自転車:視覚障害者の白杖折損増加 修理の6割超

2011年8月16日 15時0分 更新:8月16日 17時49分

 歩行中の視覚障害者が、目の代わりと言える白杖(はくじょう)を走行中の自転車に折られるケースが相次いでいる。明確な統計はないが、「白杖修理の原因は約3分の2が自転車との接触」とみる団体もある。自転車と歩行者の事故は09年までの10年間で3.7倍に増加する一方、歩道には点字ブロックなどが設けられてバリアフリー化が進み、視覚障害者の通行も今後さらに増えるとみられる。自転車利用者への注意喚起やルールづくりが課題として浮かぶ。

 白杖の修理を請け負う社会福祉法人「日本点字図書館」(東京都新宿区)には、全国から多い時には月20本が持ち込まれる。20年近く携わってきた担当者によると、自転車による被害は以前から多く、「全体の6、7割を占めるのでは」と話す。2カ月で2回も折られたケースもあったという。

 白杖の販売・修理をする社会福祉法人「日本盲人会連合」(同)の担当者も「実感として自転車に折られるケースが最も多い」と言う。月2、3本の修理をするほか、被害に遭って新品を購入する人も少なくない。担当者は「そのまま立ち去る自転車が多く、障害者は泣き寝入り。ひき逃げと一緒だ」と話す。

 厚生労働省によると、全国の自治体に申請があった白杖の修理は05年度の59件から09年度は71件に増えた。

 筑波大講師らのグループが全盲の343人を調査し99年に発表した研究報告によると、67%が「自転車とぶつかったことがある」とし、そのうち約7割は「相手はそのまま行ってしまう」と答えた。自由回答では白杖が折れたり曲がったりしたとの訴えも目立ち、「引っかけても知らん顔。棒切れにしか思っていないのでは」との記載も。9割が自転車の歩道走行に危険を感じ、1割は「歩道を走らないで」と求めた。

 調査に加わった都市プランナーの松村みち子さんは「視覚障害者は白杖を折られたら一歩も動けない。自転車は注意を徹底してほしい」と呼びかけている。【馬場直子】

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