チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[29367] 【習作】MUVーLUV MARK OF THE WOLVES(餓狼伝説×マブラヴ+α)
Name: ジャンバラヤ◆998e713a ID:bc819dc3
Date: 2011/08/19 23:18
 終わりというのは、思っていたよりもあっけなく、郵便物でも届くかのような気軽さで訪れるものだと実感する。

 同居人の飯でも作ろうかと愛車であるHONDAのバイクを走らせて買い物を終えたその矢先、それは起きた。

 買い物に少し時間をかけてしまった為、急いで帰ろうとスピードを上げていたのが災いした。 道路に突然ボールを追いかけてきた少女が飛び出してきたんだ。

 とっさにブレーキとアクセルを操り、車体の進行方向を強引にずらした。 しかし、タイヤのグリップが摩擦係数以上の力を受けてしまったために、バイクと俺は横倒しになりながら道路を滑っていく。

 バイクと道路が擦れながら火花を散らしていく中、そして夕暮れが徐々に町を染めていく中、一際明るい光を見た。

 それは、しぶとく世界を照らし続けたい太陽でも、これからが稼ぎ時だという風俗店のネオンでもない。

 低いうなり声をあげながら徐々に迫りくるそれは、おそらく、俺が思っているよりもずっと速くこちらに近づいているはずだ。

 勢いが衰えないまま反対車線に滑り込んだ俺を正面から待ち受けていたのは、クラックションを盛大にならし続けるダンプカーだった。


 車体と道路に挟まれている俺は動くに動けず、ダンプカーとの相対距離は瞬きするほど近くなる。


「・・・・・・っ」


 なんというあっけない終わり方だ。 いや、人の一生なんてそんなものかもしれない。 
 この町じゃ、生き方も死に場所も、個人が選べるように出来てないのだから。


 ・・・・・・そうさ。 逆に、今までが激しすぎたんだ。 終わるときはこれくらいぱっとしたものでも、悪くない。



 そうだよな、母さん。



 ただ、腹を空かせた伝説の狼が心配しないかと、それだけが気がかりだった。



「テリー・・・・・・っ」



視界の全てが白色に染まり、五感と意識は自分の手からすり抜けていった。 痛いと感じる事も、眩しいと思うことも・・・・・・。





その日、サウスタウンからもっとも名の知れた男の血を引く男が消えた。






MUVーLUV MARK OF THE WOLVES 序章 END




[29367] MUVーLUV MARK OF THE WOLVES 第二話
Name: ジャンバラヤ◆998e713a ID:bc819dc3
Date: 2011/08/19 21:09
 父は・・・・・・父親とさえ認めたくはないが、ろくでもない男だった。

 地位も、金も、権力さえもその手中に収めてはいたが、情なんてものはいっさい持ち合わせてはいなかった。

 確かに、父は確かに、その町を支配していた。

俺が七歳の時、病弱だった母さんが危篤となった際に、俺は形振り構わず助けを求めた。 いくら嫌ってるとは言っても、ガキである自分に出来る事なんて限られている。 その中でも、もっとも母の助かる可能性があり、身近な手段である父親を頼ったんだ。

だが、あいつはまるで他人でも見るかのように俺を見下し、母についてさえ一言も漏らさず、俺を追い返した。


母が死んだ後でさえ、音信はなかった。


だから、俺はアイツ・・・・・・、ギース・ハワードを恨まなかった日はない。


母を苦しめたあの男を。
アイツの血のせいで苦しむ度に思い出す。

あの時、助けを求めに行った日に見せた、親父の最後の顔を。


そんなアイツが死んだという知らせを聞いた時、自分でもどうしてかは分らないが、激情が振りすぎたコーラの缶のように体の奥底から溢れでてきた。

その怒りの矛先が、息子のように俺を育ててくれたテリーに向けられたのは、今となっては懐かしい思いでだ。
あれが本当に俺の感情だったのか、それとも、あの男の血がそうさせたのかは分からない。
もう・・・・・・十年も前の話しだ。



今やったら、きっといい勝負になるんじゃないか?
あの日から、お互い年をとった。 俺はきっと今が最盛期。 ファイトの手ほどきはあんたからみっちりと仕込まれた。 加えて、表にでたがっている“アイツ”の血の力は、なかなか見れたものなんだぜ?

まだ翻弄される時はあるが、すぐに大人しくして見せるさ。


いつまでもルーキーだなんて呼ばせないぜ、テリー。



今なら、追い続けていた背中にきっと手が届く。 俺の手もずいぶん大きくなっただろ?

さぁ、一勝負といこうぜ。


 眩しいほどの光の中に見えた伝説の狼の背中。

 そこへとおもむろに手を伸ばし・・・・・・。







「・・・・・・」

 横たわりながら宙空に手を伸ばしている事に気がついた。

 涼しさを感じる風が頬と髪をなでる。
 視線の先、手を伸ばしている向こう側には、空を埋めつくさんとしている星空が広がっていた。

「生きてるのか?」

 でなければ、随分とイメージとは違うあの世だ。

 間違いなく、あの時俺はトラックに突っ込んだ。 助かるようなタイミングでもなかったはずだ。

 地面に手を突いて上半身を起きあがらせる。
 手から伝わる感触は舗装されたアスファルトの道路などではなく、草と土。
 天国の様な柔らかい雲の上でもなければ、地獄のような灼熱の溶岩地帯でもない。
 まぁ、どちらも行った事などないが・・・・・・。

 視線を自分の体へと向ける。
 あれだけの大事故だというのに、自分はどうやら五体満足のようだ。

 多少擦り傷は手のひらにあったものの、バイクが横転したときに負ったものだろう。

 トラックが避けてくれた・・・・・・? そんな暇はなかったと思うが・・・・・・。 

「そうだ、バイクは・・・・・・」

 辺りを見回す。 あるかどうかも分からないそれは、意外とすぐ近くにあった。

 ただ、それは既に走る能力の大半を失っていた。
 俺と同じように、無傷とはいかなかったみたいだな。

 車体は所々塗装がはげ、ハンドルは歪み、前輪はタイヤがパンク。  テールランプは砕け、数えるのが億劫なほど細かい傷が全体にわたってついていた。

「くそ・・・・・・」

 やっぱり、夢なんかじゃなかったんだ。
だけど、だとしたらどうして俺は無事なんだ・・・・・・?

 いや、そもそもここはどこだ?

 サウスタウンにもセカンドサウスにも、こんな場所あったか?


 俺は立ち上がり、周囲を見渡す。
 眼下には溢れんばかりの光を湛えた町が見える。 少なくとも、人は身近にいるようだな。

 だが、今いる場所からは行けないようだ。 迂回する必要がある。

「・・・・・・」

 バイクは、今は置いていくしかない。
 大切な相棒だが、押して引きずっていくよりも、レッカーしてもらう方が早いだろう。 生憎と、携帯電話は持ち合わせてなどいない。

 後ろ髪を引かれるが、どうしようもないことだと割り切るしかない。

「はぁ。 テリーが本当の餓狼になる前に帰らないと・・・・・・」

 溜息を一つ吐き、今頃腹を空かせているだろう伝説の狼の事を思い、その場を後にした。

 唯一つ変わらないのは、空から人々を見下ろしている星空と欠月位なものだった。



MUVーLUV MARK OF THE WOLVES 第二話 END


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.00345492362976