浜松市天竜区の天竜川で川下り船が転覆し、2人が死亡、3人が行方不明になっている事故で、船尾で操船していた船頭の北橋国幸さん(66)=行方不明=は、今年4月に小型船舶操縦士の免許証を取得したばかりだったことがわかった。実際の操船歴は3カ月半ほどで、船を運営する天竜浜名湖鉄道(同区)の幹部は「指導役のベテラン船頭が十分な操船技術があると判断したが、経験不足が事故につながった可能性も否定できない」との認識を示した。
また、同鉄道は19日朝の記者会見で、転覆事故を想定した訓練をせず、対応方法を定めたマニュアルもないことを明らかにした。同鉄道は「転覆事故が起こるとは思っていなかった。安全管理の認識が甘かった」と話した。
同鉄道と国土交通省中部運輸局などによると、川下り船には2人の船頭が乗船。船尾の船頭がエンジンの使用や針路決定などの操船を行い、船首の船頭は乗客への観光案内や操船の補助を担う。営業目的の川下り船で船尾の船頭を務めるには、2級小型船舶操縦士の「湖川小出力限定」(5トン未満)の免許証取得と、小型旅客安全講習課程の修了が必要。北橋さんに営業可能な免許証が交付されたのは4月だった。
同鉄道は当初、北橋さんの船首を含めた船頭歴を約3年と説明し、船尾は今年3月からとしていた。しかし、朝日新聞の取材に、ベテラン船頭に付き添われて船尾を始めたのは5月で、1人で任されたのは6月からだったと説明した。同鉄道の船頭22人のうち、船尾で操船できるのは8人で、北橋さんの経験が最も浅いという。