カラダ講座
「引きこもり」するオトナたち
【第77回】 2011年8月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
池上正樹 [ジャーナリスト]

いまや就職氷河期世代が引きこもりの中核に!
存在を顕在化させた“バブル崩壊の罪”

previous page
4

合理的だが、つながりは薄い
大人を追いつめる職場での“置き去り感”

 昔の商店主は、個人的に関係を築き上げ、顔がつながっている相手に、人付き合いの中で商品を買ってもらっていた。

 「この営業担当者は、いい人だから、商品を買ってあげよう」

 それが、いい悪いは別にして、古き良き時代の小売現場のスタイルだった。

 しかし、コンビニに変わったとたん、人のつながりは、あまり関係なくなった。

 そもそも、コンビニの仕組みは、フランチャイズ化されている。この商品を置くと、どのくらいの数が売れているというデータ的な裏付け根拠に基づいていて、どの位置を取るかですべてが決まってくる。

 結果しかない仕組みは、合理的ではあるが、そこに情緒的なつながりは薄い。機械的で事務的な関係は、孤立を生みやすい職場であるともいえる。

 ある企業では、すべてフリーアドレスに変えた。つまり、オフィスには管理部門の席は残るものの、多くの人に自分の席はない。

 皆、空いている席に自由に座る。図書室のように。固定電話もなく、すべて携帯で対応する。

 小さいロッカーだけは与えられる。だから、各自、自分の荷物はロッカーにすべてしまって帰宅する。

 また、会社で新しい事業が始まっても、社内のスタッフには知らされない。そうした会社の情報は、自社のHPを見て、知ったりする。直接、居場所がないことを実感する瞬間だ。

 会社の中で起きている変化が伝わって来ない。中には、新しい職員が入ったり、同僚が辞めたりしても、知らされない会社もある。

 自分と会社をつなぐものは、1枚の名刺だけ。職場に居場所はないと感じる人たちの、そんな置き去り感も、新たな引きこもりを生む遠因につながっているのかもしれない。

8月28日(日)開催
3.11震災チャリティイベント
ネコ女優micひとり舞台「カントリーロード、 石巻・牡鹿半島」×『ふたたび、ここから 東日本大震災・石巻の人たちの50日間』トークショーに出演いたします。
詳細はこちら→
http://www.kazumic.com/schedule/index.html

拙書『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)が発売中。石巻市街から牡鹿半島の漁村まで。変わり果てた被災地を巡り、人々から託された「命の言葉」をつづるノンフィクションです。ぜひご一読ください。

世論調査

質問1 バブル崩壊前と崩壊後、どちらの方が働きやすかった?




>>投票結果を見る
previous page
4
カラダ講座
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング

話題の記事

週刊ダイヤモンド

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約14冊分お得です。さらに3年購読なら最大45%OFF。

ハーバード・ビジネス・レビュー

詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。

ZAi

詳しくはこちら

年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。

Keyword
Information

池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。新聞、月刊誌、週刊誌で、「心の問題」「住環境」などの社会問題をテーマに執筆。1997年から「ひきこもり」を巡る取材を始める。著書は、『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『「引きこもり」生還記』(小学館文庫)など。2011年6月には最新刊『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)を上梓。


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

⇒バックナンバー一覧