合理的だが、つながりは薄い
大人を追いつめる職場での“置き去り感”
昔の商店主は、個人的に関係を築き上げ、顔がつながっている相手に、人付き合いの中で商品を買ってもらっていた。
「この営業担当者は、いい人だから、商品を買ってあげよう」
それが、いい悪いは別にして、古き良き時代の小売現場のスタイルだった。
しかし、コンビニに変わったとたん、人のつながりは、あまり関係なくなった。
そもそも、コンビニの仕組みは、フランチャイズ化されている。この商品を置くと、どのくらいの数が売れているというデータ的な裏付け根拠に基づいていて、どの位置を取るかですべてが決まってくる。
結果しかない仕組みは、合理的ではあるが、そこに情緒的なつながりは薄い。機械的で事務的な関係は、孤立を生みやすい職場であるともいえる。
ある企業では、すべてフリーアドレスに変えた。つまり、オフィスには管理部門の席は残るものの、多くの人に自分の席はない。
皆、空いている席に自由に座る。図書室のように。固定電話もなく、すべて携帯で対応する。
小さいロッカーだけは与えられる。だから、各自、自分の荷物はロッカーにすべてしまって帰宅する。
また、会社で新しい事業が始まっても、社内のスタッフには知らされない。そうした会社の情報は、自社のHPを見て、知ったりする。直接、居場所がないことを実感する瞬間だ。
会社の中で起きている変化が伝わって来ない。中には、新しい職員が入ったり、同僚が辞めたりしても、知らされない会社もある。
自分と会社をつなぐものは、1枚の名刺だけ。職場に居場所はないと感じる人たちの、そんな置き去り感も、新たな引きこもりを生む遠因につながっているのかもしれない。
8月28日(日)開催
3.11震災チャリティイベント
ネコ女優micひとり舞台「カントリーロード、 石巻・牡鹿半島」×『ふたたび、ここから 東日本大震災・石巻の人たちの50日間』トークショーに出演いたします。
詳細はこちら→http://www.kazumic.com/schedule/index.html
拙書『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)が発売中。石巻市街から牡鹿半島の漁村まで。変わり果てた被災地を巡り、人々から託された「命の言葉」をつづるノンフィクションです。ぜひご一読ください。