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きょうの社説 2011年8月21日
◎まちバス80万人 中心部の活性化を後押し
今夏、運行開始から4年を迎えたJR金沢駅と市中心部を100円で結ぶ「まちバス」
の乗客数が80万人を突破し、「まちバス」が買い物と観光の交通手段として定着してきたことがうかがえる。土日祝日の運行で、ことし1月2日の1日当たりの利用人数は過去最高の3639人に上った。利便性の向上を重ねて、まちなかに人を呼び込んでもらいたい。戦災を免れた金沢は狭い街路が多く、マイカーの乗り入れにはおのずと限度がある。北 陸新幹線金沢開業に向けて、駅から中心部への二次交通の充実が求められており、9月には都心軸の国道157号むさし−片町交差点間で土日祝日の「バス専用レーン」の交通実験も行われる。行政と関係機関は中心部の交通事情を総合的に検証し、公共交通網の整備を着実に進める必要がある。 市中心部では複合ビル「香林坊ラモーダ」のオープンや人気店の集積、百貨店の改装な どが相次いでいる。移動しやすいバス便の確保は、新たな魅力を増したまちなかの活性化をさらに後押しするだろう。 2007年6月に運行を開始した「まちバス」は、ワンコインで乗れる気軽さと分かり やすさが受け入れられ、年平均20万人が利用している。事業主体である金沢商業活性化センター(TMO)が実施したアンケートによると、当初の買い物中心から、観光にも乗車の目的が広がってきた傾向がみられる。同センターは観光案内のマップ作成や年始商戦の際の運行時間繰り上げなどの利用促進の取り組みを行っており、今後もイベントなどの中心部の動きと連動した利用しやすい運行を望みたい。 市中心部には路線バスや「まちバス」「シャトルバス」「金沢ふらっとバス」などが走 行している。それぞれの特性を生かした二次交通の強化が求められており、利用動向や料金設定、バス待ち環境などの分析と改善が欠かせない。なかでも、路線バスが通れない狭い道を走行している「金沢ふらっとバス」は、金沢の街の事情に合い、高齢化社会にも適している。一層の充実に向けて、利用者のニーズをきめ細かくくみ取ってほしい。
◎「原子力人材」の育成 廃炉まで長期戦の構えを
政府・東京電力統合対策室は、福島第1原発事故収束の工程表を改定し、放射線を管理
・測定する要員など被ばく管理の人材育成を強化することを新たに盛り込んだ。収束作業を進める上で不可欠なことであり、来年1月までに原子炉の冷温停止をめざす「ステップ2」の作業項目に追加されたが、原子力関係の技術者や研究者など「原子力人材」の育成、確保は冷温停止後もにらんだ長期の対応が必要である。政府の当面の計画では、原発メーカーや大手建設会社など関連企業の社員を対象に放射 線管理の研修を行い、年内に250人の要員を育成する。東電はグループ会社を含めた社内研修で放射線測定の要員約4千人を確保する。すでに約1900人の社員が研修を終えており、一部は避難住民の一時帰宅に際して持ち物の放射線測定などに参加しているという。 東電はまた、長期化による作業員の不足に備えて、電気工事や溶接作業などの技術職も 新たに募集する計画であるが、収束作業は冷温停止から廃炉まで10年単位の長期戦を覚悟しなければならない。しかも、損傷した原子炉の燃料が格納容器外にまで流れ出ているとみられるため、燃料の取り出しは大変困難とされる。米スリーマイル島事故よりも高度な廃炉技術とそれを担う専門的な人材の確保が欠かせないのである。 さらに、人材育成については、より根本的な問題が浮かび上がっている。エネルギー政 策の転換で原発を徐々に縮減する流れが強まり、原子力分野をめざす学生の減少が予想されることである。重大な原発事故で原子力工学系の学生が減ったことは過去にもあった。しかし、今後原発に頼らぬ方向に進むとしても、既存施設の安全管理や使用済み核燃料の処理、増加する廃炉の技術開発、被ばく研究などを行う原子力人材をなお育成していく必要がある。 政府は原発推進の立場から産学官挙げて大学・研究機関、原子力産業の担い手育成に力 を入れてきたが、従来とは違う立場、視点から原子力人材の教育、確保策を考え直さなければなるまい。
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