プロダクトプレイスメントという宣伝広告手法をご存知だろうか。テレビドラマや映画などに企業の商品・ロゴを登場させることで、消費者に商品を印象付け、認知向上を狙うものだ。代表的な例としては、映画「007」シリーズで、ジェームス・ボンドが乗るさまざまなハイテク機器を搭載した車がある。この車は注目度が高いため、劇中で使われた車種とそのメーカーにとっては広告効果がかなり期待できる。加えて、ドラマや映画の世界観の中で商品を紹介できるため、消費者は商品に感情移入しやすいというメリットもある。

 国内でもさまざまな作品で、プロダクトプレイスメントが行われているが、成功事例が多いとは言えない。理由はドラマであれ映画であれ、監督など制作サイドがプロダクトプレイスメントに積極的ではないケースが多いからだ。作品の世界観が損なわれると危惧するのは無理のないことだろう。このため、登場する商品があまりにもさりげなさ過ぎて、視聴者の印象に残らないといった事態を招く。企業からしてみれば“広告商品”として購入したプロダクトプレイスメントの有効性に疑問を持ってしまう。

 そんな中、プロダクトプレイスメントで大きな成果を上げている映画が『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE』だ。CGクリエイター、FROGMANが手掛けるアニメ作品で、その特長はWebサイト向けの動画作成ツールとして一般的なFlashを活用している点。低予算で映像作品の製作が可能だ。

 その半面、登場人物である鷹の爪団の総統や島根の吉田君、レオナルド博士はマジックで書かれたイラスト風となっている。通常のアニメのような凝った背景や登場人物の写実性にはまったくこだわっていない。それでも、総統や吉田君の会話のやりとりが面白く、時事ネタや名作映画などへのオマージュが頻繁に登場するためか、『秘密結社 鷹の爪』の宣伝を担当するエレクトロ89によれば「コアなファンは30〜40代」という。

 『秘密結社 鷹の爪』は2006年にアニメ『THE FROGMAN SHOW』の一部としてスタート。視聴者の爆笑を誘い、07年には劇場版第一弾『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE〜総統は二度死ぬ〜』が公開された。この第一弾からプロダクトプレイスメントを全面的に採用したことで、話題を呼んだ。

 08年には第二弾『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II』を公開した。この作品では、サブタイトルのネーミングライツも販売し、サントリーが購入。サブタイトルは『〜私を愛した黒烏龍茶〜』に決定した。そして第三弾『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE3 〜http://鷹の爪.jpは永遠に〜』が1月16日から公開される。もちろん、サブタイトルには、協賛社、日本レジストリサービスの商品である「.jp」が入っている。

 劇場版第一弾でプロダクトプレイスメントに協力した企業は22社。同様に第二弾は24社、第三弾も20社と、毎回20社以上の企業が映画の中に入り込んでいる。今回、劇場版『秘密結社 鷹の爪』のプロダクトプレイスメントの仕掛け人である電通の亀田卓氏に広告会社が映画に出資する意味やプロダクトプレイスメントが成功した理由などを聞いた。亀田氏は、日本ではまだまだ「水と油」と思われがちなエンタテインメント業界と金融業界を融合させるべく、日本で初めてイベントの証券化などに取り組んだ人物だ。

『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE3 〜http://鷹の爪.jpは永遠に〜』
監督・脚本・キャラクターデザインなど:FROGMAN/声の出演:川村ゆきえ、FROGMAN、相沢舞、板東英二、もう中学生、堂真理子(テレビ朝日アナウンサー)、坂本頼光ほか/配給:DLE/1月16日TOHOシネマズ系にて公開/公式サイト:http://鷹の爪.jp/
(C)「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE3」製作委員会(画像クリックで拡大)