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社説

知事 泊同意 安全と言い切れるのか(8月18日)

 調整運転中だった北海道電力泊原発3号機について、高橋はるみ知事は政府に営業運転再開への「同意」を伝えた。

 3号機は、福島第1原発の事故後では全国で初めて、定期検査から営業運転に移行した。

 知事は記者会見で政府に対し、責任を持って安全対策に万全を期すとともに、原発立地地域との信頼関係を損なうことのない、誠実で丁寧な対応を求めた。

 それは、知事自身に跳ね返ってくる言葉でもあることを、忘れないでもらいたい。「同意」という形で再開にお墨付きを与えた知事には、政治的な責任があるからだ。

 ここに至るまでには経済産業省との間で行き違いもあった。しかし、結局は両者が「はじめに再開ありき」で手順を踏んできたと解釈せざるを得ない。

 3号機は3月に調整運転に入り、4月には最終検査を受ける見込みだったが、福島の事故で先送りされ、調整運転が5カ月も続く異常な状態が続いていた。

 事故を踏まえれば、この間に運転をいったん止め、安全対策を徹底的に点検する選択肢もあったはずだ。

 残念ながら、政府にも知事にもそうした発想はなかった。むしろ、営業運転に移行して異常事態を解消するタイミングを計っていたようだ。

 知事は早くから、営業運転再開を容認する考えをにじませてきた。

 経産相に出した質問状も、営業運転再開が再稼働に当たるのか、ストレステスト(耐性評価)は稼働中の原発で行う2次評価になるのかなど、3号機の稼働を前提にしていた。

 知事は、原子力安全・保安院の指導を受けて北電が3号機の最終検査を申請したことを「地元軽視」と強く反発した。

 ただ、憤ったのは政府が道の頭越しに物事を進めたことに対してであって、3号機の安全性確保への疑問ではなかった。

 だから、原子力安全委員会による、形式的とも言える保安院最終検査の「ダブルチェック」にも理解を示したのだろう。これで道民の安全を守れると言い切れるのか。

 福島の事故以来、道民には原発事故に対する不安が高まっている。

 15日には、道内9大学の教授、准教授50人が「3号機の無条件の営業運転再開は容認できない」として、道と周辺4町村が結んでいる原子力安全協定の範囲を拡大することなどを求める緊急声明を発表した。

 今後は定期検査中の1号機や、近く検査に入る2号機の再稼働問題も出てくる。知事は指摘を真摯(しんし)に受け止め、道民の声に広く耳を傾けるべきだ。

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