和製ネット動画配信サービスの草分け「ニコニコ動画(ニコ動)」が、また新しいことを始めた。7月18日、海の日の夜に開催されたそのライブは生番組を同時配信する「ニコニコ生放送」で生中継され、延べ65万人以上もの視聴者を動員、盛況に終わった。「AKB48」や「東方神起」などが出演した最新のライブハウス「nicofarre(ニコファーレ)」のこけら落としイベントである。
ニコファーレを運営するのはニコ動のドワンゴ。バブル景気のころに社会現象を巻き起こした東京・六本木のディスコ「ベルファーレ」跡地に常設のライブハウスを設立、18日にオープンした。最新技術が詰め込まれた次世代のライブハウスだ。
2250万人以上の登録会員を抱えるニコ動は、その会員の約65%を10代と20代が占めるなど若年層からの圧倒的な認知度と人気を誇る。一方、50代以上はわずか4%台。NTTドコモの元執行役員で、ニコ動事業を担当するドワンゴの夏野剛取締役いわく「20代人口全体の7割以上がニコ動の会員。若者は誰でも知っている。しかし、おじさんはほとんど知らない」。そのメディアが、最新鋭の機材が詰まったリアルの箱とともに、新手のコンテンツを届け始めた。
■「仮想観客」として楽しめる仕掛け
最大380人を収容するニコファーレはネット中継設備のほかに、会場の全壁面に高輝度のLEDモニターを設置、360度を囲むモニターを駆使した新たな演出が可能となった。AR(拡張現実)の技術を用いて、ステージ上や会場にあたかも存在しているかのようなバーチャル映像を、ネット中継の画面や壁面モニターにリアルタイムで合成することもできる。
ネットの視聴者にとって最大の魅力は、「仮想観客」として参加できること。ニコ動の特徴である動画の上を流れる「コメント機能」を利用し、視聴者のコメントを会場のLEDモニターに映すことで一体感を演出する。こけら落としのイベントでは累計で104万以上ものコメントが集まり、司会を務めた芸人の遠藤章造が、会場に流れる「千秋~」「復縁して」といったコメントに反応、それに視聴者が喜ぶなど、次世代ライブの姿の一端を見せた。仕掛けはこれにとどまらない。
視聴者は会場のモニターでひときわ目立つ有料の「サイリウムコメント」(30回、300円)でアーティストや観客にアピールすることができる。日比谷花壇に電話やファクスで注文すれば、デジタルのお祝いの花を贈ることも可能(1万500円から)。開演前などに壁面のモニターに映し出される。こけら落としの初日こそ生花で埋め尽くされていたが、今後は原則、スペースをとらず枯れることもない「デジタル花」のみ受け付けるという。
ニコ動とライブを融合するニコファーレは、初日にいきなり、圧倒的な集客力を見せつけた。盛り上がるのはユーザーだけではない。
■ジブリ、エイベックス、吉本興業も注目
こけら落としイベントはニコ動の主催で、無料で来場(公募抽選)・視聴できたが、今後は通常のライブハウス同様、興業に貸し出し、ニコ生を通じたネット視聴も課金する。すでに21日にはスタジオジブリが映画「コクリコ坂から」の公開を記念した手嶌葵のライブを開催。23、24日はエイベックスが夏恒例の音楽フェスティバル「a-nation」のプレミアライブを開催する。それぞれ、ネットチケットはリアルの半額以下の1500円という設定だ。
お笑いのライブも予定されており、8月には千原ジュニア、9月には陣内智則のライブが開催される。会場は小さくても、ドーム公演を上回る数十万人の大量動員が見込めるとあって、ネットとリアルの双方向を実現した次世代ライブハウスへの視線は熱い。オンラインとオフラインの接点とも言えるニコファーレは、新たな収益機会やマーケティングの場として、メディア関連業界やエンターテインメント業界からも大きな注目を集めている。
だが、ドワンゴの創業者でニコ動を生んだ立役者、川上量生(のぶお)会長がもくろむ真の狙いは、公には説明されていない。ニコファーレは、単にエンターテインメントの新たな売り出し方や次世代ライブの姿を世に提示する以上の意味と可能性を秘めている。
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