きく、一目でわかる。「図1-01」で判断する限り、「駆け抜け」と「ダイブ」の差は 60センチ前後ありそうだ。これが、視認できないほどの微妙なロスによってひっくり返るというのは納得しがたい。1歩では微妙な差でも何歩も積み重なればけっこうな差になるだろうが、なにしろこれはダイブに行く最後のひと蹴りの話だから、積み重なりようがない。
コレコレの理由で遅くなる、と主張する人は多いが、その遅れのぶんがリーチ60センチのアドバンテージを明らかに上回る、ということを言わない限り、「明らかに遅いです」の論証にはならない。僕はべつに「ヘッスラの方が絶対早い」と主張したいわけではなく、ヘッスラのさらなる普及と発展を願っているわけでもなく、どっちが早いのか正直どっちでもいい。ただ、ほんとうはどうなのか知りたいだけだ。
◆◆
「これがロスとして助走の段階で速度の低下を起こしてしまうわけですが、走っている状態での『ため』の動作は微妙であり、本人にも速度の低下を認識するだけの動作ではありません」とまで言えるのは、よほど精密な実験を重ねて、データ取りと被験者への聞き取り調査を併せて行ったからこそ、としか思えないのだが、そのデータを教えてくれないところを見ると、もしかして想像を述べているだけなのだろうか。もしそうだとしたら、もう少しは想像らしく発言していただきたいと思う。「本人にも速度の低下を認識できないほど微妙なのではないかと私は想像する」だとか。
それと、この映像のロナウジーニョ(もちろんサッカーはうまい)は決してダイブ(の助走と踏み切り)がうまいとは思えず、ロナウジーニョのフォームがそうだからと言って、一般にジャンプするには踏み切りで膝と股関節を特別に深く曲げる必要がある、ということにはならない。走り幅跳びの映像なんかを見ると、「跳躍に必須の特別なタメ」なるものが、あるとしても如何に極小なのかと驚かされる。走り幅跳びの映像は、YouTubeで「Long-Jump」「Mike Powell」とかで検索すればすぐに見つかる。
1991/08/30 IAAF World Championships in Tokyo
【野球】ヘッドスライディングは遅い?
639:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 15:00:56 XFSmPk8O0
走り幅跳びも飛び込むように跳んで手から砂について一回転すれば距離が伸びるはず、
でもだれもやらないのはなぜだ?
ヘッスラと関係ないけど、
走り幅跳びの理想のフォームについて。
▼more...
「飛び込むように跳んで手から砂について一回転」というと、こんなヤツだな(0:22、3人目の生還。リプレイなし)。実況が何度もカナーキーと叫んでるけど、Brian Kownacki はバッターで、奇跡の前転を決めたのは1塁走者・・・じゃないかなー。たぶん。
もうひとつ。こちらはたぶんアマチュア。素晴らしい映像だ。モンティ・パイソンみたい。こういうの見ると、怪我するからヘッスラやめろ、とかいうのが狭量なようにも無粋なようにも、思えて、来なくもない。
しかし、以前たまたま見た「トリビアの泉」によると、これを超えるフォームがあるらしい。1974年にアメリカのスポーツ力学者トム・エッカーが考案し、世界に衝撃を与え、数ヶ月で世界に広がり、しかし危険だという理由で、その年の8月にあっさり禁止された禁断の跳躍法。上のもこれも英語では同じく「Front Flip Jump」だが、日本語で言うと上のはいわば前転跳び、こっちは前宙跳びか。Wikipedia「走幅跳」の項にも「かつて前方宙返りを加えて跳躍するスタイルが存在したが、危険性が高いと判断され現在は禁止されている(これについてはトリビアの泉でも紹介された)」との記述がある。具体的にはこんな感じ。
◆◆
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
回答日時:07/07/03 17:46
一塁は特にスタートが万全の体制ではなくて加速がつけにくいので、飛び込むよりは一歩でも加速したほうが早いからじゃないでしょうか。
バレーボールのやつ(nobio 註:ショットガンタッチのこと)は結構スピードが乗りきるので飛び込んでも速度が変わらないからじゃないですかね。勘です。
回答日時:07/07/03 18:07
一塁に向かう場合には27mしかないので、加速段階に入った瞬間にヘッドスライディングの為に減速してしまいます。結果走り抜けた方が速いという結論が出ます。
また、筋肉番付の競技では上からボールが落ちてきますよね?
そうすると、下の方が落ちてくるのには時間がかかりますよね?
だから、飛び込んで体勢を低くして、ボールに触る時間をほんの少しでも遅らせていると思います。
野球の塁間距離は27m あり、ショットガンタッチはその半分以下だ。どっちが加速中かと言えばショットガンタッチではなかろうか。なにしろ「図1-05」のロナウジーニョなんて、ボタンを押してからわずか6歩(ダイブを入れて7歩)しか走っておらず、とても「結構スピードが乗りきる」とは思えない。
「下の方」を目指すなら飛び込んで体勢を低くすべし、というのもわからない。野球のベースだって地面スレスレの高さにある。地面スレスレを目指すには飛び込む方が有利だというなら、野球でも飛び込んだ方がいいのではないか。足なら飛び込まなくても最初から「下の方」にある。「下の方」で触るのがいい、というだけの理由なら、ショットガンタッチでも足で行けばいいだろう。「27mしかないので走り抜けた方が速い」というのは、さらにわからない。そんなら12 - 3mしかないショットガンタッチでは、それ以上に走り抜けた方が速いことになる。
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ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
ひとまずショットガンタッチについてのみですが…
あれは下がマットか何かだったと思います、なので怪我の心配が小さく思いっきり飛び込めるんだと思います
ボールをほんのちょっとでも触ればいいので、頭から飛び込んでリーチを使ったほうがいいのだと思います
野球だと下が土なりなんなりで怪我の恐れがあり、なかなか思い切りよくはいけないかもしれません(プロはともかく)
「ほんのちょっとでも触ればいい」のは野球も同じだ。床面の違いについては、つまり「怪我の心配さえなければ、野球でもヘッドダイビングしたほうが早いかも知れない」という意味だろうか。だとしたら僕と同じ意見だ。
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ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
回答日時:07/07/04 12:04
ちなみに真上から落ちてくる球を足で蹴る行為はサッカー選手でも難しい事です。それにあの競技は落ちてくる球の位置も微妙にズレが出ます。ただそこを駆け抜ければ自動的に足に当たるとも言い切れません。うっかり早く行き過ぎたら球が落ちきる前に自分が通過してしまうことにもなりかねません。歩幅があわなくてあわせに行ったらかえって遅くなります。球が落ちてくるタイミングに合わせて体をその位置で通過させると、タイミングの誤差は体の厚み分しかありません。人間の体は横から見たら凄く薄いですよ。左足が前の時に右足の位置に球が落ちてきたら修正が出来ません。落ちてくる球に対して落下地点を駆け抜ける行為が如何にナンセンスか、このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かります。
回答日時:07/07/04 14:09
ショットガンタッチの場合、ボールは自然落下しますから空気抵抗などの関係で多少ふらふらしながら落ちてきますし、走っているうちに微妙に自分の体がズレるということもあります。すると、ボールをタッチする体を多少修正する必要が出てきますね。それなら、足よりも手を使うほうが便利です。また目からも近いので微妙な修正がしやすいです。
落ちてくる球の位置も微妙にズレが出るだとか、空気抵抗で多少ふらふらしながら落ちてくるとかいう話はたぶん、自分の思い込みを正当化するためならば人は如何にありもしない記憶を脳内で捏造するか(しかも善意で)、ということの一例ではないだろうか。いや二例か。何故かあまり指摘されないが、下の写真の通り、ショットガンタッチでは床面に的が描いてある。僕が見た範囲ではすべての試技で、球は的の中心の黒い目玉に正確に落ちていた。(この写真でボールの残像が垂直でなく放物線状に見えるのは、軌跡がブレてるのではなく、カメラがロナウジーニョを追って左から右にクビを振ってるから)
図1-06 | Ronaldinho Gaucho in "Shot-Gun Touch" | TBS「筋肉番付 」2008
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「サッカー選手でも難しい」というのはたぶんボレーシュートのことだと思う。落ちてくる球にボレーを合わせて正確にコントロールするのは確かにサッカー選手でも難しいプレーだが、ショットガンタッチとは何の関係もないだろう。
「タイミングの誤差は体の厚み分しか」ない、「人間の体は横から見たら凄く薄い」「このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かります」ということだが、この人自身、試した上で発言しているとは思えない。
まっすぐ駆け抜ける人体を「一定速度で水平移動する高さ180cmの直立したヌリカベ」だと考えると、なるほど「タイミングの誤差の許容範囲は壁の厚みぶんしかない」ように、一見思われるが、誤解だ。べつに脳天でボールを受ける必要はなく、顔面(の高さ)でも胸(の高さ)でも腹(の高さ)でも膝(の高さ)でもいい。つまり許容範囲はヨコにないぶん、タテにある。10mの高さから落下するバレーボールの下面が「上空180cm地点」まで落ちるには約1.297秒、「床面スレスレ」までは約1.428秒、その間 0.13秒。その間であればいつ落下点を通過しても、ヌリカベのどこかの高さに当たる。優秀なランナーなら1メートル以上走る時間だ。誤差の許容範囲はヨコに換算すれば1メートル以上ある、ということになる。(下図に表示される秒数は、ボタンを押してからの時間ではなく、ボールが落下を始めてからの時間)

また、脳天でボールを受ける必要がない、だけでなく、実際の人体はヌリカベではないし、「一定速度で水平移動する」必要もない。ゆうゆうクリアできる距離の場合、タイミングを合わせないと行き過ぎてしまうわけだが、ゆうゆうクリアできる距離なら、減速しつつ、余裕を持って手でキャッチするなりパンチするなり、あるいは落下地点で立ち止まって落ちてくるボールを待つなり、いずれにしてもタイミングを合わせるのは簡単だろう。これは実験せずに想像で発言してるのだが、このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かるのではないだろうか。下のアニメーションを見る限り、まっすぐ走って頭頂部もしくは顔面に当たるとしたら、タイミング的にはけっこう余裕綽々で、プレイヤーの実感として「ゆうゆうクリアできる距離」じゃないかと思う。

では、距離が限界ギリギリに近付いてくるとタイミング合わせがシビアになるのか。たぶん、ならない。限界ギリギリに近付いてきたら、単に全力で走ればいい。
「限界ギリギリの距離」イコール「全力で走ればギリギリ触れる/あるいはギリギリ触れない」距離だ。限界ギリギリの距離での結果はどうしたって「ギリギリ触れる」か「ギリギリ触れない」のどちらかになる。つまり、限界ギリギリの距離に近付くにつれ、心配しなくてもタイミングは自然にピンポイントに収斂していく。しかも落ちてくる位置は床に描いてあるのだから、じつは、そもそもボールを見る必要すらなく、ただ床面の的を目指して無心で全力で走ればいい。
いちおう根拠もある。ショットガンタッチで手を前方に伸ばしてダイブしたプレーヤーの、頭や背中にボールが落ちるのを、見たことがない。あいまいな印象ではあるが、印象としては、前腕部すらないですね。僕が見た成功例はすべて、手のひら、あるいは指先でボールに触れたものだ。要するに「ほぼピンポイントでタイミングが合う」か、あるいは「ギリギリ間に合わずに失敗」かの、どっちかしか見たことない。みなさん「落ちてくる球に対して駆け抜けでタイミングを合わせるのはむずかしい」と言うけれど、「落ちてくる球に対して3、4メートルも離れた地点からのダイブを合わせる」方がよっぽどむずかしくないか。駆け抜けならギリギリの段階で最後の微調整も可能だが、ダイブは跳んだら最後、なりゆき任せですよ。ところが、それでも百発百中で、ほぼピンポイントでタイミングは合うのである。少なくとも、各プレーヤーの限界あたりでは。これを「さすが一流ぞろいのアスリート」と解釈するよりは、ギリギリを競う競技の必然、と考えた方がリーズナブルだと思う。
◆◆
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
回答日時:07/07/04 09:39
筋肉番付の競技は空中のボールにタッチに行くもので言わば空中でのタッチ。一方でスライディングはベースタッチに行くので地面へのタッチ。空中への対応でとなればダイビングした方が早いですが、地面への対応となると走りぬけたほうが早いと思います。
回答日時:07/07/04 14:09
ショットガンタッチについてですが、あれはボールが上から落ちてきて、そのタイミングに合わせてボールに触れなければなりません。そして走るときどんな体勢になっているか考えてみてください。当然、前傾姿勢ですね。それを足からタッチしにいくとなると、前傾姿勢を後傾姿勢に変えなければなりません。当然、タイムロスになるわけです。それなら、ヘッドスライディングをしたほうが前傾姿勢をそのまま倒せばいいのですからこっちのほうが早いですね。
それに比べると、野球の一塁の場合はベースが地面に固定されているから自分は目標に向かって全力で走ればいいわけです。
ショットガンタッチでは空中でボールに触る必要がある、というのはその通りだが、そのために「微妙な修正」や「空中への対応」や指先の繊細なコントロールが必要だとかいうのは思い込みに過ぎない。何故なら、繰り返しになるが、静止した床の的に触ればいいからだ。
ショットガンタッチは
「『的』に落ちるより先に『ボール』に触る」ことを目指す競技だが、それは
「『ボール』が落ちるより先に『的』に触る」こととイコールだ。
手であれ足であれ、ボールより早く的(の中心の黒い目玉)に触ることができれば、結果としてボールは床に当たらず、プレーヤー(の手か足)に当たる。床に当たる前にプレーヤーに当たれば「空中で」当たったことになる。
皿に残ったクッキーの最後の1枚を狙って、ノビ太とスネ夫が同時に手を伸ばした。このとき、スネ夫の手を「落下するバレーボール」だと考えよう。クッキーが、床面の的だ。ノビ太がクッキーを確保するには、クッキーに届く前にスネ夫の手をブロックする必要がある。または、スネ夫の手が届く前にクッキーをブロックする必要がある。どっちでもいい。どっちでも、スネ夫の指先は「空中で」ノビ太の手の甲に当たるだろう。そういうことです。だから、地面への対応には足で行く方が有利だと思うならば、ショットガンタッチでも足で行くべきだ。「左足が前の時に右足の位置に球が落ちてきたら修正が出来」ない、なんてのも、およそナンセンスだろう。的(の中心の目玉)はバレーボールのサイズに対して充分に小さいので、どっちの足でもいいから目玉を踏めばいい。
「微妙な修正」が必要ないだけでなく、これも繰り返しになるが、タイミングを合わせる必要もない。風の噂ではボールは床から10メートルの高さにセットされているらしい。物体が初速ゼロから10メートルの距離を自由落下するのに要する時間は、約 1.4286秒だ。実際にはボタンを押してから落下開始までには機械的なタイムラグがあるだろうから、ここでは1.5秒ということにしておこう。じつはショットガンタッチは
「ボタンを押してから1.5秒で、いかに遠くの床に触れるか」
を競う競技なのだ。ボールは 1.5 秒という時間をスリリングに可視化するためのギミックに過ぎず、本質的に必要なわけではない。
ボールの存在しないショットガンタッチというものを、想像してみよう。スタート時に押す例のボタン。あれが、ストップウォッチの計測開始ボタンになっている。いっぽう床面の的はタッチセンサー式の、計測停止ボタンになっている。ストップウォッチは 1.5 秒でブザーが鳴るようにセットされている。競技者はボタンを押すや否や一目散に走り出し、計測を止める。つまり、何らかの方法で的に触る。ブザーが鳴らなければセーフ、ブザーが鳴ればアウト。ボール抜きでもじゅうぶん成立することがわかるでしょう。
ショットガンタッチで「歩幅があわなくてあわせに行ったらかえって遅くなります」というのもおかしい。それは野球の方だ。さっきから「触る」と一応書いているが、野球なら必ずベースに触る必要があるのに対して、ショットガンタッチではそれに神経を使う必要は = つまり歩幅を合わせる必要は = ない。踏めなくても的の上を駆け抜ければ(余裕の距離のうちはともかく、ギリギリの距離なら)、ボールはピンポイントのタイミングでつま先に当たるか、そうでなければギリギリアウトになる。タイミングは心配しなくても結果的に合う。
◆◆
「走るときは前傾姿勢なので、足からタッチしにいくと当然タイムロスになる」「ヘッドスライディングをしたほうが前傾姿勢をそのまま倒せばいいのですからこっちのほうが早い」のであれば、野球でもヘッドスライディングの方が早いのではないだろうか。例えばイチローは一塁へは必ず「足からタッチしにいく」けれど、あれは「当然タイムロスになる」ような手段をわざと選んでいるのだろうか。
そもそも、走るときは「当然、前傾姿勢ですね。それを足からタッチしにいくとなると、前傾姿勢を後傾姿勢に変えなければなりません」のような説明がいかにリアリティのない空理空論か、上のアニメーションを見ても下の写真を見ても明らかだと思うが、どうか。
図1-07 | Ichiro Suzuki 2009.06.03 / Yuichi Honda 2009.05.31
ちなみに右はピンクリボンキャンペーン中。一塁手はトニ・ブランコ
ヘッドスライディングについて 野球で一塁ベースに向かうとき、野球経験者などは...(Yahoo! 知恵袋)
回答日時: 2007/8/23 14:53:49/回答番号: 40,044,937
走っている体勢からそのまま倒れこむ事は無理です。
滑り込む体勢にするにはかがみこまなければなりません。それによって減速するのです。
かがまないようなすばらしい前傾姿勢で走れれば 別ですけど。
「走っている体勢からそのまま倒れこむ」のがなぜ無理なのかわからない。「すばらしい前傾姿勢」とは何か、すばらしい前傾姿勢とかがんだ姿勢の違いは何か、それもわからない。
走るという動作は「脚を後ろに蹴っては急いで前へ戻して腿を振り上げ、膝下を前に伸ばして着地」の繰り返しだ。「後ろへ蹴ったまま、前へ戻すのをやめる」だけで、重力で「図1-04」の通り体は放物線を描いて落ちて行く。つまり、ダイブする気がなくても否応なくダイブになる。事前にかがむとか重心を下げるとかの予備動作が必要とは思えない。
「走って来て重心を下げて、そこから斜め上方向にジャンプ」じゃロスが多い。「走って来た水平方向の勢いをそのまま水平方向に生かす」方が速いだろう。そんなことは無理です、と主張されているように読めるが、根拠はなにも書いてない。無理なのか? 無理どころか、いちばん無理もロスもないダイブの心得じゃないかと思うんだが。「胸、あるいは腰の高さにある手をわざわざ下に持って行くことの不合理」というような指摘もよく見かけるが、意味がわからない。駆け抜けるのであれば一切役に立たない「手の長さ」を、ダイブすれば生かせる。ルール次第では象が鼻の長さを生かせるように。キリンさんが首の長さを生かせるように。そのことの何が不合理なのか。体が落ちていくのに伴い、肩も落ちていく。必要なのは前に手を伸ばすことだけだ。荒木や英智や平野恵一にインタビューしたら、「素早いヘッドスライディングのコツは、かがまないこと」とか言うんじゃないだろうか。どのていど減速するかしないかは、個人差も含め、検証しないとわからない。
図1-08 | Keiichi Hirano 2009.05.14
ロナウジーニョのダイブよりずっと速そうだ。重心を下げずに踏み切ってそうな感じ。
◆◆
ヘッドスライディングについて 野球で一塁ベースに向かうとき、野球経験者などは...(Yahoo! 知恵袋)
回答日時:2007/8/24 10:49:55
ヘッドスライディング直前の状態では、体勢は極端な前傾姿勢になってます。自分の足を前後に振った距離と上下に上げ下ろしした距離を比べればすぐに分かりますが、前者の方が遙かに長いです。極端な前傾姿勢では足を動かす距離は、後者の足の上げ下ろしの距離にしかなりませんので、上記の理由により走る速度は極端に低下します。これがまずヘッドスライディングでは急に減速する理由の第一です。
まるで「極端な前傾姿勢になってから地面を蹴る」かのような解説だが、実際は地面を蹴りながら前傾し、前傾しながら地面を蹴るわけで、極端な前傾姿勢になるのは、ほぼ地面を蹴り終わった時点だ。だいたい「これがまずヘッドスライディングでは急に減速する理由の第一です」とか、どうしてみなさんこうも「ヘッスラは遅い」前提でものを言うのだろう。仮に減速するとしても「急に減速」はいかにも怪しい。だって、惰性で速度を保つのがいちばん簡単なわけで、急に減速するのはそれより難しいんですよ。
また、「脚を前後に振る距離」は「膝の曲げ伸ばしの距離」よりも遥かに長い、だから前傾して地面を蹴ると速度が低下する、という主張のようだが、ほんとうにそうだろうか。前傾しながら地面を後ろに蹴ることによって、最後のひと蹴りは通常の1歩よりも強力に、ランナーの重心を前に運ぶのではないだろうか。
そう思う理由:一般的に前蹴りよりもドロップキックの方がパワーが出るし、立ち幅跳びよりも真上にジャンプする方が力強い。つまり頭部及び胴体に対して直角方向の蹴りよりも、頭部及び胴体に直列する方向の(ロケット状の)蹴りの方が、股関節+膝+足首のバネを有効に使え、強力である。立った体勢で地面を後ろに蹴るよりも、(靴底のグリップ力さえ充分なら)前傾姿勢で地面を後ろに蹴る方がビョーンと強く蹴ることができる。水平に近く前傾するのはほぼ地面を蹴り終わった時点だろうが、それでも最後の最後の脚のひと伸びに差が出るのではないか。
▼more... そう思う理由は他にもある。
理由その2:理由1と同じことなのかも知れないが、通常の1歩は重心を前に運ぶと同時に(転ばないように)上に保つ。前傾しながらダイブに行く最後の1歩には「転ばないようにする」成分が不要なので、そのぶん前に集中できる。
理由その3:靴底のグリップ力が充分であれば、パタンと前に転ぶことによる(重力による)加速が加算される、ような気がする(間違ってたらごめん)。
理由その4:前方に転びながら地面を蹴るため、通常の一歩よりも長時間蹴ることができる。
平均時速50キロが限界? 人類が走る最高速度−足の接地時間が制約・米大学
2010年1月26日5時41分配信 時事通信
人類が走って出せる速度の限界は、平均時速にして約50キロ(秒速14メートル)、瞬間的には約69キロ(同19.3メートル)との試算を、米サザンメソジスト大などの研究チームが26日までにまとめ、米生理学会の専門誌電子版に発表した。
速く走れば走るほど、足が地面に接している時間が短くなるが、地面をける力を強くする限界より、この接地時間を短くできる限界の方が影響が大きいという。
陸上100メートルの世界記録は、ジャマイカのウサイン・ボルト選手が昨年8月の世界選手権で樹立した9秒58で、平均時速は約37.6キロ(秒速約10.4メートル)。トップスピードは時速40キロ台半ばに近い。
研究チームは、7人の運動選手にランニングマシン上で、できるだけ速く走ってもらった。また、ベルトをける力の限界を調べるため、連続して片足で跳ぶ実験も行い、ける力や足がベルトに接している時間などを測定した。
その結果、走ったときに一歩でける力がベルトに伝わっている時間は0.11秒前後と判明。一歩でける力は、片足跳びの場合に出せる力が最高と仮定すると、走る速度の限界は平均時速50キロになるという。
この記事からはいろんなことがわかるが、とりあえずこの研究チームの考えでは、「地面を蹴る力」と「接地時間」を掛合わせたものが「速度」らしい。であるならば、通常の一歩よりも長時間蹴ることができれば、通常の一歩よりも速度が出るだろう。
下図Aは駆け抜けの、Bはダイブにいく直前のフォーム(の例)。この時点で両者のスピードは同じだとして、少しでも強く地面を蹴り、少しでも速度の乗ったロケットダッシュをキメたいなら、どっちの姿勢が有利だろう。3歩以上先を考えるのであればAだろうが、「次の瞬間」だけの勝負ならBじゃなかろうか。相撲取りAと相撲取りBが向き合って激突すれば、Bが一気に押し込みそうな気がする。
◆◆
ヘッドスライディングと、全速力でベースを駆け抜けるのと(Yahoo! 知恵袋)
2007/6/1 15:44:51 回答番号: 37,730,000
ベースに達する寸前に、全速で倒れ込む。
タイミングが良ければ、走り抜けるより一瞬早くなる。ただし、良くて打撲、悪くて骨折で、もう走れなくなる。
最後の一歩を全速で倒れ込むのがベスト、という説はたまに見かけるが、誤解だと思う。あと一歩走れば届く距離であえて手でタッチにいくなんて、(1歩の歩幅がだいたい身長に等しいとすれば)腕の長さのメリットが生かせないし、他にも何もメリットがない。「トムとジェリー」じゃあるまいし、全力疾走から全力で転ぶと物凄いスピードで転べる、という考え自体が眉唾である。天井か手すりを補助に使えない限り、しゃがんだり倒れたりという下向きの動作(重心を下げる動作)の速度には限界がある。全力疾走の勢いは水平方向にあり、それを垂直方向に直接生かすことはできない。げんに陸上のハイジャンプの選手の助走なんて、全力疾走とはほど遠い。いくら勢いつけても垂直方向には直接生かせないからだ。他方、ロングジャンプの選手の助走はいかにも全力疾走っぽいが、あれは水平方向の勢いを水平方向に生かすためだ。たぶん、一歩を走るより速く転ぶことはできない。
- 「普通に歩いてて普通に転ぶ」のも、
- 「全力疾走から全速力で1歩の距離を転ぶ」のも、
- 「全力疾走から全速力で2歩の距離をダイブする」のも、
どれも、落下(下向きの重心移動)に要する時間は基本的に変わらないんじゃなかろうか。まあ完全に同じではないとしても、大きく違うと考える根拠も思いつかない。だとすると「全速力で1歩の距離を転ぶ」のは「2歩の距離をダイブする」のに比べて、かかる時間は同じなのに稼げる距離は丸々1歩ぶん損、ということになる。
それに(というか、同じことかも知れないが)、あと1歩の距離で倒れ始めて指先で触塁するには、超人的というか漫画的というか、とにかくあり得ないような技術とエネルギーを費やして、足裏が突然地面にビタッと貼り付いたかのようなブレーキをかけねばならん、ではないか。「全力疾走の勢いを生かして転ぶ」どころか、「せっかくの全力疾走の勢いを無理矢理ビタッと止めて転ぶ」わけで、はなはだしく無駄、かつ危険だ。倒れるなら2歩以上の距離を飛び込むべき、と、思うんだが。
逆に言ってみる。最後の1歩を全速で倒れ込むのが早いとしたら、最後の2歩をダイブするのは、さらに丸々1歩ぶん早いはずだ。
◆◆
ヘッドスライディングは無意味?(教えて! goo)
回答日時:04/08/31 13:18
1塁へのスライディングは走りこむ方が早いと思います。スライディングする地面の摩擦係数が限りなく0に近く無い限り減速するからです、身長分が有利に感じるかも知れませんが日本人の身長170cm前後腕の長さ含めても250cm程度として倒れる速度よりも3〜4歩走る方が確実に早いからです。
回答日時:04/08/31 00:40
当然ヘッドスライディングの方が遅くなります。
一見ヘッドスライディングの方が、飛ぶのだから早く思われるかの知れませんが、実際には地面に着地した時点から急激に速度が落ちるからです。
ブレーキをかけているのと同じだから遅い、というのはよく聞く説だが、程度問題でしょう。ズザーッと長い距離を滑れば遅いのは当たり前だ(高校野球の最後の打者なんか、ベースのはるか手前で止まってしまう例も多い)し、「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」ならブレーキがかかるのは触塁後なので無関係だ。その中間にさまざまな程度のブレーキがあり得る。「すべてブレーキがかかるので、すべて遅い」で片付く話ではない。
「倒れる速度よりも3〜4歩走る方が確実に早い」というのは、到底事実とは思えない。すでに見た通り、トップレベルの短距離走者が全力疾走で2歩走るよりも、物体が70cmの距離を自由落下する方が余裕で早い。なんだよ「確実に」って。根拠もなくてきとーなことを断言しないでいただきたい。
「日本人の身長170cm前後腕の長さ含めても250cm程度として」とあるが、これは単純に身長と腕の長さを足してるのだと思われる。腕は頭のてっぺんに生えているわけではない。身長180センチの選手が手をまっすぐ上に伸ばしても、総長220センチ程度だろう。これを「倒れることによって稼げる距離」と呼ぶとすれば、「倒れることによって稼げる距離よりも、3-4歩走る方が確実に距離が長い」とは言えるが、倒れる間に3-4歩も走れない。
もちろん、たとえ2歩でも「倒れることによって稼げる距離よりも、2歩走る方が確実に距離が長い」とは言える。しかしわざわざ立ち止まってから倒れるわけじゃないんだから、そんな比較は意味がない。
◆◆
一塁へのヘッドスライディングはやっぱり遅くなると思う
ショットガンタッチは最長でも13メートル(?)しかない。13mじゃトップスピードになる前にボールに接触する。つまり体は加速するため前傾姿勢のまま。肩の位置は低く重心よりかなり前方に出てると思う。その状態なら頭から突っ込んだ方が早い。たぶん。(中略)本塁から一塁までは27メートルとちょっと。加速の早い野球選手ならすでに上体を起こして走っている距離。だから肩の位置は高いし重心の真上あたりにきているはず。その状態からのヘッドスライディングはやはり若干タイムが遅くなるはず。
肩の位置が高いとダイブしにくい、というのは心理的にはその通りで、たしかに初心者は躊躇して遅くなるかも知れない。しかし心理的要素を除けば、肩の位置が高いとヘッドスライディングは遅くなる、と考える根拠はない。「図1-04」のように積木を倒すことを想像すると、倒れるのに要する時間は単に重心の位置に依存するのではないだろうか。もちろん重心の位置が高いと倒れるのに要する時間は長くなるわけだが、上記の計算によれば、それでも2歩走るよりは速い。
むしろ、野球では加速がほぼ終わっているから飛んでもほとんどロスはない、とも言える。上の方に、「ショットガンタッチは結構スピードが乗りきるので飛び込んでも速度が変わらない」という意見があり、こっちは逆に「ショットガンタッチはまだ加速中で前傾姿勢なので飛び込みやすい」だが、どっちも納得いかない。「ショットガンタッチはまだ加速中だから、駆け抜ければ加速できる。ダイブに行くことで失うものは大きい」のではないか。
また、重心が高い方がロングダイブが可能だ。もちろんダイブが不利だとすればロングダイブはもっと不利だろうが、ここまでのところ、ダイブが不利だという説得的な論拠は発見できない。ひとつとして、だ。
◆◆
【野球】ヘッスラ○はダメ?普通に走った方がいいの?
> http://dragox.jpn.org/about/dive.html
読んだけど単純にヘスラと駆け抜け比較してるだけだね。
野球の場合一塁駆け抜けは特例でベースを踏んだ後ベースから離れてもアウトにならない。
ヘスラの場合、特例が適用されないのでベースタッチ後ベースから離れるとタッチアウトになる可能性がある。
この点が考慮されていない。
最速でベースタッチ後に減速し、タッチを継続するようなスライディングがはたして可能かね?
回り込まないで、ベース上を滑るようなヘスラなら可能性がある?
見たこと無いわw
なにそれ。ヘッスラでベースタッチ後、滑り過ぎてベースから離れてタッチアウト。それこそ見たことないわ。「駆け抜けは特例。ヘッスラは特例が適用されない」と言える根拠は何なのか教えてくれ。
ちなみに公認野球規則にはこう書いてある。
2・56 OVERSLIDE or OVERSLIDING 「オーバースライドまたはオーバースライディング」
攻撃側プレーヤーが、滑り込みの余勢のために塁から離れて、アウトにされるおそれのある状態におかれる行為をいう。本塁から一塁に進む場合には、直ちに帰ることを条件として、滑り込みの余勢のために塁を離れることは許されている。
7・08 次の場合、走者はアウトとなる。
(j ) 走者が一塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、ただちに一塁に帰塁しなかった場合。
◆◆
………うーむ。以上を見る限り、どうもヘッスラ遅い論の大半は「ヘッスラは遅い」を大前提とし、それを疑うことなく、ただその理由を考えただけのように見える。誰も「どっちが早いんだろうか」とは考えておらず、しかも、その自覚がない。がっかりだ。例えばこういう発言とか。
また、ヘッドスライディングの動作を開始する地点も理想の場所があるはずです。一定ではないバッティング動作から走行状態に入り、歩数を合わせることにもロスが発生すると考えられます。これらを総合的に考えた場合、走り抜けた方が「安定的」に早く走り抜けられるのではないかと思います。
「これらを総合的に考えた場合、〜〜〜のではないかと思います」と言うのだから、この人自身は「どっちが早いんだろうか」と考えた結果「走り抜けた方が早いのではないか」という結論を得たと思っているのだろう。しかし、だ。
「一定ではないバッティング動作から走行状態に入」るのも「歩数を合わせることにもロスが発生する」のも、駆け抜けでもヘッスラでも同じでしょう。そこを理由にヘッスラが遅いと言うには、駆け抜けと比べてヘッスラの方がよりシビアな歩幅合わせが要求される、ということを言わなければならない。しかし、どう考えてもそんなことは言えない。歩幅合わせ問題がよりシビアなのは、駆け抜けの方だ。結論をあらかじめ決めていて理由は後から探したのでなければ、こんな珍妙な理屈が出て来るはずがない。
▼more...「歩幅合わせ問題がよりシビアなのは、駆け抜けの方だ」

駆け抜けにつきまとう歩幅合わせ問題は、陸上短距離走には存在しない、野球特有のものだ。それは草野球で一塁に駆け込んだ経験がある人なら誰でも体感として知っているはずで、説明するまでもないと思うが、一応。
「野球の各寸法」によればベースの一辺は38センチある。当然ベースの手前に触るのが一番早く、38センチ奥で触れば38センチぶん遅くなる。
ダイブの場合、跳んでしまえばヒマだ。踏み切る位置はけっこうアバウトでいいと思う(想像)。例えば4メートルの距離をダイレクトダイブできるランナーが3メートル30センチの距離で踏み切ったら70センチ余裕がある時点でタッチする、という具合に、歩幅を調整しなくてもタッチのタイミングを調整できる。けがの危険をさておいて早いか遅いかだけを考えるなら、それでなんら遅滞はない。一方、駆け抜けでベースを踏むには(運よく調整なしで踏める場合以外は)歩幅で調整するしかない。また当然、調整なしで踏める場合でもベースの手前を踏めるとは限らず、奥を踏めば不利だが、だからといって手前を踏むために歩幅を合わせることにもロスが発生すると考えられます。というわけで、歩幅合わせ問題についてのみ言えば、ヘッスラの方が「安定的」に成功するだろう。
【野球】ヘッドスライディングは遅い?
451:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:56:05 v6AUkagd0
ベース踏むのに歩幅調整が・・・それならヘッスラが・・・とか言ってるけど、
野球ってその距離を何歩で走るとかそういう練習しねえの?
幅跳びとかそういう練習を反復的にやるぜ?
そういう練習しねえと思う。そもそも陸上でやる「そういう練習」とは、助走の距離とリズムと歩幅と歩数を一定に保つ練習、すなわち「歩幅と歩数を調整
しないで助走する練習」である。野球の場合、どのくらいの必死さで走り出すか、ライト線の右に駆け抜けるかセカンド方向に向かいながら様子を見るかそれとも速度を弛めず本気でセカンドを目指すかなど、刻々の選択肢があまりにも多い。一塁にヘッスラするかどうかというシチュエーション(ギリギリ内野安打かという打球)に限って考えればそれほど多様ではないかも知れないが、それでもやはり走り出す位置とそのときの姿勢は一定ではなく、それを歩幅(と、ベースのどこを踏むか)で調整
する以外には手段がない。
「勘がいい選手はうまく調整する」のかも知れないが、だとしても歩幅で調整してることには変わりがないわけで、理想的駆け抜けとは呼べないだろう。つまり理想的駆け抜けが成立する条件は、「歩幅合わせの心配をいっさいせずにひたすら無心で走ったら、たまたまベース手前角を踏めた」であり、じつは、運次第だ。その確率は、一般に考えられているほど高くはないだろう。「ヘッスラより駆け抜けの方が安定的に成功する」という定説は、意外に怪しい。以下に、駆け抜けで「最後の1歩が数十センチだけ残ってしまった」ように見える写真を3枚挙げる。たぶんこういうことは、日常的に起きているはずだ。
◆◆
まとめ。多くの人は、ショットガンタッチではダイブした方が絶対に有利だと考えている。見ていると実感としてそう思わざるを得ないのだろう。しかし同時に、野球では駆け抜けた方が絶対に速いと考えている。この説のルーツは不明だが、信仰は非常に強固だ。そのため多くの人は「野球とショットガンタッチはぜんぜん条件が違う」と主張する。だが、どう違うかについては、はなはだ怪しい説ばかりだ。
時として「いや、床さえ普通ならショットガンタッチでも駆け抜けた方が速い。だからこそ駆け抜けられないような床にしてあるのだ。番組的にダイブの方が絵になるから」という主張もなされる。「ダイブは遅い」と言うならばこの方が筋は通っているだろう。しかしながら、じゃあそういう人が「何故駆け抜けた方が早いと思うのか」について説得力ある説明をしてくれるのかと言えば、残念ながらそういう例には出会ったことがない。僕の知る限りでは、みなさん「言うまでもなく」「当然」「明白」とか言うばかりだ。
自分自身、まっすぐ駆け抜ける方が速いと信じていた身としては、世間の常識に援護してもらいたかったのだが、そんなこんなで逆に疑念ばかりが膨らんでしまった。なんなんだこれは。みんなどうかしてるんじゃないか。「怪しいUFO目撃談」をいくつ挙げたところでUFOの存在を否定したことにはならないが、代表的なUFO目撃談が怪しければ、とりあえず疑わしいと思った方がいい。
もしかすると「ヘッスラは遅い」というのは迷信なのではないか。一度は真剣にそう考えてみてもいいのではないか。
ショットガンタッチも、たぶん一般的にはヘッドダイブの方が有利だと思う。ただ、あれはあまりに距離が短い。ボタンを押してから最大でも8歩、まだまだ加速の余地は大きい。だから野球に比べて、最後の一歩を失うことのデメリットは大きいはずだ。個人の適正によっては「駆け抜け」にトライする価値はあると思う。最後の一歩は床が柔らかい上に表皮が向こう側に滑るように作ってあるようだが、手前方向には滑らないみたいなので、1歩くらいなんとかなるんじゃなかろうか。
▼野球とショットガンタッチの違いでひとつだけ思いつくのは、あれで走り抜けるのはたぶん「怖い」んじゃないか、ということだ。ボールが顔面に当たりそうだったら余裕で手でパンチできると思うが、ギリギリのタイミングなら足元あたりにボールが来るわけで、それは怖いのではないか。万一絶妙のタイミングでボール踏んじゃったら捻挫するかも、とか考えたり。だって全力疾走してる短距離走者の足元にバレーボールを放り投げたりしたら、危険じゃないですか。なんとなくそんな気がする。
だから純然たる駆け抜けよりも、「足からのスライディング」あるいは「軽いフットダイブ」の方がいいかも知れない。足からのスライディングなんて遅いに決まってる、と多くの人は考えているだろうが、それも疑ってみる価値はある。
ヘッドスライディング:lost momentum
飛べば推進力を失う説 を疑う
足からのスライディングの話題の前に、まだ検討していない重要な説がある。「飛べば数歩ぶんの推進力を失う、だから遅い」というものだ。ここまでに見た説の98%はどう見ても珍妙としか言いようがないものだが、これは比較的説得力を感じさせる、考慮に値する意見だと思う。ヘッスラ遅い論の代表格かも知れない。
ヘッドスライディングは無意味?(教えて! goo)
回答日時:04/08/31 00:40
飛んでいる最中は全く加速状態になく、等速運動でもなく、空気抵抗を受け減速している状態です。
ヘッドスライディングについて 野球で一塁ベースに向かうとき、野球経験者などは...(Yahoo! 知恵袋)
回答日時:2007/8/23 17:39:03
タイムだけで見るなら、駆け抜けた方が速いハズです.駆けている間というのは常に足で駆動している訳で、少しでも余力が残っていればさらに加速する事だって可能ですが、飛び込むと体は駆動力を失い全くの慣性に移行します.
これについて、言いたいことはよっつある。
第1に、
だったら何故、ショットガンタッチでは誰もがアタマから飛び込むのか。

これについてはもう書いた。ショットガンタッチは野球に比べて半分以下の距離しかない。ロナウジーニョの映像を見ると、ボタンを押してから7歩目で飛んでいる。7歩じゃトップスピードに達するのは無理だろう。つまり、駆け抜ければ確実に加速の余地がある。「飛べば加速ぶんを失うから遅い」のであれば、ショットガンタッチにおけるダイブの不利は、野球以上に大きいはずだ。なのにショットガンタッチでは誰もがアタマからダイブする。なぜだ。
第2に、
水泳選手は推進力を捨ててでもリーチの有利さをとるではないか。

オリンピックなんか見ていると、水泳選手は例外なく、腕をまっすぐ伸ばした状態でゴールする。たまたまドンピシャのタイミングでそうなる場合もあるだろうが大半は、わずかとは言え腕による加速を捨て、わずかであっても腕のリーチの有利さを選んでいるわけだ。加速より、リーチ重視。水泳選手が脳天でゴールしない主な理由は、手でタッチするのがルールだからだが、仮にルール上認められたとしても、たぶん誰もやらないだろう。腕をまっすぐ伸ばした状態でゴールする方が、早いからだ。
第3に、
駆け抜ければ加速できるに決まっている、という前提はおかしい。できるとしても、その加速ぶんは60cmを上回るのか。
第3点。「駆け抜けていたら得られたはずの最後の数歩ぶんの推進力」みたいな言い回しをよく見るが、まず、それがすでにおかしい。2歩ぶんの距離をダイブするなら、失うのは1歩だ。3歩ぶんの距離なら2歩、4歩ぶんなら3歩。いくらなんでもそのへんが限界ではなかろうか。つまり失われるのは通常1歩、多くて2歩、極端なロングダイブを想定しても3歩が限界ということになる。それを「数歩」と表現することで、ずいぶん何歩ぶんも失われるかのような、無意識の印象操作が行われている。「数歩ぶん」と発言する人たちは要するに、具体的に何歩なのか、考えてみたことがないんだと思う。
【野球】ヘッドスライディングは遅い?
498:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 13:33:53 +QED/Ros0
なんで駆け抜けたほうが早いか教えてあげようか?
ヘッドスライディングってのは選手の身長から考えてベースからおよそ2m前後手前で飛び込むわけでしょ?
つまりその2mを進む間ではもう加速はなく、跳び込む際に蹴った動力がベースに到達する迄の間に
徐々に動力とスピードが落ちていく過程があるだけなわけだよね?
駆け抜ける場合はどうだろう?
2mあったら何回地面を蹴って前進する推進力を得ることができるかな?
「2mあったら何回地面を蹴って前進する推進力を得ることができるかな?」との設問にお答えしよう。ゼロ回、または1回だ。まあ、あと2mの距離で飛び込むという前提がすでにナンセンスだが。頭の上にまっすぐ手を伸ばしたら、人体の総長は220センチくらいはあるでしょ? 足裏が突然地面にビタッと貼り付いたかのような瞬間超強力ブレーキをかけたとしても2mじゃ足りないんだよ。もうちょっと考えてから発言しようよ。なにが「教えてあげようか?」だよ。
で、まあ何歩だとしても、飛んだら二度と加速できないというのはその通りだ。が、だからと言って駆け抜ければ加速できるのかどうか、それはまた別の話だろう。荒木雅博なら最後の1歩で加速できるのかも知れないが、中村剛也ならむしろ遅くなるかも知れず、「荒木なら駆け抜けもダイブも速いし、中村なら駆け抜けもダイブも遅い。人それぞれ」とでも言うしかない。いずれにしても塁間距離は27メートルちょっとあり、ベース近辺では加速の余地は、あるとしても多くは期待できない。つまり駆け抜けた場合だって、疲れて減速中かも知れないし、そうでなくても大した加速状態にはなく、ほぼ等速運動中である。「ダイブすれば推進力を失う」という人は、「失われる推進力」に幻想を抱き過ぎではないか。
(27m しかないので、野球選手は陸上の100m 走の選手に比べ、加速を終えて全力疾走に移行するタイミングが早いはずだ。「荒木なら最後で加速できるかも知れない」といちおう書いたが、優秀なランナーなら最後に加速できる、という命題が正しいのかどうか、ほんとうのところはわからない。優秀なランナーなら速やかに加速を終えてトップスピードの区間が長いのかも知れない。最後の1歩まで加速の余地を残しているとしたら、逆に言えば全力疾走のポテンシャルを発揮できないうちに塁に着いてしまっているということなわけで、それは荒木雅博ではなく、例えばタイロン・ウッズのような、「鈍足のイメージがあるが加速に時間がかかるだけで、トップスピードは案外速い」と言われるタイプの方かも知れない)
全力で加速中の自転車のペダルをふいに止めたら、加速を続けた場合に比べてガクンと遅くなる。足のウラに感じる負荷がガクンと消えることでそれが実感できる。だが等速運動中なら、いくらスピードが出ていようと、ペダルにかかる負荷は空気抵抗および接地抵抗および自転車自体の機械抵抗に釣り合うだけのわずかなものだ。ふいにペダルを止めても、ガクンと減速するわけではない。ダイブするということは自転車で言えば「ペダルを止めると同時に宙に浮く(接地抵抗をゼロにする)」ことに当たる。しかも(空気抵抗による減速を強調する人は、まるで駆け抜ければ空気抵抗を受けないかのような言い方をすることが多いけど)姿勢を考えれば、ヘッスラ中に受ける空気抵抗は駆け抜け中に受ける空気抵抗よりも(たぶん)小さい。
走り抜ければ減速しないと仮定しても、ダイブによるリーチのアドバンテージは60センチはある。4メートルの距離をダイブするとして、(伸ばした指先まで人体の総長220 センチとすれば)足首の移動距離で言えば180センチだ。3メートルダイブならわずか80センチ。それだけの間に受けるわずかな空気抵抗によって、距離にして60センチぶん遅れるのか。いや60センチでようやく同等だ。「明白に遅いです」ということが言えるには、遅れのぶんが60センチを明白に超える必要がある。あり得ないような気がするんだが、どうか。
◆◆
【野球】ヘッドスライディングは遅い?
498:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 13:33:53 +QED/Ros0
ただ速度が落ちていくのみで最終的にストップ(0km/h)で完結する方法と、
到達地点を過ぎる最後の数cmまで加速し続ける方法と、どちらが早いかこれで分かるよね?
「駆け抜ければ最後の数cmまで加速できる」とかいうのもよく見る主張だが、バカを言うな。打者走者が最後の数cmで加速する方法は、ふたつしかない。ひとつは、最後の一歩を短く残すこと。下図のように。
人間はオートバイではないので、1歩を0.25 秒で走れるからと言って、半歩なら0.125秒、という具合にはいかない。最後の一歩を短く刻めば最後の数cmで加速できるかも知れないが、そんなことよりタイムロスの方が大きいだろう(想像)。では、最後の数cmで加速する、もうひとつの方法とは何か。それは「そもそも宙に浮かない」こと、すなわち、競歩だ。
第4に、
競歩は走るよりも速いのか。

ご存知の通り、走るとき人の体は宙に浮く。一流のアスリートだけではない。自分で軽く走ってみれば誰でも、宙に浮く時間を実感できる。宙に浮いている最中は全く加速状態になく、等速運動でもなく、空気抵抗を受け減速している状態である。一方、競歩なら、推進力を失う時間はゼロだ。究極のグリップ走法。推進力を失う時間が少ない方が速いとしたら、競歩こそ地上最速ということになるが、実際には競歩より走る方が速い。飛べば推進力を失うから遅い、という理論は、この現実を説明できない。
あなたがボテボテのサードゴロを打って一塁に走ったとする。あなたの全力疾走時の一歩が190センチだとする。最後の1歩が2メートル残ったとする。どうしますか。歩幅を広げて1歩で行きますか。歩幅を狭めて刻みますか。僕なら頑張って歩幅を広げて1歩で行く。その方が早いと思う。下の写真を見る限り、今江敏晃だってイチローだってそうしている。ところで、走ってる時はふつうの1歩でも宙に浮いてるんですよ。走っている時に歩幅を広げるということはすなわち、飛ぶ距離(推進力を放棄する距離)を伸ばすということなのだ。推進力を失えばそのぶん必ず遅い、と考えるのは、明らかに間違いである。
1歩走れば1歩ぶん加速できるとしても、同時に、1歩走るには1歩ぶん時間がかかる。1歩減らせば1歩ぶんの推進力を失うのかも知れないが、それは同時に「1歩の手間と時間をカットする」ことでもある。
ヘッドスライディング:foot-dive
フット・ダイブ
イチロー・スズキは決して一塁にヘッドスライディングしない。2008年現在の日本でイチローはかなりきょくたんに神格化されているので、まっすぐ駆け抜ける方がはやいとイチローが考えてる以上それが正しいんだろ、みたいな意見もけっこう見かける。しかしイチローは、まっすぐ駆け抜けるのがいちばんはやいとは、考えていない。この写真が証拠だ。
ぎりぎりのタイミングの時にはよく、この写真のように突っかい棒のように(ブレーキをかけるようでもある)脚を前へ突き出してベースを踏みにいく。これはべつに野球選手の専売特許ではなく、地面に目印、あるいはゴールを描き「先に踏んだ方の勝ちな」的な遊びをやれば、たぶんすべての子供がこれを行う。陸上競技のランナーは決してこんなことはしないが、彼らといえども、影踏みをやればやはりこの動作をするに違いない。この動作には名前がまだない。仮にここでは「片足跳び込み」「片足ダイブ」あるいは「フットダイブ」と呼ぼう。
◆◆
2009年現在、片足跳び込みは未知の研究分野だ。理想のランニングフォームを解説した書籍だとか、ヘッドスライディングの練習方法を解説したサイトだとかいうものはいくつもあるが、片足跳び込みについて解説した書籍もサイトもDVDも、まったく聞いたことがない。多くの野球選手が一塁へ片足跳び込みするが、イチローをはじめ多くの野球選手はその自覚さえなく、あろうことか、それを「まっすぐ駆け抜けた」と呼ぶ。
誰か実験してください。野球部員20人に5本ずつ一塁ダッシュしてもらってその様子を撮影すれば、「人はどんな場合に片足跳び込みするか」、かなり明らかになるはずだ。僕にはきちんと論じる能力も資格もデータもないので勘でいいかげんな結論だけ言うと、片足跳び込みには最後の一歩を伸ばす効用がある。「先に踏んだ方の勝ちな」的な競技において、最後の一歩が通常の歩幅よりもちょびっと長く残った時、人は(ほぼ無意識に)片足跳び込みを行う。陸上は「先に踏んだ方の勝ちな」方式ではないので、陸上では誰もやらない。
foot-dive.gif
最後の一歩を踏み切ったまま、前脚を掻くのをやめる。後ろ脚を前へ戻すのもやめる。つまり、次の一歩に備えることを放棄する。そうして足先のリーチを保ち、その姿勢で固まったまま落下する。そうすることで歩幅がかせげる。こんなふうに。
さらに1歩、2歩と走るのであれば、当然上の方が早い。しかしベースを踏んだところが終点なのであれば、下の方が早い。「後ろ脚を前に戻さず惰性で飛ぶのが片足跳び込み、両脚を戻さず上体を惰性で前に投げ出すのがヘッスラ」ということだ。ソースはオレの勘ね。この図の通りだとすると、片足跳び込みによって歩幅を数十センチ伸ばせることになる。実際にこの図の通りだとは思わないが、まあ原理はこんなもんじゃないかと。
この図を見る限り、駆け抜けと片足跳び込みはずいぶん大きく違う。多くの野球経験者はしばしば片足跳び込みを実行しておきながら「言うまでもなく駆け抜けがいちばんはやいです」「自明です」「駆け抜けよりはやい方法があるなら陸上100mでやるはずでしょwww」とか言うんだぜ。ほんとうのことが知りたいなら、疑ってみるべきだろう。
◆◆
いまのところ片足跳び込みについてはすべて想像でしか語れないが、ただ、片足跳び込みと「足からのスライディング」の境界は、下図の通り、微妙だ。微妙にどっちが早いかは不明だが、少なくともリーチの点では後者が有利だ。後者が早いとしても不思議はない。
だとすれば。
もしも「片足跳び込みは駆け抜けよりも早い」としたら、なんと、「足からのスライディングが駆け抜けより早くても不思議はない」ということになる。論理的に、そういうことになる、のである。
図1-10の通り、片足跳び込みをする選手は普通、脚を突き出しながら同時に上体をも無理矢理前傾させて「くの字」になる。言い換えると腰を引く。その方が早いからだろうか? 違う。そうしないと後ろに倒れてしまうからだ。早いか遅いかだけで言えば、たぶん、腰を引かずに心ゆくまで重心を投げ出し、後ろに転んだ方が早いだろう。幅跳びなら後ろに転ぶのは致命的だが、野球ではべつに問題ない。転ぶとどうなるか。足スラになる。こんなふうに。
駆け抜け最速論者はこの図とこの映像を見て、「バカだなあ鈴木、飛び込まない方が絶対早いから余裕もって触れるし、体勢も崩れないからその意味でも余裕持って確実にシュートできたのに。自明じゃん。オレなら間違いなくそうするね」と言えるのか。たぶん「いや、これはキーパーをかわす必要が」とか言うだろう。じゃあキーパーなしで「このボールに先に足で触ったヤツの勝ちな。せーのっ、ほいっ!」という遊びだったらどうか。キーパーなしでもやはり、ギリギリだったら足から飛び込むのではないか。あなたも。
そして、もし手を使ってもいいとしたら、頭から飛び込んだのではないか。鈴木も。
地面が芝生で、手でも足でも胴体でもなんでもいいからこのボールに先に触ったヤツの勝ちな。せーのっ、ほいっ! ってことだったら、僕ならたぶん頭から飛び込みますね。
「駆け抜けより足からのスライディングの方が速い」「ヘッスラはさらに速い」という実験データも存在する。
ヘッドスライディング:data
実験データ
スポーツ報知によると桑田真澄は2008年の年末に行った講演会でヘッドスライディングの危険性を語り、「高野連にも言っているんです。禁止にしましょうって。タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです」と述べている。この記事の存在は、親切な匿名の読者さんがメールで教えてくれました。ありがとうございます。桑田真澄とトレイ・ヒルマンは「ヘッスラ禁止」という点で一致しているが、どっちがはやいかについての見解は逆のようだ。
講演を現場で聞いたわけではないのではっきりとはわからないが、この記事を見る限り「タイムも計りました」と言いつつじつにさらっと流し、誰がどういう方法で、どういう被験者を使って測った、なんてことはいっさい説明されなかったように読める。これは別に桑田真澄に特有の横着ではなく、「駆け抜けの方が早い」派にごく典型的に見られる態度だ。WEB掲示板とかブログとかでも「駆け抜けの方が早いって、実験で証明されてるんだよね。ソース? なんだったかな。なんかでそう聞いた。つかソースなんてどうだってよくね? ちょっと考えりゃヘッスラが当然遅いってわかるっしょ」みたいな発言は多い。
【野球】ヘッドスライディングは遅い?
78 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:11:34 ID:cxn9D2ET0
科学的なデータはないのかよ
85 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:12:39 ID:6rtOl+pJ0
>>78
前に科学的にもヘスラは遅くなると出てたぞ
筑波大かどっかの先生が調べてた
「駆け抜けの方が早い」派のみなさんはあまりにも自らの主張を当然視しているので、厳密に検証しようというモチベーションが湧かないのだろう。実験してみたら駆け抜けの方が当然ながら早かった、というウワサが広く存在する割に、誰がどういう方法でどういう被験者を使って測った、という実験情報は意外に見当たらず、僕がひとつだけ見つけたのは以下のような話だ。
0秒12遅いにもかかかわらず滑り込む理由
「以前、日本テレビは清水隆行選手(巨人)がそれぞれのケースで要したタイムを計測したことがある。スイング後の走り出しから、1塁を駆け抜けたときが4秒06。一方、果敢にヘッドスライディングをしたときには4秒18かかった。その差は0秒12。このタイムラグにより、頭からベースに飛び込んだ方が遅くなる結果であった。手を伸ばしてベースに近づくことよりも、滑り込む際に減速してしまうことの方が影響が大きいのである。
ただ、この文章はなんとかいう単行本(タイトル思い出せないが、野球とかデータとか科学という語が入ったタイトル。本棚から出て来たらちゃんと書きます)の丸写しで、それがあまりにムチャクチャな内容の駄本なので、この話もなかなか信じにくいんだが。この引用部分だってなんだか微妙におかしいでしょう。「タイムラグによって遅くなる」ってどういうことだ。「0秒12遅かった」でよさそうなものを、「0秒12のタイムラグによって遅くなる結果であった」と書くセンスがわからない。まあそれはそれとして、「日本テレビが清水隆行で」とまで書いてあるんだから、本当なんだろうとは思うが。桑田の言う「タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです」も、もしかするとこのことを言ってるのかも知れない。
逆に、実験してみたらヘッドスライディング(というかダイビング)の方が早かった、というデータは、少数派の自覚があるせいか、説得力を感じさせるものが、というか、説得の必要性の自覚が感じられるものが多い。いや、多いと言ってもふたつしか知らないが、ふたつともにそれが感じられるので、確率で言えば100パーセントだ。ひとつは少年野球の指導者「紫電改」さんの実験で、打席から一塁まで(スライディングの技術さえあれば)「駆け抜けよりヘッスラが、0・1 から0・3 秒ほど速い」という結果が出たらしい。この人自身が長年「ヘッスラは遅い」と信じ込んでいて、結果を見て驚いたそうだ。で、測ってみたら意外や意外、うまい子に限って言えばヘッスラの方が速いんですよ、と、チームの父兄や野球仲間に話すと、「ほとんどが『そんな事はない!』『走り抜けたほうが絶対速い!』と」いう反応だと書いておられる。ただ計測の精度は不明。
もうひとつは「ソフトボール競技の異なるスライディング技術による塁間所要時間の差」。これは萬野修平さんという人が2006年に書いた、早稲田のスポーツ科学部の卒論らしい(いま知ったんですが 2005年8月、ミネソタ州マンケイト市でソフトボールのワールドシリーズというのが開催され、この年早稲田のソフトボール部は見事優勝を遂げた。萬野修平選手 [3年] はこの大会で二塁手としてベストナインに選出されたという、名選手だ)。PDF でわずか1ページなので読んでください。一応抜粋すると、
被験者は早稲田大学ソフトボール部員11名であった。実験は早稲田大学所沢キャンパス野球場にて行った。被験者は、ソフトボールでの1-2塁間(18.29m)で「駆け抜け」「ベントレッグスライディング」「ヘッドスライディング」「立ち止まり」の4つの条件での走塁を行った。その走塁を側面からビデオカメラ60コマ/秒で撮影した。撮影したビデオより、4つの条件下で1塁ベースの離塁から、2塁ベースに到達するまでのコマ数(タイム)を求めた。
また、実験後に被験者へ質問を行い、選手の4つの条件に対する主観的な情報も集めた。
スポーツ科学部で学んだ四年間の集大成だったら、11人とかじゃなく 100人くらいはやってちょうだいよ、と言いたいが、仕方ない。部員も100人はいないのかも知れない。ビデオで撮ってコマ数を数えたというんだから、計測精度は信用していいのではないか。結果は
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・計測によれば11名中8名が、4種のうちヘッスラ最速だった。 |
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・全試行中の最速記録も、ヘッスラによるものだった。 |
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・全被験者の平均を見ると、速い順に「ヘッスラ」>「足スラ」>「駆け抜け」>「立ち止まり」だった。 |
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・平均で「ヘッスラ」「足スラ」「駆け抜け」の差はそれぞれ百分の3秒、「駆け抜け」と「立ち止まり」の差は百分の7秒だった。 |
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となっている。つまり、ヘッスラは駆け抜けよりも
百分の6秒
早かった、と。サンプルがわずか11名だということを考えると、「ヘッスラの方が早いという明確なデータ」とはとても言えない(しかも、疲労が結果に影響してたら意味ないと思うんだが、どういう順序でどういうインターバルをはさんで走った、というような説明も見当たらない。ひとり何本ずつ計測したのかも不明。こうして貴重な実験データの恩恵を享受させてもらいながらこんなことを言うのは心苦しいが、卒論ってこんなレベルでいいんだろうか。もしかするとこれは卒論そのものではなく、そのほんの一部なのかも知れない。また、ふだんは無意識のうちに片足跳び込みをする選手が「駆け抜けで」と注文を受けたせいで「ふだんよりも律儀に」駆け抜けた、というようなファクターもあるかも知れない)が、それでもとりあえず
「ヘッスラなんて絶対遅い、というのを疑い得るデータ」
くらいは言ってもいいと思う。ちなみに2008年7月8日現在、Wikipediaの「スライディング」の項の「ノート」で、萬野修平論文は統計処理が甘いので引用の価値なし、との意見に対して Panpulhaさんという人が、「甘いかも知れんけど、だとしても、少なくとも萬野修平氏は測った。いっさいなんのデータも示さず論拠も挙げず『当然ながら、明らかに、ヘッスラなんて遅いに決まってます』と念仏唱えるよりかは百倍マシ」と主張しておられる(原文はもっと端正で上品)。正論だ。
単純計算すると百分の6秒というのは、百メートルを10秒で走るランナーがちょうど60センチ走る距離だ。この実験の被験者のみなさんはそこまで速くはないだろうし、それに塁間距離も野球以上に短いので、なおのことスピードは出ない。彼らがベース近辺の最後の百分の6秒で、仮に45センチ走る(駆け抜けで)としよう。ロスのない完璧なヘッスラは60センチぶん有利だ。しかしそれほど完璧でもなかったので、平均15センチぶんロスがあった。その結果、平均45センチ速かった。そう考えるとパズルのピースが不気味なほどぴったりはまるが、都合良すぎな解釈だろうか。都合良すぎかも知れないがこの解釈によると、この実験結果は「ロスのない完璧なダイブ(仮に可能だとして)は駆け抜けよりも
60センチ
ぶんだけ有利」という仮説に整合する。「足スラ」も意外な健闘ぶりだが、私見ではもはや意外ではない。
◆◆
ところで「主観的な情報も集めた」の方はどうなったか。
実験後に行った質問では、『4 つの条件の中で「駆け抜け」が最も速く、次に速いのが「ベントレッグスライディング」』と被験者全員が回答した。
とある。聞いてみると全員が「実感としては駆け抜け最速だった」と答えた、と。
じっさい、ヘッスラは実感として遅い、と語る経験者の声はネット上にも多い。
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
一塁へは駆け抜けた方が早いことが多いですよ。
どんな人:経験者
自信:自信あり
私は野球をしておりましたがスライディングは遅いと思いました。
どんな人:経験者
自信:参考意見
ところが、そう思った人の、実際にそう思った走りの、ビデオのコマ数を数えてみたら、11名中8名がヘッスラ最速だった、と。
「11名中8名がヘッスラ最速だった」という結果自体は、たまたまの、統計上の偏りかも知れない。現に日本テレビが清水隆行で測ったら駆け抜けの方が早かった、というデータもあるらしいし。しかしその8名を含む全員が「主観的にはヘッスラ遅い」と答えた、の方は衝撃だ。たまたまだとしても、かなり有意な結果のように思える。
ヘッスラ中はヒマなんだと思う。跳んでしまうともう、できることは何もない。腕は振らないし腿は上げない、体は揺れない、足裏は地面を蹴らない。加速は(水平方向には)絶対にできないし、垂直方向にだってもちろん、意識的にはできない。重力任せ。自分の足音も消える。わずかな時間(1メートルの自由落下だと考えると約0.45秒)とは言え、最後の最後の決定的な時間だ。そこで惰性と重力に身を任せ、自分の呼吸音と心拍音と風の音だけを聞きながら空中でじっとしているのが、最後の最後を必死で走るのに比べて如何に悠長な、如何にベストを尽くしてないような感じがするものか、それはひじょーによくわかる。気持ちはもっともだ。ヘッスラは本人の実感としては遅いのだろう。ただしかしそれは、客観的な計測結果とは必ずしも一致しない。少なくとも間違いなく言えるのは、
「一致しないことが、現に、ある」
ということだ。萬野修平論文を「駆け抜けとヘッスラはどっちが早いか」の検証として見ると、完全とはとても呼べない。「統計処理が甘い」というのが具体的にどういうことなのか無知な僕にはわからないが、とにかくサンプルが少なすぎるとは思う。しかし「ランナーの実感は信用できるか」の検証として見れば、ひとつの決定的な結論をもたらす、決定的な研究結果である。「一致しないことが、現に、ある」ことを、完全に証明している。また、「多くのランナーはヘッスラを実際以上に遅く感じがちだ」ということも、あまりにもサンプル数が少ないが、まあその、強く示唆している。ように見える。経験者の主観はアテにならん、たとえイチローの主観であっても、と考えるべきだろう。
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追記:もうひとつ、大阪体育大学の淵本隆文さんという人の「一塁ベースへのヘッドスライディングに関する動作学的解析」という論文を発見した。要点だけ書くと、▼本塁から一塁まで全力で走ってもらい、一塁手前8メートルの区間を高速度ビデオカメラで撮影して、8メートル地点から触塁までの所要時間を測定。▼走り抜けとヘッスラ(1)を交互に3回ずつ試行。▼その後、滑る距離をできるだけ短くして(つまり「ズザー」じゃなくてダイブで)ね、とリクエストして、あらためて3回ヘッスラ(2)をやってもらって測定した。▼そしたらヘッスラ2 > 駆け抜け > ヘッスラ1、の順に速かった。▼ただしヘッスラ2と駆け抜けの差は有意なものではなかった。▼触塁時点でのベースから重心までの距離を比較すると、ヘッスラ2は駆け抜けより60センチ有利だった。▼ヘッスラ2の踏切位置は、ベースから平均 3.2 メートルだった。だそうです。詳細はリンク先を見てください。3.2 メートルって、意外に短いですね。「0.2 秒ごとに描いたスティックピクチャ」というのがリアルで素敵だ。
ヘッドスライディング:bottom line
私はこう思います。
ここで私はこう主張いたします。「当然ながら駆け抜けのほうが早いです。明白です」というのは迷信だ。理想的に遂行されたヘッスラは、理想的に遂行された駆け抜けよりも、たぶん早い。僕は以下の2項目について、トレイ・ヒルマンに同意する。
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1: 強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。 |
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2: だが、大した差はない。 |
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実験する能力がないので図を見ての単なる印象だが(しかもその図は自分で描いたんだが)、ダイブによるリーチのゲインはたぶん、標準的な体格で60センチ程度ありそうだ。ならば走ってきた勢いをいっさい殺すことなく水平ダイブできれば、そりゃそっちの方が早いでしょう。下の、特に左の図を見れば、100m走の選手にとっての「100m」と「99m40cm」の違いだってかなりのものだろうに、
ヘッスラと駆け抜けの差を考えるなら(2歩の距離をダイブすると仮定して、1歩あたり180センチと仮定して、最後の2歩以外は完全に同じと仮定すると)、「3m60cm」と「3m」の差だ(走り抜ければ残り360cmの重心移動が必要な地点から、ダイブすれば300cmの重心移動で届く)。「100m」と「99m40cm」の差がかなりのものだとすると、「3m60cm」と「3m」の差は圧倒的である。細かく計算するまでもない。仮にさいごの1歩で加速できるとしても、わずか3m60cmの区間で60cmの差を逆転できるほどの加速なんて、あり得るだろうか。
水泳選手にとって、腕を真っすぐ伸ばして指先でゴールにタッチするのと、脳天でゴールにタッチするのとでは雲泥の差らしいが、ちなみに60センチというのは、標準的な体格での指先と脳天の差よりも大きいはずだ(腕が長くて指先と脳天の差が60cmを上回るようなスイマーも多いだろうが、そういう人ならダイブと駆け抜けの差もやはり、60cmを大きく上回るだろう)。60センチというのは「雲泥の差を上回る決定的な差」なのだ。
すいえいせんしゅ。じょうずに描けなくてくやしいです。
もちろん「走ってきた勢いをいっさい殺すことなく水平ダイブ」「最後の2歩以外は完全に同じ」という条件を100%達成するのは困難なのかも知れないが、困難だからといって不可能だと考える根拠は何もないし、100%でなくても100%近く達成できれば意味はある(想像)。逆に「どれほど理想的に遂行しても60センチのアドバンテージをフイにするだけの失速は免れない」なんてことを論証した人は存在しない。少なくとも、僕にそういう論証メールをくれた人は、まだいない(2010年10月現在)。
「理想的に遂行されたフットダイブ」と比べるのであれば60センチの差はないだろうが、やはり多少の優位性はあるんじゃなかろうか。(というか、フットダイブに時間短縮効果があるのは「最後の1歩がたまたま多少広めに残った場合」だけだと思うので、比べることに無理があるような気がする)
ただし、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」と「ヘッスラは駆け抜けより早い」は違う。その点はご留意ください。「理想的なジャストミートさえできれば谷繁はダルビッシュからホームラン打てる」と「谷繁は必ずダルビッシュからホームラン打つ」は、ぜんぜん違うでしょう。「当たれば競馬は儲かる」と「競馬は儲かる」もぜんぜん違う。それと同じだ。競馬でがっぽり儲けた例があるからといって「競馬は儲かる」とは言えないように、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」のだとしても、「ヘッスラは駆け抜けより早い」と言えるかどうかはわからない。遅いことだって多いだろう。現に清水隆行は駆け抜けの方が早いというデータもあるそうだし。ヘッスラは駆け抜けより早い、と主張する気は、ない。どっちでもいい。ただ、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」、かつ、「理想的駆け抜けが成立する確率は、案外、高くない」と主張します。
また、あまり厳密に考えても仕方ないということも言っておきたい。何故なら、判定はあまり厳密に行われないからだ。一塁でのアウト / セーフに、水泳や競馬のような機械判定が取り入れられるようになったら、そのとき初めて厳密な検証が意味を持ち、厳密な検証が各所で始まるだろう。そして、そんな日はたぶん、永遠に来ないだろう。プロ野球選手が「どう判定されるとかじゃなく、自分の中でベストを追求するのがボクのベースボール・スタイル」と考えるか、「有利だとしてもたかだか数十センチだし、その数十センチすらも厳密に判定してもらえないんだからヘッスラなんか無意味」と考えるかは、好みの問題、でもある。
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ついでに、「実際にストップウォッチで測ってみたら○○の方が早かったらしいですよ」とかじゃ結論は出ない、とも、主張する。
ヘッドスライディングについて 野球で一塁ベースに向かうとき、野球経験者などは...(Yahoo! 知恵袋)
回答日時:2007/8/24 10:49:55
どちらが勝るかの結論をここで計算で示すことは出来ませんが、実際に野球選手が両方の方法を行ってストップウォッチでかかる時間を計測するというきちんとした科学的な実験を行った結果、駆け抜ける方が速いというのが得られた結論です。
桑田氏、育成3か条…ヘッドスライディング禁止&ヤジ禁止&失敗OK
タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです。
このように「実際に測ってみたら○○の方が早かった」式の主張をする人は多いが、きちんと科学的に測りさえすれば必ず結論が出る、と考えるのはまったく科学的でない。測ってわかるのは測った範囲の結果だけだ。じゃあどれほどのサンプルを測ればじゅうぶんなのかと言うと、どれほど測ってもじゅうぶんとは言えない。
【野球】ヘッドスライディングは遅い?
802:名無しさん@恐縮です 2010/07/21(水) 06:19:25 wCbR3Y6E0
こんなんちょっと調べればわかりそうなもんだがなあ。
この程度のことさえいまだに科学的に調べたり結論出すこともできないってのはちょっと驚き。
もしかしたらとっくに結論出てて、いまだにがちゃがちゃ言ってる奴が馬鹿なだけなのかも知れんが。
ちょっと調べればわかる、という意見には、根拠が何もない。
例えばスキージャンプの選手が滑走の時に中腰で両手を平行に後ろへ揃える(バックハンドスタイル)のを、2010年現在我々は議論の余地のない唯一の合理的な正解であるかのように思い込んでいるけれど、Wikipedia「スキージャンプ」の項によれば、そんな常識が定着するまでには、1877年にノルウェーで行われた世界最初のジャンプ競技会から数えて、なんと、百年かかったらしい。V字飛行が発明されるまでには120年かかった。
例えばバタフライは平泳ぎより速い、というのも現在では常識だが、Wikipedia「バタフライ」の項によれば、そんな常識が定着するまでには、初期型バタフライ(上半身がバタフライ、脚は平泳ぎのかたち)の登場から20年以上を要している。ドルフィンキックの登場はさらにそのあとだ。
結論に至るまでに百年かかったり20年かかったりした実例が現に存在する以上、ほんとうのことって案外なかなかわからないのだなあ、と考えるしかない。もしかするとこれらの常識だって、来年くつがえるかも知れない。「ちょっと調べればわかる」? とんでもない。百年実験しても確実とは言えないんだぜ。
▼Wikipedia「背面跳び」の項より
アメリカのディック・フォスベリー選手が正面跳びの練習中にヒントを得て開発したものとされる。英語では「フォスベリー・フロップ(Fosbury Flop)」と言う。自己流で走り高跳びを始めたフォスベリーは、高校に入り記録を伸ばすためにベリーロールを取り入れようとした。しかし記録会でベリーロールをうまく跳べなかったフォスベリーは、得意であるはさみ跳びに途中から切り替えて(中略)
身体が地面と平行になる感覚にインスピレーションを与えられたフォスベリーはそのあと、背中を地面に向ける跳び方に磨きをかけていった。しかし背面跳びは当時は誰もやっていなかったので皆の笑いものになり、フォスベリーの跳び方を嘲笑するためにわざわざ来る人がいるくらいであった。
大学に入ると、記録の伸び悩みから三段跳びに転向することを薦められたフォスベリーは一念発起し、2m10cmの記録をたたき出した。そのあと大学選手権優勝、オリンピック代表選考通過と順調に結果を出して行った。そしてメキシコオリンピック参加選手中唯一の背面跳び採用選手ながら当時のオリンピック新記録で金メダルを手にした。
Dick Fosbury in Mexico City Olympic, 1968
高校時代にぐうぜん背面跳びを発明したディック・フォスベリーは大学に進んで記録が伸び悩み、三段跳び転向を薦められたという。ベリーロールより背面跳びが有利だというのは現在常識だが、もし彼が転向していたら、変人ダメジャンパーがいっとき試みた珍奇な跳び方は忘却され、現在もベリーロールがベストとされていたかも知れない。2009年現在は背面跳びがベストとされているが、未来永劫にわたってそうかどうかは誰にもわからない。
「現代のトップアスリート(と、そのスタッフ)たちは1/100秒、1/1000秒の為に科学的に実験を繰り返してフォームや健康管理やらユニフォームの素材やらそれこそありとあらゆるものを研究してるんだから、彼らの採用する方法がベストに決まっている」みたいなこと言う人がけっこういるけど、科学への信頼も度が過ぎるとオカルトだ。何がベストか、科学の見解なんて年々変わる。変わらないものも多いが変わるものも多い。例えばバッティングフォームについて「振り子打法がベストな打ち方かどうか」「スタンスはオープンとスクウェアとクローズドのどれがベストか」などを考えてみても、唯一の完全な結論なんて出そうもないでしょう。
背面跳びすら当初は嘲笑で迎えられた、という事実を胸に、我々はあらゆる可能性に対して、より謙虚であるべきだと思う。メキシコオリンピック以前には、「言うまでもなく、当然ながら、明らかに、背面跳びなんて無意味です」「誰それが実際に跳んでみてきちんと科学的に測った結果、やっぱりベリーロールの方がいい記録が出たらしいですよwww」みたいな声が、ディック・フォスベリー周辺に、たくさんあったに違いない。