命にかかわる高リスクの妊婦や新生児を受け入れる県内2カ所の総合周産期母子医療センターの昨年の母体搬送受け入れ率が計76%と、9割を超えていた97年から大幅に減少していることが県の調査で分かった。要請のあった母子のうち24%が搬送できなかった。危険度がそれほど高くない母子が殺到しているためで、他の医療機関での産科医不足など出産に関わる「周産期医療」を取り巻く環境悪化のしわ寄せを受けている実態が浮き彫りになった。【泉谷由梨子】
総合周産期母子医療センターは、切迫早産や超低体重児などに対応できる高度医療の技術、設備を備えた施設。県内では独協医大と自治医大にある。県がまとめた10年の高リスクの母子搬送受け入れは、自治医大で65・7%(97年は93・8%)、独協医大は87・4%(同96%)だった。
県内では、妊婦や新生児の危険度に応じて(1)一般の診療所や助産院(2)大田原赤十字など6カ所の地域周産期医療機関(3)総合周産期母子医療センター--と、3段階で受け入れている。だが、県全体の取り扱い医療機関は、06年4月の54カ所から、今年4月には小山市民病院の産科休止など46カ所にまで減った。背景には産科医不足などが挙げられる。
その結果、本来は高リスクの母子搬送のために病床が空いていることが望ましい同医療センターなど高度医療機関に母子が集中。また、NICU(新生児集中治療管理室)も恒常的に満床状態にあるという。
さらに、他県も同様の状態にあることから、昨年は県外から両センターへ搬送されるケースも目立っている。県は、県外からの搬送には統一ルールを設けておらず、今後策定する。また、危険な状態を脱した患者を地域周産期医療機関に戻す「逆搬送」の体制作りやNICUの病床数増を進める方針だ。
毎日新聞 2011年8月18日 地方版