政府と東京電力は福島第1原子力発電所の事故収束に向けた工程表の改訂版を発表した。原発から出る放射性物質はかなり減ったものの、原子炉はまだ十分に冷やせていない。政府は原発から20キロ圏外の緊急時避難準備区域の解除に踏み切る方針だが、それには周到な備えが要る。
原発敷地境界の放射線量は年0.4ミリシーベルトの水準にまで下がったと推定される。工程表が目指す年1ミリシーベルトを切った。その一方で、肝心の原子炉の冷却は足踏みが続く。とくに2、3号機の圧力容器下部の温度は100度以上のままだ。1カ月前とほとんど変わらない。
汚染水を浄化して冷却に再利用する循環注水システムが故障続きで思うように稼働しなかったためだ。処理能力を超える汚染水の増加を防ぐため冷却水の注入量を絞った結果、十分な冷却ができなかった。18日から東芝製の浄化装置が稼働して浄化能力が増し、冷温停止を目指せる態勢がようやく視野に入った段階だ。
また、溶け落ちた核燃料がどこにあるのか正確にわかっていない。多くの専門家が指摘するように圧力容器から下に落ちているなら、容器が100度以下になっても安心だとは言い切れない。
仮に余震などで冷却が中断したら何が起きるか。原子力安全・保安院が試算し、核燃料が再溶融しても15時間以内に冷却を再開すれば、原発から20キロ圏外には新たな汚染の危険は及ばないとの見解を示している。
この判断を一つの根拠に、政府は9月上旬にも緊急時避難準備区域を解除する方針だ。除染作業や生活インフラ再建の見通しを示す「復旧計画」を自治体ごとにつくることが解除の条件という。
これに加えて、緊急時の情報伝達や避難の方法を整え、周知する必要がある。準備区域は住民約5万7千人のおよそ半数が避難している。解除への住民の期待は大きいが、不測の事態への備えも要る。放射能の拡散実態を知らされぬまま、住民が避難を強いられた事故直後の混乱を繰り返すことは避けたい。
工程表は放射線の測定や管理にあたる人材の育成も課題にあげた。作業員の健康や安全管理に必要だ。官民一体となって取り組んでほしい。
東京電力、福島第1原子力発電所、原子炉、東芝
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