気象・地震

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事故調:地震と原発複合事故訓練 保安院が難色、取りやめ

 新潟県が10年に実施した避難訓練について、地震災害と原子力災害の同時発生という想定は「住民に不安と誤解を与えかねない」という趣旨の助言を経済産業省原子力安全・保安院が同県に対ししていたことが、政府の「事故調査・検証委員会」(畑村洋太郎委員長)の調査で判明した。その後、同県は地震災害の想定を取りやめ、雪害と原子力災害の複合災害に改めた。保安院が原発の「安全神話」を県側に押しつけた格好で、事故調は保安院の姿勢が福島第1原発事故での被害拡大につながった点がないか、さらに調べる方針だ。

 毎日新聞が入手した内部文書によると、避難措置の適否などを調べる事故調の被害拡大防止対策等検証チームは7月14日から聴取を開始。8月9日現在、内閣官房や内閣府原子力安全委員会、保安院などを対象に約60人から聴取した。今後も含めると対象は200人程度に上る見込みだ。

 07年の新潟県中越沖地震で発生した東電柏崎刈羽原発の事故を受け、同県は10年5月、地震災害と原子力災害の同時発生を想定した訓練を検討していた。これに対し、保安院が「震度5弱の地震発生と原子力災害の同時発生という想定での複合災害訓練は、住民に不安と誤解を与えかねない」と助言。同11月に実施した同県の防災訓練では、雪害と原子力災害の複合災害という想定に変更された。

 一方、09年4月に開かれた経産相の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」の原子力防災小委員会で、原子力災害が大規模災害と同時期または前後して発生する事態に対応するため、保安院が「原子力防災マニュアルの作成上の留意事項」などをまとめた素案を示した。その中で、原発は「想定される最も厳しい地震に対しても安全が確保されるよう十分な対策が講じられている」と指摘。その上で「大規模自然災害を原因とした原子力災害が現実に発生する蓋然(がいぜん)性は極めて低い」としていた。

 今回の新潟県の避難訓練のケースは、同チームが福島県を対象に事故発生前の避難対策を調査中に判明したという。事故調は、地震に伴う原発事故の想定を軽視した保安院の姿勢が、問題の助言につながった可能性などについて、慎重に調査を続けている。

毎日新聞 2011年8月18日 2時30分(最終更新 8月18日 2時44分)

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