
ヴァニア Photo : 静岡市/産経新聞社
この今回、バンコクのサファリワールドからロッシーの従兄妹(いとこ)である可能性が極めて濃厚であるヴァニアが日本平動物園にロッシーのパートナーとして(つまり近親交配ペアとして)来日する件について、実はいろいろと奇妙な点がありますので書いておきます。
(1)何故ヴァニアには国際血統登録がなされていないのか?実はこの点が今回の件についての最大のポイントだと思われます。 深読みかもしれませんが私の意見を述べておきます。 まず、血統登録がなされていないということは公式的には個体の誕生日や誕生場所、そして両親に関する公式情報が欠落してしまっているということになります。 実体的には存在していても公式的、データ的には存在していないこととなります。 こういう、一種独特の不安定な状態...これは意図して作り出されているのではないだろうかというのが私の推理です。 つまり、両親に関する情報を隠蔽しようとしてあえて血統登録がなされていないのだろうと考えるわけです。 バンコクの当該施設側に、ヴァニアの両親について知られては困る事情が存在するのではないか...そういうことではないでしょうか。
何故ヴァニアの両親について隠そうとするのか...それはヴァニアの母親(つまりウディ)がロシアのカザン市動物園の生まれで、あのサンクトペテルブルクの偉大な母であるウスラーダの妹であることがわかれば、極東アジア(つまり日本、中国、韓国)の動物園に対してヴァニアを高い値で売ることが難しくなるからです。 何故かって? 簡単です。 極東アジアの動物園におけるホッキョクグマの若年個体は私が「アンデルマ/ウスラーダ系」と呼んでいる個体の勢力が「制圧」しているからです。 ですからヴァニアがそういった「アンデルマ/ウスラーダ系」とペアになれない(つまり近親交配になるということ)ことが知れれば、ヴァニアを高く売ることができないからです。 だからあえてヴァニアの血統登録をせず、ヴァニアがウディの娘であることを隠そうとしたのではないでしょうか。 実はこのバンコクの施設、数年前に例のZoocheck が調査に行った際、このロシア・カザン市生まれのウディをカナダの野生出身であると偽って語っていたという事実があります。Zoocheck がそれを鵜呑みにしてしまって報告書を作成しているようですが、カザン市動物園が過去にすでに行っていたウディの血統登録は見逃してしまったようです。 そして今回は、まんまと日本平動物園がこれにひっかかってしまった...そういうことだと思われます。 仮にヴァニアの血統登録がなされていないことが意図的ではなかったとしても、このヴァニアの国際血統未登録の状況は売り手(タイ側)、及び売買仲介者(動物商)にとって非常に都合のよい状況が生じていることには違いありません。
実はさらに奇妙なことがあります。 日本の某マスコミは、今回の件における最初の報道で「国際血統登録上はヴァニアという名前...」と報道していました。 ところが直後すぐに、「タイでの名前はヴァニア」と密かに記事の内容を訂正しているのです。今回の件に関する記事の情報ソースは全面的に日本平動物園でしょうから、この記事が訂正されている事実は日本平動物園が当初からヴァニアには国際血統登録がなされていないことを知っていたということを意味します。 ヴァニアの血統登録がなされていないことを知っっていたのなら何故すぐにヴァニアの実際の血統を調べてみようとしなかったのでしょうかね。 要するに眼の前に突然現れた雌(メス)の若年個体に我を忘れて瞬時に飛びついてしまったというのが真相ではないですか? そしてもう今更、引くに引けない状況に追い込まれてしまったということではないですか?
ネット上で偶然、今回のヴァニアの購入に関与した静岡県の動物商のコメントを発見しました。 こういう内容のことを言っています、「雌のホッキョクグマは(中略)今後は国際血統登録個体から探し出す事がほぼ不可能になりつつある...。」と。 要するにこれは今回ヴァニアを「発見」したことに対する自画自賛でしょう。 「血統登録などで探していては見つかるはずがないさ。」という意味でしょう。 ところがこの動物商は大事なことを忘れているようです。 それは、「
個体は、たとえ血統登録がなされていなくても血統はある。」 という当たり前の事実です。 血統登録がなされていないために公式的にはヴァニアはウディの娘であることの確認がとれないものの、事実としてはウディの娘である以外の可能性はないわけです。 この動物商は「血統登録」がなければ「血統」まで消せるとでも思っているのでしょうか。 このイベント屋まがいの動物商、せいぜい爬虫類だけ扱っていればいいものをホッキョクグマのように詳細な情報の収集が不可欠である動物の輸入まで手を伸ばしたためにボロが出たようですね。 今回の件について、「大変やり甲斐があって一生の思い出になる経験」などと言っています。 まあ自分で勝手にそう思って下さい。おかげで日本のホッキョクグマ界はいい迷惑です。 もっとも所詮、動物商なる職業は動物の売り買いに介在して利益をあげる業者にしかすぎませんから、ホッキョクグマの繁殖に貢献するなどという発想などあるはずがありませんしね。事実かどうか知りませんがこの動物商、ネット上の情報では数ヶ国語を操るとか。 まさか「関西弁」や「東北弁」を外国語に入れてはいないでしょうね。 いずれにせよ残念なことに、この方の「レパートリー」にはロシアのホッキョクグマを調べる際には不可欠であるロシア語はなかったようです。 誠に残念なことです。
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続く)
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