ニセ被災者、タダでホテル暮らし１か月

　東日本大震災の被災者と偽って東京都内の受け入れ先ホテルに約１か月間、無料で宿泊したとして、警視庁東京湾岸署は１９日、詐欺容疑で、東京・西東京市ひばりが丘の無職・井上龍二容疑者（３５）を逮捕した。福島県内で被災したとウソの申し込みをし、７月初めからタダでホテル暮らし。一方、同様の手口で都内の公務員宿舎の部屋にも入居申し込みをし、こちらは第三者に部屋をまた貸しして家賃収入十数万円までせしめていたとみられる。

　家に住めなくなった被災者を無料で受け入れる特例措置。これを悪用した“ニセ被災者”は、１か月間のホテル暮らしだけではなく、別の受け入れ先を勝手に“また貸し”して家賃収入を得るという手口で、詐欺を重ねていた疑いがある。

　東京湾岸署によると、井上容疑者は６月２７日、東京・千代田区内のホテルにある被災者相談受付でウソの申請をし、中央区日本橋のホテルに宿泊した疑いが持たれている。「福島・下郷町で被災した」と申請し、さらに「自分と内縁の妻と義父」の３人での入居希望を出していた。実際には福島県に住んだこともなく、義父も内妻も存在していなかった。同署では、申請が通った経緯等も調べている。

　１人分の料金が通常１泊約６０００円の１部屋（３人用）の提供を受けた同容疑者。７月２日から自分１人で宿泊し、同月３１日泊分まで約１か月、ホテル暮らしをしていた。被害金額は６０００円×３人分×３０泊で、５４万円。ホテルは、大浴場も付いたタイプだった。

　これだけではない。勝手に“大家”にもなりすましていた。ホテルの申請を行う前の６月上旬、同容疑者は、同様にしてウソの申請を行い、被災者を受け入れていた東京・江東区の公務員住宅を２部屋、無料で借り受けた。こちらには住まず、インターネット上に「入居者募集」と書き込み。それを見て応募してきた第三者の女性に、２部屋のうち１部屋を貸し出し。十数万円を家賃として受け取っていた疑いがある。女性が住んでいたのは７月上旬ごろからとみられる。

　８月１日に、公務員宿舎の管理側が部屋の移動を求め、同容疑者と女性との間でトラブルが発生した。同容疑者が部屋に入り込み退去を要求したため、女性が警察に通報。湾岸署が住居侵入容疑で井上容疑者を逮捕した。背景を調べ、ホテル宿泊詐欺も発覚した。詐欺容疑の調べに、同容疑者は「逮捕容疑に一部理解できないところもあり、あまり分かりません」と否認しているという。