日本は中学1年生から英語を教育しているのにもかかわらず、大学を卒業しても英語圏の5歳児ともまともな会話ができない人が多い。
なぜか。
実は、日本という国自体が英語会得の阻害原因になっているのをご存知だろうか。ここでは、日本がなぜ英語教育に向かないかを述べよう。
1.英語の教育方法
日本では訳読方式という方法で英語を教育している。「訳読方式とはなんぞ?」、と思った方は、ご自分の中高生時代を思い返してほしい。英語の授業は、教科書や黒板に書かれた英文をひたすら訳して覚える教育ではなかったか?この教育方法が訳読方式である。英語を日本語で学ぶやり方だ。
翻訳家を目指すのなら、訳読方式は最適な教育方法だ。だが、喋ることを主眼とした場合、訳読方式は向いてない。英語を 話す・聞く 練習をしないからだ。というか英語のオーラルがまったくできない教師がたくさんいる。筆者は何人も見てきた。まったく英語が話せない教師の下で英語を学んでも、話せるようになるわけがない。
さらにこの訳読方式、実は訳している内容が実践的でなかったりする。
例えば、日本人なら誰でも知っている有名な “This is a pen” というフレーズがそうである。
考えてみてほしい。「これはペンです」というフレーズを 日 本 の 日 常 生 活 で 使 う こ と は あ り ま す か ?
2.英語を必要としない環境
皆さんはどのようにして日本語が話せるようになったかを思い出してほしい。最初の段階では、親が発する言葉を聞いて、その言葉を必死で真似てできるようになったのではないか?そして、学校へ通い、新しい言葉を学び、日本語が上達したのではないか?つまり、言語というのは、恒常的に使い続けることによって会得、上達する物である。
次は、皆さんの普段の生活を振り返って欲しい。日常生活で英語が使えなくて困ったことはあるだろうか?私が思いつく限りでは、ほ と ん ど な い。外国人に道を尋ねられたぐらいだ。日本は日本語だけで、死ぬまで生活ができる国なのだ。例え学校で実践的な英語を学んだとしても、日常生活で恒常的に使用しなければ定着しない。
また、幼少時に海外に在住していた人も日本に来ると英語を忘れる方が多い。一度覚えても、続けて使わないと忘れてしまうからだ。
筆者も、小学1~5年生の時に日本のインターナショナルスクールに通学、小学6年生から1年半オーストラリア留学した経験がある。当時は英語圏の子供の年齢相応の英語力を所持していた筆者でも、中学1年生の時に日本に戻ってから英語をだいぶ忘れた。授業以外で英語を使わないので、日本で年を重ねるごとに英語が抜けていった。
3.日本語が英語の定着を阻害
実は日本語を第一言語として覚えたことにより、英語の定着が難しくなっている。
日本で英語教育を受けた者ならば、SVOはご存知だろう。Sは主語 (Subject)、Vは 動詞 (Verb)、Oは目的語 (Object)。英語の文構造はSVOの順に形作られる。しかし日本語の文構造の場合、VOが逆なのだ。
S V O
I Love You
S O V
私は、 あなたを 愛しています
ご覧のとおり、英語と日本語の文構造は逆だ。故に、英語を学ぶときに混乱し、定着が難しくなるのだ。
また、日本語を話せることによって英語が定着しにくい理由がもう一つある。それは発音だ。英語では日本語で使われてない発音方法がある。無声音という発音方法だ。無声音とは声帯を震わさずに発する音で、子音がこれに該当する。逆は有声音といい、声帯を震わせて発音する方法だ。日本語は全てが有声音のため、無声音は存在しない。故に、無声音が区別できないことによりネイティブの英語が聞きづらくなる。
一つ例を挙げよう。パンを英語でなんという?そう、Breadだ。このBread、音節はいくつあると考える?
bu re e do
“B r e a d”
上記の読み方が正しい読み方で音節は4つだと思う人が多いだろう。
しかし、 “Bread”は、実は 1 音 節 し か な い。
英語の音節の基本は、子音+母音+子音、つまり無声子音+母音+無声子音でワンセットだ。
日本人はこれを感覚的に把握できないため、”bread”を4音節あると期待して聞こうとする。しかし、実際にネイティブのBreadを聞くと、一瞬にして耳を通り抜けたような感じがして、頭に残らない。これが日本人のネイティブの英語が聞き取れないという感覚だ。
また、それと同時に正しい発音が発しにくくなる。なぜなら、人間は自分が聞き取れない発音は口で発することができないからだ。逆もまた然り。
4.周囲の空気
授業で一生懸命英語を発音してるときに、周りから嘲笑されなかったろうか?
この嘲笑は「あいつ、何マジになってんの?(笑)」っていう意味を込めて周囲がやっているものである。この嘲笑によって、一生懸命に発音している者のやる気を削ぎ、また、それを見た周りも一生懸命発音しようという気持ちがなくなる。こういった日本人の態度に阻害されて英語のまともな発音ができない大人が増えているのではないかと、私は考える。
これを見ている学生の方がいれば、この嘲笑に臆することなく一生懸命英語の発音を練習してほしい。実は、日本訛りの英語と日本語で発音する英語はまったく違う。前者は外国人にも通じるのに対して、後者はほとんど通じない。3.のほうで少し触れたが、外国人と日本人で英語の音節の認識にズレがあるからだ。