二番煎じのアンチ管理局。更にガンダム種デスクロスです。
完結目指して頑張ります。
では、どうぞ。
魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~ 第1話、血涙の騎士
ゼスト・グランガイツ率いるゼスト隊は戦闘機人のプラントと思われる「施設」の前にいた。
盟友であるはずのレジアス・ゲイズから告げられた戦闘機人捜査の打ち切り。どうしてもそれを認められず、ゼストは今回の突入捜査に踏み切った。
「ゼスト隊長!総員突入準備、完了しました!」
「よし、俺に合わせろ!…突入!」
その号令に合わせて、ゼスト隊の面々が「施設」の中に入っていく。
潜入に成功したゼスト達はあまりの呆気なさに違和感を感じていた。潜入に気づかれてい無いのでは無いか?、とも考えたが、一番確率が高いのはコレが罠だということだろう…
「流石に…上手く行き過ぎね」
「不気味ね…」
副隊長であるクイント・ナカジマが厳しい表情で呟く。その隣のメガーヌ・アルピーノも警戒しながら周囲を見回してる。
その緊張はゼスト隊全員に共通するものだった。しかし、罠だとしても彼達は止まれない。
暗い部屋に紫色の髪で長身の女性、灰色のコートを纏った銀髪の少女、モニターに映った眼鏡をかけ、栗色の髪を三つ編みにした女性。そして、血の涙を流す仮面をつけた男がその場にいた。
「さて…準備はいいか?」
紫の髪の女性、トーレが立ち上がり、周囲に声をかける。
「はい。姉様」
灰色のコートを纏った銀髪の小柄な少女、チンクと、
『全機、稼働準備完了ですよ~』
モニター越しに眼鏡をかけ、栗色の髪を三つ編みにした少女、クアットロが答える。
紫の髪の女性は頷き、男の方を向く。
「行くぞ」
男が立ち上がり、それについて行く形で残った2人も出て行った。
中央部に辿り着いたゼスト隊が見たものは、もぬけの殻となったポットの列だった。
「クッ、やられた…」
「何処から情報が漏れたの…?」
目的の戦闘機人は居なかったが、せめてデータだけでも、と隊員達はコンピュータに向かう。
その中でゼストは誰が情報をリークしたのかを考えていた。
直ぐに一人の人物が浮かび上がったが、ゼストにはそれが信じられ無かった。いや、信じたく無かった。それでも、もし想像した通りの人物なら…
そこまでゼストが考えた時、甘ったるい声が響いた。
『管理局の皆さ~ん、ご苦労様で~す。ココまで辿り着いた皆さんには、ご褒美をあげますね~?』
ゼスト隊の周囲にカプセル型と蜘蛛型の機動兵器が次々に現れる。
「くっ!」
「ウソ!?」
ゼストの放った槍とクイントのパンチそれぞれに込められた魔力が機動兵器に当たる直前で消失した。
機動兵器はそれぞれがAMF(アンチ・マギリング・フィールド)を発生させることができる。
よって、並大抵の魔法では機動兵器に触れる事さえでき無いの。その事を瞬時に判断したゼストは撤退を選択した。
「総員撤退だ!スリーマンセルを組んで、AMFに対応しろ!一定以下の魔力じゃ、こいつらには効か無いぞ!」
「逃げ切る事を最優先に!生きて外で会いましょう!」
『はいっ!!』
ゼストとクイントが出した指示に隊員達は素早く反応した。近くにいた隊員とフォーメーションを組み、機動兵器を破壊しながら出口に向けて、戦線を押し下げて行く。
ゼストとクイント、メガーヌは
一人でも多くの隊員を逃がす為に殿を務める。
「メガーヌ、ブーストを!」
「了解!クイント、抑えてて!」
「任せて!」
3人は、ゼスト隊のトップ3に相応しい連携で、次々に機動兵器を殲滅していく。
「クイント!下がって!」
ガギィィィィィィン!!
クイントを狙った機動兵器とは別種の攻撃、羽のような武器がメガーヌのシールドに食い込んだ。
「戦闘機人!?」
攻撃の主を見たクイントが、驚きの声を上げる。刃を振るったのは女性だった。ゼストがすかさず槍を振るうが、飛び下がったため当たらない。女性は機動兵器の影に隠れてしまい、もう姿は見え無くなった。
長身の女性が下がると殆ど同時にゼストを目掛けてナイフが飛んで来た。ゼストは苦もなくそれを槍で弾いていく。しかし、その選択が仇となった。
「総員、退避!急げ!」
ゼストが叫んだ直後に弾かれたナイフに光の輪が発生し、爆発する。煙が辺りに立ち込める。
チンクのランブルデトネイターで発生した煙が晴れた時、そこには誰もいなかった。
『騎士とザコ数匹は彼の元に向かっていますね。2人の隊長格もザコ数匹を連れてます。』
「クアットロ。予定通りお前のISで隊長格とザコ共をバラけさせろ」
『お任せあれ~』
トーレとチンクはそれぞれ待ち伏せの為に移動を開始する。
『では、ジェイル・スカリエッティが第4子、クアットロ。私のIS、ウソと真実が入り混じった、幻惑の銀幕』
クアットロの手に陣が浮かぶ。
『シルバーカーテン発動』
幻術作用と電子制御の能力を持つ、クアットロのISがプラントを包み込んだ。
プラント内の比較的広い一室で、シルバーカーテンの発動を感じた男がデバイスを掲げた。
「インパルス、セットアップ」
『YES,SIR』
光が男に纏わり付き、腰にナイフのホルダーが付いた青と白の鎧に、同配色のブーツに男の姿を変える。
「ステラ…」
「はぁっ!」
ゼストが横薙ぎの一撃で蜘蛛型を破壊する。煙に乗じて逃走に成功したゼストと数名の部下だったが、次々に襲いかかってくる機動兵器の物量のせいで他の仲間とはぐれてしまった。
それでも仲間を信じ、ゼストはひたすらに来た道を引き返していた。
「もう少しで出口だ!」
「・・・」
一つも返事が無いことを怪訝に思ったゼストが振り返る。
「何だと!?」
振り返った先には付いて来ているはずの部下が1人もいなかった。
「なるほど、幻術か…」
『バレちゃいました?』
虚空に向かってゼストが呟くと、返ってくるはずの無い、答えが返ってきた。
「何時からだ?」
『貴方達が必死に走り回っている間にですよ~。あ、引き返しても無駄ですよ?』
甘ったるい声と軽い口調に内心イラつきながらも、ゼストは少しでも情報を引き出そうとする。しかし、そうする事さえ敵の予定内の行動のようで気分が悪い。
「わかっている…俺が幻術だと気付いた所で、伝える術が無い。電波障害も貴様の仕業か?」
『そこまでバレちゃいましたか。優秀ですねー』
この声が言っている事が本当なら、相当にタチの悪い能力を持っている。しかも、敵にはAMFまで有る。ゼストの額に薄っすらと汗が浮かんだ。
「随分ペラペラと喋るな?」
『だって、貴方はココまでですもの。シルバーカーテン、解除』
ゼストの目の前に一本の通路が現れる。通路の先には他とは意向が違う扉がある。
『その扉の先に貴方の相手がいますわ。貴方が彼に勝てたなら、私達は引き上げます』
ゼストは声の主に、彼の部下の命を掛けた決闘を申し込まれたのだ。
『どうしますか?あ、モチロン逃げても構いませんよ?』
自ら一騎討ちをしかけて来る以上待っているのは、かなりの強敵だろう…それに、素直に引いてくれる可能性も低い。
そこまで分かっていても、ゼストは騎士だった。投げられた手袋を見て見ぬ振りは彼にはできなかった。
ゼストは無言で通路を進み、扉を開いた。
ゼストが部屋に入って最初に感じたのは、濃くて重い殺気だった。
その殺気の元は部屋の中央にいた。血の涙を流す仮面に、騎士を思わせる鎧を身に纏った男。
「騎士ゼスト・グランガイツだな?」
仮面の男の声は、ゼストの予想外に年若い男のそれだった。
「そうだ。血涙の騎士、貴公の名は?」
「シン・アスカだ…アンタにも色々有るんだろうけど、死んで貰うぞ」
まさしく問答無用。シンの言葉にゼストも魔法で強化した槍を構え、気を五体に張り巡らせる。
「行くぞ、ゼスト!」
『C・サーベル』
シンの声に呼応するように、インパルスが魔力刃を作り出す。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぬぅおおおおおおおっ!」
刃と槍が衝突した。
その頃、クイント、メガーヌが率いる部隊は延々と彷徨っていた。
メガーヌはサポートを得意とする魔導士。それ故に肌に感じる違和感の正体をつかむ事ができた。
「クイント、正面の壁殴ってみて」
「へっ?何で?」
突然のメガーヌの言葉に目を点にするクイント。
「いいから」
「わかったわよ…はっ!…え!?」
クイントが壁に向かって振るった拳が空を切る。ここまで来て、クイントにも状況が理解できた。
「やっぱり幻術ね」
「なるほどね…私達は掌の上だった、って訳か…」
話を聞いていた隊員達の顔に絶望がよぎる。クイントとメガーヌでさえも疲労を濃く浮かべているのだから当然かも知れない。
残りの魔力が少ないという事実が更に隊員達を落胆させた。
「どうする?」
「迷った時は、直進有るのみ!うりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
周りを、そして自分を振るいたたせる為にクイントは壁を砕き、その穴の中に飛び込んだ。
穴に全員が飛び込み、進む。
「…随分派手な登場だな」
その部屋はトーレが待ち伏せしている部屋だった。
「クイント…」
「ごめんなさい…」
『トーレ姉様、その部屋のAMFを最大にしました』
「感謝する」
トーレがISを発動させ、構える。
「メガーヌ…私が足止めするから皆を連れて逃げて」
クイントが殿を買って出ようとしたその時、
ドガァンッ!!
ゼスト隊を爆風が襲った。
「それは、無理みたいね…」
入ってきた穴から、チンクが姿を見せた。
刃と槍が接触すると同時に刃が砕け散り、シンは吹き飛ばされた。
理由は単純な魔力量の差。C・サーベルに込められた魔力はBB+、S+の魔力が込められたゼストの槍に触れれば砕けるのは、当然。
壁に衝突したシンが起き上がる。
「このままじゃ、勝負にもならないな…インパルス」
『SWORD SILHOUETTE』
シンの姿が一瞬で変化する。鎧は赤と白に変色し、薄くなっていく。ブーツも動揺に変化し、最後に背中に二本の大刀が現れた。シンはその一本を手に取る。
『エクス・セイバー』
魔力が大刀を包み、両刃大剣となる。
「ランクが段違いだな…それが貴公の本当の力か?だが、それでも俺には届かん」
「…ランクの差は力の差じゃないって事、教えてやるよ」
一度は失った物。二度とは手に入らぬはずだった。
再び手に入れたそれを守るため、彼は悪の道を行く。
次回、魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~ 第2話、炸裂する衝撃
その力、解き放て!インパルス