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[29363] 【ネタ・習作】魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~ (ガンダムSEED DESTINY×なのは)
Name: ガオ◆97564bd1 ID:3be99ad7
Date: 2011/08/20 16:51
二番煎じのアンチ管理局。更にガンダム種デスクロスです。

完結目指して頑張ります。
では、どうぞ。






魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~   第1話、血涙の騎士


ゼスト・グランガイツ率いるゼスト隊は戦闘機人のプラントと思われる「施設」の前にいた。

盟友であるはずのレジアス・ゲイズから告げられた戦闘機人捜査の打ち切り。どうしてもそれを認められず、ゼストは今回の突入捜査に踏み切った。

「ゼスト隊長!総員突入準備、完了しました!」

「よし、俺に合わせろ!…突入!」

その号令に合わせて、ゼスト隊の面々が「施設」の中に入っていく。



潜入に成功したゼスト達はあまりの呆気なさに違和感を感じていた。潜入に気づかれてい無いのでは無いか?、とも考えたが、一番確率が高いのはコレが罠だということだろう…

「流石に…上手く行き過ぎね」

「不気味ね…」

副隊長であるクイント・ナカジマが厳しい表情で呟く。その隣のメガーヌ・アルピーノも警戒しながら周囲を見回してる。

その緊張はゼスト隊全員に共通するものだった。しかし、罠だとしても彼達は止まれない。



暗い部屋に紫色の髪で長身の女性、灰色のコートを纏った銀髪の少女、モニターに映った眼鏡をかけ、栗色の髪を三つ編みにした女性。そして、血の涙を流す仮面をつけた男がその場にいた。

「さて…準備はいいか?」

紫の髪の女性、トーレが立ち上がり、周囲に声をかける。

「はい。姉様」

灰色のコートを纏った銀髪の小柄な少女、チンクと、

『全機、稼働準備完了ですよ~』

モニター越しに眼鏡をかけ、栗色の髪を三つ編みにした少女、クアットロが答える。

紫の髪の女性は頷き、男の方を向く。

「行くぞ」

男が立ち上がり、それについて行く形で残った2人も出て行った。



中央部に辿り着いたゼスト隊が見たものは、もぬけの殻となったポットの列だった。

「クッ、やられた…」

「何処から情報が漏れたの…?」

目的の戦闘機人は居なかったが、せめてデータだけでも、と隊員達はコンピュータに向かう。

その中でゼストは誰が情報をリークしたのかを考えていた。
直ぐに一人の人物が浮かび上がったが、ゼストにはそれが信じられ無かった。いや、信じたく無かった。それでも、もし想像した通りの人物なら…

そこまでゼストが考えた時、甘ったるい声が響いた。

『管理局の皆さ~ん、ご苦労様で~す。ココまで辿り着いた皆さんには、ご褒美をあげますね~?』

ゼスト隊の周囲にカプセル型と蜘蛛型の機動兵器が次々に現れる。

「くっ!」

「ウソ!?」

ゼストの放った槍とクイントのパンチそれぞれに込められた魔力が機動兵器に当たる直前で消失した。

機動兵器はそれぞれがAMF(アンチ・マギリング・フィールド)を発生させることができる。

よって、並大抵の魔法では機動兵器に触れる事さえでき無いの。その事を瞬時に判断したゼストは撤退を選択した。

「総員撤退だ!スリーマンセルを組んで、AMFに対応しろ!一定以下の魔力じゃ、こいつらには効か無いぞ!」

「逃げ切る事を最優先に!生きて外で会いましょう!」

『はいっ!!』

ゼストとクイントが出した指示に隊員達は素早く反応した。近くにいた隊員とフォーメーションを組み、機動兵器を破壊しながら出口に向けて、戦線を押し下げて行く。

ゼストとクイント、メガーヌは
一人でも多くの隊員を逃がす為に殿を務める。

「メガーヌ、ブーストを!」

「了解!クイント、抑えてて!」

「任せて!」

3人は、ゼスト隊のトップ3に相応しい連携で、次々に機動兵器を殲滅していく。

「クイント!下がって!」

ガギィィィィィィン!!

クイントを狙った機動兵器とは別種の攻撃、羽のような武器がメガーヌのシールドに食い込んだ。

「戦闘機人!?」

攻撃の主を見たクイントが、驚きの声を上げる。刃を振るったのは女性だった。ゼストがすかさず槍を振るうが、飛び下がったため当たらない。女性は機動兵器の影に隠れてしまい、もう姿は見え無くなった。

長身の女性が下がると殆ど同時にゼストを目掛けてナイフが飛んで来た。ゼストは苦もなくそれを槍で弾いていく。しかし、その選択が仇となった。

「総員、退避!急げ!」

ゼストが叫んだ直後に弾かれたナイフに光の輪が発生し、爆発する。煙が辺りに立ち込める。



チンクのランブルデトネイターで発生した煙が晴れた時、そこには誰もいなかった。

『騎士とザコ数匹は彼の元に向かっていますね。2人の隊長格もザコ数匹を連れてます。』

「クアットロ。予定通りお前のISで隊長格とザコ共をバラけさせろ」

『お任せあれ~』

トーレとチンクはそれぞれ待ち伏せの為に移動を開始する。

『では、ジェイル・スカリエッティが第4子、クアットロ。私のIS、ウソと真実が入り混じった、幻惑の銀幕』

クアットロの手に陣が浮かぶ。

『シルバーカーテン発動』

幻術作用と電子制御の能力を持つ、クアットロのISがプラントを包み込んだ。



プラント内の比較的広い一室で、シルバーカーテンの発動を感じた男がデバイスを掲げた。

「インパルス、セットアップ」

『YES,SIR』

光が男に纏わり付き、腰にナイフのホルダーが付いた青と白の鎧に、同配色のブーツに男の姿を変える。

「ステラ…」



「はぁっ!」

ゼストが横薙ぎの一撃で蜘蛛型を破壊する。煙に乗じて逃走に成功したゼストと数名の部下だったが、次々に襲いかかってくる機動兵器の物量のせいで他の仲間とはぐれてしまった。

それでも仲間を信じ、ゼストはひたすらに来た道を引き返していた。

「もう少しで出口だ!」

「・・・」

一つも返事が無いことを怪訝に思ったゼストが振り返る。

「何だと!?」

振り返った先には付いて来ているはずの部下が1人もいなかった。

「なるほど、幻術か…」

『バレちゃいました?』

虚空に向かってゼストが呟くと、返ってくるはずの無い、答えが返ってきた。

「何時からだ?」

『貴方達が必死に走り回っている間にですよ~。あ、引き返しても無駄ですよ?』

甘ったるい声と軽い口調に内心イラつきながらも、ゼストは少しでも情報を引き出そうとする。しかし、そうする事さえ敵の予定内の行動のようで気分が悪い。

「わかっている…俺が幻術だと気付いた所で、伝える術が無い。電波障害も貴様の仕業か?」

『そこまでバレちゃいましたか。優秀ですねー』

この声が言っている事が本当なら、相当にタチの悪い能力を持っている。しかも、敵にはAMFまで有る。ゼストの額に薄っすらと汗が浮かんだ。

「随分ペラペラと喋るな?」

『だって、貴方はココまでですもの。シルバーカーテン、解除』

ゼストの目の前に一本の通路が現れる。通路の先には他とは意向が違う扉がある。

『その扉の先に貴方の相手がいますわ。貴方が彼に勝てたなら、私達は引き上げます』

ゼストは声の主に、彼の部下の命を掛けた決闘を申し込まれたのだ。

『どうしますか?あ、モチロン逃げても構いませんよ?』

自ら一騎討ちをしかけて来る以上待っているのは、かなりの強敵だろう…それに、素直に引いてくれる可能性も低い。

そこまで分かっていても、ゼストは騎士だった。投げられた手袋を見て見ぬ振りは彼にはできなかった。

ゼストは無言で通路を進み、扉を開いた。



ゼストが部屋に入って最初に感じたのは、濃くて重い殺気だった。

その殺気の元は部屋の中央にいた。血の涙を流す仮面に、騎士を思わせる鎧を身に纏った男。

「騎士ゼスト・グランガイツだな?」

仮面の男の声は、ゼストの予想外に年若い男のそれだった。

「そうだ。血涙の騎士、貴公の名は?」

「シン・アスカだ…アンタにも色々有るんだろうけど、死んで貰うぞ」

まさしく問答無用。シンの言葉にゼストも魔法で強化した槍を構え、気を五体に張り巡らせる。

「行くぞ、ゼスト!」

『C・サーベル』

シンの声に呼応するように、インパルスが魔力刃を作り出す。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ぬぅおおおおおおおっ!」

刃と槍が衝突した。



その頃、クイント、メガーヌが率いる部隊は延々と彷徨っていた。

メガーヌはサポートを得意とする魔導士。それ故に肌に感じる違和感の正体をつかむ事ができた。

「クイント、正面の壁殴ってみて」

「へっ?何で?」

突然のメガーヌの言葉に目を点にするクイント。

「いいから」

「わかったわよ…はっ!…え!?」

クイントが壁に向かって振るった拳が空を切る。ここまで来て、クイントにも状況が理解できた。

「やっぱり幻術ね」

「なるほどね…私達は掌の上だった、って訳か…」

話を聞いていた隊員達の顔に絶望がよぎる。クイントとメガーヌでさえも疲労を濃く浮かべているのだから当然かも知れない。

残りの魔力が少ないという事実が更に隊員達を落胆させた。

「どうする?」

「迷った時は、直進有るのみ!うりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

周りを、そして自分を振るいたたせる為にクイントは壁を砕き、その穴の中に飛び込んだ。



穴に全員が飛び込み、進む。

「…随分派手な登場だな」

その部屋はトーレが待ち伏せしている部屋だった。

「クイント…」

「ごめんなさい…」

『トーレ姉様、その部屋のAMFを最大にしました』

「感謝する」

トーレがISを発動させ、構える。

「メガーヌ…私が足止めするから皆を連れて逃げて」

クイントが殿を買って出ようとしたその時、

ドガァンッ!!

ゼスト隊を爆風が襲った。

「それは、無理みたいね…」

入ってきた穴から、チンクが姿を見せた。



刃と槍が接触すると同時に刃が砕け散り、シンは吹き飛ばされた。

理由は単純な魔力量の差。C・サーベルに込められた魔力はBB+、S+の魔力が込められたゼストの槍に触れれば砕けるのは、当然。

壁に衝突したシンが起き上がる。

「このままじゃ、勝負にもならないな…インパルス」

『SWORD   SILHOUETTE』

シンの姿が一瞬で変化する。鎧は赤と白に変色し、薄くなっていく。ブーツも動揺に変化し、最後に背中に二本の大刀が現れた。シンはその一本を手に取る。

『エクス・セイバー』

魔力が大刀を包み、両刃大剣となる。

「ランクが段違いだな…それが貴公の本当の力か?だが、それでも俺には届かん」

「…ランクの差は力の差じゃないって事、教えてやるよ」




一度は失った物。二度とは手に入らぬはずだった。
再び手に入れたそれを守るため、彼は悪の道を行く。

次回、魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~   第2話、炸裂する衝撃

その力、解き放て!インパルス



[29363] 第2話 炸裂する衝撃
Name: ガオ◆97564bd1 ID:3be99ad7
Date: 2011/08/20 16:53



魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~   第2話、炸裂する衝撃



シンの大剣とゼストの槍が火花を散らす。防御力を捨てて得た機動力を使ってシンはゼストに肉迫する。並の魔導士、騎士ならば既に切り捨てられていただろう。しかし、ゼストはオーバーSの騎士。スピードにまどわされる事無く正確に守り、シンを攻める。

ゼストはシンの失策を感じていた。大剣は悪手だ。折角のスピードが、大剣というデメリットによって脅威にならなくなっている、とゼストは考えていた。

ゼストがシンの速度に難なく対応できているのは、大剣という武器の性質上、大まかな動作での攻撃しかできず、またその巨大さ故に軌道が読みやすいからだ。

そして、シンもその事に気づいていた。

「なら、これだ!」

『ツイン・エッジ』

「行けっ!」

シンの両手にブーメラン型の魔力刃が現れる。シンはそれを交互にゼストに投げつけた。

それに対してゼストは、迫り来るツイン・エッジの一本目を回避し、もう一本を弾こうと右手に持った槍を振り抜く。

ガキィィィィィンツ!!

本来なら容易く弾かれるはずのツイン・エッジ。しかし、弾かれたのは槍の方だった。

「何だとっ!?」

「そこだぁっ!!」

体勢が崩れたゼストに大剣が振り下ろされる。ゼストは咄嗟にプロテクションを発動させるが、バターの様に切り裂かれる。

それでも生まれた0.1秒でゼストは無理矢理体を捻り、致命傷を回避する。



ー腕が宙を舞う



「…今ので腕一本か」

致命傷は回避した。しかし、その代償にゼストは左腕を失う事となった…遅れて血が飛び散る。

「ぐっ…!今のは…何だ?」

「…魔力変換資質<衝撃>」

管理局に長く務めているゼストでも聞いた事の無い変換資質。つまりは…

「レアスキル、か…」

「どういう呼び方でもいいが……もう諦めろ」

どこか憐れむようなシンの声。ゼストはそれを受け入れる訳にはいかなかった。

「…部下の、仲間の命がかかっている……ここで諦める訳にはゆかぬっ!!」

血を流し過ぎた所為か、霞む眼を見開き、ゼストは残った右腕で槍を握りしめ、シンに向けて突き出す。

シンは驚きながらもそれを捌く。しかし、ゼストはそれを見越していたかの様に槍を力任せに横に薙ぐ。槍はシンの横腹に当たり、シンは吹き飛び壁に激突した。激しい衝突音とヒビが入る音がした。

フラフラとシンが立ち上がる。
そこにゼストの決死の猛攻が襲いかかる。片腕とは思えない槍捌きでシンにダメージを与えて行く。

振り下ろし、横薙ぎ、突き、返す刀の振り抜き、そのどれもが必殺足りうる一撃。

だが、ゼストは言いようの無い違和感を感じていた。シンが一向に倒れないのだ。大剣の防御の無い箇所、死角や急所への攻撃。既に、意識を失うだけのダメージは与えているはずだった。

「…アンタは…」

槍の猛攻を受けながら、ポツリとシンが呟く。それは恐らく己にさえ聞こえないような小さな声。

だが、ゼストにはその声が届いた。体に走る悪寒から、ゼストは後ろに飛び下がる。

「アンタはオレが討つんだ!今日!ここで!」



キュゥイーーーンッ!!
ー何処かで紅い種が割れた。



シンの叫びに呼応するように、シンの体から爆発的な<衝撃>が広がった。ゼストは咄嗟に槍を構え衝撃を防ぐ。もしも悪寒に従わず、その場にいたならばふせぐ暇など無かっただろう。

普段なら聖王に感謝の一つでも言うのだろうが、今はそんな余裕は無い。目の前には先程の衝撃を起こした騎士が禍々しい深紅の大剣を携え、悠然と立っているのだから。

「…フルドライブか?否、その程度では無いな」

「・・・」

ゼストが、ふと気付いた時にはシンは消えていた。咄嗟に後ろに槍を突き出すと、弾かれた。振り返ると槍の穂先には大剣。

「ここに来て、まだ速くなるのか………ならば!」

ゼストは覚悟を決めた。今までの管理局員としての守る覚悟では無い。仲間の為に奪う覚悟を。

非殺傷設定を解除し、フルドライブを発動させる。管理局員としての誇りを捨て去り、騎士としての誇りを槍に乗せ構える。

「・・・」

応じるようにシンは剣先を水平に構えた。


両者は同時に爆ぜ、激突した。
深紅と山吹がぶつかり合い、交差点に魔力の奔流が溢れる。

ビシッ…ピシッ!バキィッ!!

大剣と槍は共に砕けた。支えを失ったシンとゼストが、前のめりに倒れそうになるが、互いの肩を掴み支え合う。

「俺の負けか…」

ゼストの視線の先、シンの左手には圧縮された魔力の塊。

「ああ、オレの勝ちだ。…今更だが、アンタとはフェアな状態で闘りたかった…」

「…まったくもって、今更だな」

シンの言葉に薄く笑いながらゼストが応える。

「騎士ゼスト…オレはこの闘いを、貴方の死を絶対に忘れ無い」

その言葉と共にシンは左手でゼストの体を突く。

『バースト・インパルス』

無機質な声が響き、ゼストの体を衝撃が蹂躙した。

「……すま…ぬ」

「死ぬ時まで、仲間の事か…」

シンはゆっくりとゼストの体を横たわらせ、瞼を下ろした。



「シン!」

「無事か!?」

トーレとチンクがシンの元に駆け寄って来る。怪我をしているが命に関わる物は無い様だ。それを確認したシンは地面に倒れこんだ。

「シン!?」

「シン!」

トーレが素早くシンを抱きかかえる。

「魔力を使い果たしたんだろう。気を失っているだけだ」

『シンちゃん、バースト・インパルスを使っちゃいましたからね~。ツイン・エッジで充分だったのに』

「そうか…無鉄砲な奴だ。だが、よくやったな…シン」

シンに語りかけるトーレの声はとても優しい物だった。





一つの戦いは終わった。戦士は次なる戦いの為、傷ついた体を癒す。

次回、魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~  第3話、星と欲望

その思い、守り抜け!シン!



[29363] 第3話、星と欲望
Name: ガオ◆97564bd1 ID:3be99ad7
Date: 2011/08/20 23:44



魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~  第3話、星と欲望



「ん…」

シンが眼を覚ましたのは半透明のカプセルの中だった。

目が覚めたらよく分からないカプセルの中でした。エイリアンに攫われでもしない限り、一般人は体験しない事だが、シンにとっては極普通の事だ。

「おはよう、シン。体の調子はどうかな?」

白衣を着た紫の長髪に金色の瞳の男、ジェイル・スカリエッティが操作端末を片手にシンに近づいて来た。

カプセルが空気の抜ける音と共に開く。

「おはよう、ドクター…変な改造して無いだろうな?」

「………そんな事より、お姫様が君の事を待っているよ。いや、昨日は大変だった」

ワザとらしく腕を組み、ウンウンと頷くスカリエッティ。

「…今の間は何だ?」

「君を運んでる所にバッタリとね。君の側から離れようとしなくて少し困っていたんだ」

「オイ、答えろ」

「今はセインの部屋で寝ているよ」

「…もういい」

余りにも噛み合わない会話に、シンの方が折れた。それを見たスカリエッティは真面目2割、シンの反応への不満3割、次の話への興味5割な顔をする。

「では少し真面目な話をしようじゃないか。テーマは、騎士ゼストとの闘い…かな?とくに最後の方だね」

「…終盤、ゼストに吹っ飛ばされたあたりから、意識が鋭くなる感覚がした。そのまま連撃をくらってる内に切れて、完全に意識がクリアになった」

ふーむ、と唸りながらスカリエッティが思考の海に沈む。スカリエッティが考え事をしている間に、シンはゼストとの死闘を思い出す。

ゼストは、鉄屑を相手にして魔力を消費しているとは思えない強さだった。付け加えるなら、片腕になってからの猛攻。アレはもう、人間の限界を超えていた。振り返ってみて、思う事は一つ。

『叶うなら面倒な物は全部無しで、もう一度闘いたい』

我ながら馬鹿な事を考えている、とシンが思考を振り払いスカリエッティの方を見る。ちょうど彼も思考を終えたようだ。

「まだ分からない事ばかりだが…以前教えてくれたSEEDと呼ばれる物だろう。魔力の暴発は予想外だったが、凄かったよ?発動中は何と平時から4ランクupだ!」

「それが問題なんだ…インパルスじゃ、アレを使いこなせない。今回で確信した」

「となると…やはり…」

「ああ。オレのもう一つのデバイスの完成を急いでくれ」

2人の見解は共通の物のようだ。インパルスは戦闘スタイルを変えられる優秀なデバイスだ。しかし、その反面、予め入力されていない事への処理能力が低く、SEEDを処理するだけの容量も無い。

つまりSEEDを活かすにはインパルスとは別のデバイスが必要になるという事だ。

「了解したよ。インパルスのサポートデバイスが完成したら、直ぐに取り掛かろう」

「頼む」

「では、次に…」

『ドクタ~』

通信ウインドウが空中に現れ、そこに映った水色の髪の女の子、ナンバーズの6番目であるセインが、弾んだ声でスカリエッティを呼ぶ。

「セイン、どうかしたかい?」

『シンまだ寝てる?』

「オレだ。セイン、何か用か?」

自分の名前が出た事で、シンが反応する。カプセルに寝転んでる状態の為、映像は見れないが、声でセインだと判断したようだ。

『何だ~…起きちゃってたの?』

「起きて欲しく無かったような言い方だな…?」

『シン、眠れる森の美女って知ってる?』

「何だよ急に?…知ってるけど?」

突然のセインの質問に、訝しみながらも、シンが答える。

『ステラ、知らなかったみたいなんだよね』

「おい、まさか…」

『んんっ!「ステラ、シンの王子様になる」って、言って私の部屋から飛び出して行っちゃった』

シンはステラの名前が出た時点で、セインが変な事を吹き込んだろうと予想はしていたが、ステラが王子様役を志願したのは、流石に予想外だったようだ。

ちなみに、ステラの声真似は以外に上手だった。

「お前…ワザとだろ?まあ、起きているから良いけどな」

「セイン、それはどの位前かな?」

『へ?えっと、通信のちょっと前です』

黙って2人の話を聞いていたスカリエッティが急にセインに尋ねる。その時のドクターは、それはそれは楽しそうな笑顔だった。後にセインはそう語った。

「そうか…」

スカリエッティの呟きに嫌な予感を感じたシンはカプセルから出ようとする。しかし、一歩遅かった。

「オイ!カプセルを閉めるな!…このガスは何だ!?」

「ただの睡眠導入剤さ。体に害は無いよ」

「待て!SEEDの事とか、オレの体の事とか、まだ話す事が有るだろ!」

「シン、君はまだ疲れているだろう?そんな事は後にして…ゆっくりと休んでくれ。大丈夫、私は出て行くさ」

「そういう問題じゃ無い!…クソ…眠るな…オレ…」

シンが襲い来る眠気に耐えてるのを見て、スカリエッティはウーノに通話を繋ぐ。

「ああ、ウーノかい?ミーティングルームに皆を集めてくれ。うん、最優先だ。ああ、ありがとう」

「…ジェ…イル……憶え…と…け……」

「安心してくれ。ここから先、一秒たりとも忘れない事を誓うよ」

シンが眠ったのを確認したスカリエッティは素早くドアを出る。目的地は当然ミーティングルームだ。

『ドクター、ガス使ったら上手く起きないんじゃない?』

すっかり空気になっていたセインが疑問をぶつける。

「ん?大丈夫さ。ステラが来るまでの時間を計算してガスを薄めておいたからね」

『・・・流石』

何を当たり前な事を、と答えるスカリエッティにセインはちょっと引いていた。

「さあ、セイン。君も急ぐんだ。皆でゆっくり鑑賞しようじゃないか」

珍しく廊下を走るスカリエッティの顔は子供の様な笑顔だった。





「シン、怒ってる?ステラ、悪い子?」

ステラと手を繋ぎ、顔を真っ赤にしたシンと不安気にシンの顔を見上げるステラ。


何が有ったかは当事者2人とそれを見てニヤニヤしていた8人の計10人しか知らない。今の所は。

ただ、スカリエッティとウーノ、クアットロは至る所にデータのコピーをしていた。それが何に使われるかは想像に難くない。


ステラを安心させる為、笑顔でシンは答える。

「ステラは悪くないよ。悪いのはドクターだ」

「ドクター?」

「そうだよ。今度ドクターに会ったら、長髪気持ち悪いって言ってね?」

さり気なく嘗ての上司と親友を否定しているのだが、シンは気付いていないようだ。

「わかった」

ステラも某仮面の事はすっかり忘れているのか、あっさり承諾した。

ステラはスカリエッティ家のアイドルポジションだ。クアットロでさえも、ステラの事を純粋に可愛がっている。

そのステラに気持ち悪いと言われる事が、どれだけのダメージを生む事か…スカリエッティがどんな表情をする事か…

そこまで想像したシンは満足気に頷き、ステラとデートに行く事にした。

「それじゃあ、パフェ食べに行こうか。ステラが行きたいって言ってた所」

「ホント!?シン、早く行こう!」

「あ、ゴメン。忘れ物したから先に転送ポート行ってて」

「むー、わかった。早く来てね?」

「うん。直ぐに行くよ」

ステラが角を曲がり見えなくなった所で、シンは全速力で走り出した。目的地はミーティングルーム。薄れゆく意識の中でスカリエッティの言葉をシンは聞いていたのだ。

見ていた事の罰はステラの一言で許す事にしたが、録画していた罪は肉体言語で与えることにしたシンだった。



「クアットロ、そっちはどうかな?」

「はい、後続の妹さん達用の編集は完了しました」

「こちらも、最高の映像を繋ぎ合わせた完全版ができた…よ」

視線を感じたスカリエッティが振り返る。ドアの窓からシンが中を覗きこんでいた。

「よお、ジェイル楽しそうだな?…何だ、クアットロも居るのか。手間が省けていいな」

ドアが開き、紅い眼の鬼が中に入る。
編集作業をしていた、マッドとメガネの悲鳴がアジトに響いた。




欲するはチカラ。守るための、そして奪う為の。彼は古代の遺産を求める。

次回、魔法少女リリカルなのは~REJECT DESTINY~  第4話、古の力

新たなチカラ、探し出せ!インパルス!



あとがき

スカリエッティ&ステラ登場。あとセインも。
ステラは気付いたら出て来てました。既に登場済みかのようなナチュラルっぷり。

作者はスカリエッティや武装錬金のパピヨンのようなキャラが大好きです。


…スカリエッティのキャラ、出せてるかなぁ?



[29363] 設定(でるたび追加)
Name: ガオ◆97564bd1 ID:3be99ad7
Date: 2011/08/20 23:58
設定

人物だったり魔法だったり。

シン・アスカ

年齢:19 血液型:O
身長:177cm 体重:68kg

好きな物:
ステラ、ナンバーズ、所持デバイス、甘い物、犬

嫌いな物:
ステラに害を与える全て、綺麗事、軍隊、苦い物、辛い物、猫

所持デバイス:インパルス
ランク:変動型

趣味:ステラ鑑賞、ロストロギア集め、読書

能力:魔力変換資質<衝撃>、SEED
 

CE世界から跳ばされて来た。

ステラの為なら火の中、水の中。
冷酷無比、極悪非道にもなれる。

ステラがナンバーズを家族として見ている事と、ジェイルがステラの治療をしてくれた恩からジェイルサイドにつく。

戦闘スタイルは、状況や敵に合わせて戦い方を変える万能タイプ。


インパルス
シンの専用デバイス。跳んで来た時既にシンが持っていた物。魔法と機械の完全融合をコンセプトにジェイルが改造。

そのため、セットアップ時にシンが装着するのはモビルジャケットと呼ばれる。機械としての別枠のエネルギーで、魔力無しでも稼働できる。

ノーシルエット
インパルスの基本形態。

魔力量(M):1000

基本値(N):空戦CC、陸戦B+、海戦Cー
最大パワー(P)B+、最硬ディフェンス(D)CC、最速スピード(S)BB+

使用可能魔法
C・サーベル
ランク(R):BB+  レンジ(r):0.5〜1.5m  消費魔力(c):100  
魔力の刃を作り出す。サイズは使用者の任意。

C・ナイフ
R:CCC+  r:65cm  c:30  
装備のナイフを魔力で強化する。不意打ち程度にしか使えない。

装備:高速振動ナイフ×2   モビルジャケット  腕部内蔵マシンガン


ソードシルエット
インパルスの接近戦形態。全形態で最も装甲が薄い。

M:1500

N:空BB+、陸A+、海C
P:AA+  D:BBー  S:AA

使用可能魔法
エクス・セイバー
R:AA+  r:2.2m  c:250  
魔力の両刃大剣を生み出す魔法。ランクB以下の魔法では防御不可。使用時に注いだ魔力が尽きるまで消えない。

ツイン・エッジ
R:B+ r:30m c:100
二本のブーメラン型の魔力剣を飛ばす魔法。独特な軌道を描き、微弱な追尾効果を持つ。

ツイン・エッジ・シューター
R:BBー  r:50m  c:150
ツイン・エッジの発展系。インパルスのコントロールにより魔力が尽きるまで、的を襲う。

ブラスト・ショット
R:C  r:50m  c:4×発射数
3cmの魔力弾を連射する魔法。あくまで、牽制程度。

装備:エクスカリバー 隠し腕  モビルジャケット


<衝撃>使用時には必要消費魔力×1.5。

SEED発動時には基本ランクと使用可能魔法のランクが4ランク上昇。
エクス・セイバーならAA+からSーに。


全シルエット使用可能魔法

バースト・インパルス
R:S+  r:60cm  c:ALL
残存する全ての魔力を<衝撃>に変換し、掌に圧縮。ターゲットに触れた時点で、炸裂する。
最後の切り札なのに魔力が少ない終盤では威力が低く、序盤では気絶するため使えない。シンのお気に入りだけど微妙な魔法。


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