ベトナムで、南シナ海の島々の領有権を巡って対立が続く中国への抗議デモが続いてきましたが、政府は、デモを容認してきたこれまでの姿勢を転換して、参加者を拘束し、中国との関係がこれ以上悪化しないよう神経をとがらせているものとみられます。
ベトナムは南シナ海の島々の領有権を巡って中国と対立しており、首都ハノイでは、6月初めからほぼ毎週、中国への抗議デモが続いてきました。共産党の1党支配体制にあるベトナムでは、ふだんは政府がデモを厳しく規制していますが、国民の反中感情に配慮して、一連の抗議デモは、このところ容認されていました。しかし、今月18日、ハノイ市当局は「国民の愛国心を利用して、反政府勢力が秩序を乱そうとしている」として、デモに参加した人は今後、処罰の対象になるとする通達を出しました。こうしたなか、21日朝、市内の公園に集まった人たちが、「南沙諸島、西沙諸島はベトナムのものだ」などと掛け声を上げてデモ行進を始めたところ、警察は解散を求めたうえ、30人余りの参加者を拘束しました。ベトナム政府の姿勢転換の背景には、中国との関係がこれ以上悪化したり、国民の不満の矛先が政府に向いたりしないよう、神経をとがらせていることがあるものとみられています。