福井県の総合ニュースサイト 福井新聞オンライン


全国の速報

福井のニュース  論説

児童ポルノ大国の恥 単純所持でも規制は必要

(2011年8月19日午前9時00分)

 どんなに取り締まりを強めても児童ポルノ画像は次々わいてくる。愛好者グループの執拗(しつよう)さにあきれる。主要国(G8)並みに単純所持でも禁止できないものか。

 児童ポルノ所持の規制強化は政権交代のあおりでたなざらしになってきた。民主党は今月初め、児童買春・ポルノ禁止法改正案をまとめたものの、焦点の単純所持禁止に踏み込まなかった。通信の秘密、表現の自由、捜査権の乱用を招く恐れがあるとの慎重論が根強いからだ。有償かつ反復して取得した場合に限り処罰対象とする「取得罪」の新設を掲げるが、あくまで禁止を主張する自民、公明両党とは隔たりが大きく、今会期中の合意は難しいという。

 見るに堪えない画像がインターネット上で複製、拡散しているのは子どもの被害が半永久化する深刻な事態と、警察は危機感を強めている。主要国の中で単純所持を禁じていないのは日本とロシアだけ。両国が他国の児童ポルノ愛好者の抜け道になっており、国際的に批判が集中するのは当然である。

 4月に始まったサイトへのアクセスを強制遮断する「ブロッキング」は現行法内で対処できる切り札と期待されたが、効果は限定的なようだ。ファイル共有ソフトを使う抜け道がそれ以前から指摘されていた。サーバーを通さず個人のパソコン同士で画像データを交換できる。しかも流した者が特定されにくい匿名性があり、流通を助長する一因になっている。

 これを規制するため警察庁は昨年からファイル共有ネットワークを巡回して流出元を特定する「P2P観測システム」の運用を始めた。同年12月には福井県警が共有ソフトを使った児童買春・ポルノ禁止法違反の県内容疑者を初摘発している。

 今年6月までに全国で摘発された児童ポルノ事件は649件。455人を逮捕、書類送検した。被害児童は310人。いずれも統計を取り始めた2000年以降、最多の数字である。

 最近は運動会や水泳大会にまで入り込んで子どもの写真を撮るケースもあり、被害児童の低年齢化が憂慮される。需要側の問題では済まない事件もあった。関東では昨年、自ら裸画像を売った女子高校生らが逮捕された。犯罪行為であることをしっかり教え込む必要がある。

 児童ポルノは性的虐待の記録がずっと残る。子どもを守るために日本ユニセフ協会は単独所持の禁止は必要と強調する。規制は、匿名で自由に情報をやりとりできるネットの良さをスポイルしかねないため、トラブル防止の法的対応を整えておくことは大切だ。悪用を避けるための慎重な運用に配慮したい。

 児童ポルノ大国などという恥は振り払わねばならない。性的行為を強制される子ども画像を所持して喜ぶような破廉恥を取り締まれないなら、大人が子どもをきちんと守れない危機的状態といえる。

福井のジャンル

ニュースランキング

弔電サービス「わたっくす」

ぷりん

福井新聞文化センター 風の森倶楽部


〒910-8552 福井県福井市大和田町56

TEL:0776-57-5111

本ページに掲載の記事・写真などの一切の無断掲載を禁じます。