ヴァニア来日の件についての深層を読み解く (下)
ロッシー (2011年8月7日撮影 於 静岡・日本平動物園)

前投稿よりの続き)

(3)ヴァニアの来日と日本のホッキョクグマ界の繁殖

こういった状況で、ではヴァニアは来日しないほうが良いかと言えば、ある1点に目をつぶればそうとは考えられません。 その1点とは、今回の「不適切な経緯によるホッキョクグマ購入」の経緯に目をつぶればということです。ひとまずこの点については横に置いておき、話を続けます。

ロッシーの繁殖が近親交配によって成功しない(生育しない)であろうことは確率が非常に高く、それ自体は大変残念ですが、日本のホッキョクグマ界全体から俯瞰してこの問題を見れば実はこのことは大した問題とは考えられません。 すでに日本におけるホッキョクグマの繁殖は危機的状況であり、今さら人気者ロッシーの繁殖が実現しないからといって、それ自体をとりたててどうこう言うほどのない状況だからです。 肋骨1本折れたのと2本折れたのとでは痛さが違うことは間違いありません。ところが5本折れたのと6本折れたのは痛みの大きさにおいてはもうその差は感ないでしょう。 それと同じことです。

ロッシーはいわゆる「アンデルマ/ウスラーダ系」の個体であり、この系統には他にゴーゴ、ホクト(姫路)、カイ、イワンがいます。この系統である5頭が全部繁殖したとすれば、また違った意味での新しい危機が生じます。 血統の面において現在我々にとって最も必要なのは何を置いてもまずGAOの豪太の繁殖であり、次に重要なのは「アンデルマ/ウスラーダ系」とはいえその系統の血が一番薄いイワンの繁殖です。 豪太,そしてイワンに繁殖が無ければ日本のホッキョクグマ界にとっては痛恨事ですが、ロッシーの繁殖が不可能でも、それ自体は大した問題ではありません。すでに他の「アンデルマ/ウスラーダ系」の個体としては近親交配とはならないパートナーを持つホクト(姫路)とカイ(仙台)がいますから、今更ロッシーなどは考えようによってはどうでもよい話です。 考えようによっては、今後の日本の動物園におけるホッキョクグマの繁殖について日本平動物園を考慮する必要がなくなったという点において、むしろスッキリしたと言ってよいほどです。 猛獣館299でのロッシーのケガについても報道によれば同園では、普通のクマだったらケガなどしなかっただろうなどと言ってケガの責任を全てロッシーに押し付けているくらいですから繁殖についても、どうせまた全て責任をロッシーとヴァニアに押し付けるつもりでしょう。 日本のホッキョクグマ界全体にとっては迷惑な話ですから、どうぞ日本平動物園だけで未来永劫、勝手にやって下さい

ヴァニアが来日すれば、日本のホッキョクグマで繁殖可能となる雌の個体の頭数は1頭増えます。そうすれば少なくとも繁殖のための他個体とのペアの選択肢(実現性は限りなく皆無でしょう)は若干ではあれ、増えるわけです。 また将来的にヴァニアのパートナーとしてロッシー以外の個体を手当てできなかったとしても、少なくとも日本の動物園で見ることのできるホッキョクグマが1頭増えた...それだけだって意味はあるでしょう。 ただしかし、その1頭に対して6000万円と言う金額が妥当かどうかについては複数の意見が存在しうるようにも思えませんけれどもね。

(*追記) 今回の件に介在した動物商、いや正確には爬虫類屋ですが、「動物の値段」という本を書いた著者ですね。ご興味のある方はアマゾンのサイトでこの書名を入れて検索してみますと著者名もわかります。ネットでこの著者の名前が出てくる過去のニュースを調べてみますと、まあ次から次へといろいろ出てきますね。 塀の向こう側では「ワシントン君」という異名(ワシントン条約に引っ掛けた愛称でしょう)を看守さんからいただいていた方のようです。少年法で定義される「少年」は20歳に満たない者を言いますが、この方は20歳で堂々と成人となった時点から複数回の「独房体験歴」をお持ちのようです。2006年5月18日には東京地裁での公判の判決で裁判官から「虚偽の繁殖確認書を用意するなど計画的で悪質な犯行」厳しく指弾され、「種の保護法」違反では異例ともいえる2年6カ月の実刑判決もプレゼントしていただいたそうです。 「執行猶予」ではなく「実刑」というのは、それまでのワシントン君の華麗なる逮捕歴に対して裁判所から与えられた「ご褒美」だったのでしょう。

地方自治体、そしてそこが運営している動物園は通常はこのような動物などの輸出入に関する悪質な法令違反を計画的に何度も行う華麗なるキャリアを持つ「元受刑者殿」とは付き合わないはずですけれどもね、民間でもちゃんとした企業ならこのような前科者の個人や会社とは絶対に取引しませんよ。静岡市や日本平動物園というのは独特ですね、こういう「ベテラン受刑体験者」と付き合うというのは何かいいことでもあるのでしょうか? たとえば、いろいろな形での見返りと何かとか。 あるいは単に、「類は友を呼ぶ」ということでしょうか?


(過去関連投稿)
ロッシー(静岡・日本平動物園)のパートナー決定へ!
ロッシーの母(ウスラーダ)とヴァニアの母は姉妹の可能性 ~ 日本平の新ペアは近親交配か?
「ロッシー、おめでとう!」、...と言いたいところだが...
ヴァニア来日の件についての深層を読み解く (上)
ヴァニア来日の件についての深層を読み解く (中)
by polarbearmaniac | 2011-08-17 09:00 | Polarbearology
<< イギリスのホッキョクグマのアニ... ロンドン動物園でのホッキョクグ... >>