スミレとぼくと。

番外編:液状化現象だよ、おっかさん


これが隠れた被災地、千葉県は東京湾沿いの埋め立て地域における311の状況だ。12階建ての集合住宅の10階以上の階に済む人たちは、多かれ少なかれ、こういう状況になった。聞けば5〜6階では、花瓶が落ちたくらいで、それより下の階は、揺れはしたけれど、こういうことにはならなかったそうだ。これは食卓の近くで、ここでは写真でいうと右奥に、壁に直角、もっと右手にある冷蔵庫と背中合わせの本棚が倒壊した。どうやらひねりながら倒れたらしく、中味が考えられないところに落ちていた。想定外の震度は、考えられないことを次々と引き起こしたが、それはわが家の中とて変わらないのだった。


またまたブログのアップが遅れてしまいました。その理由は、震災で会社のある浦安市の、しかも湾岸高速の海側である埋め立て地エリアが甚大な被害を被ったこと。そして、スタン君からの便りがプツリを途絶えてしまっからだ。

のっけから脱線で恐縮だけど、浦安市ほか、千葉県の東京湾沿いにある比較的新しめの埋め立て地は、のきなみ液状化現象というのにヤラれた。これは湖や港湾を埋め立ててできた平地に発生することが多く、サンフランシスコ大地震のときも同様な現象が確認されている。要は、埋め立てられたことでできた水分の多い地質の土地が、地震による震動によって、水や砂、小石や岩が分離され、重いほうが沈んで水が表出することで起きる。ボクは、舗装された路面が次第にうねりはじめ、それが波打ち、そして割れたところや、道路脇のすきまから、水分の多いセメントのような水が出てくるのを目の当たりにした。 すごいところでは、そのスライミーなのが噴水のように吹き出ていた。

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上は、1989年のサンフランシスコ大地震の際、液状化現象が発生した同地のマリン郡の埋め立て地域だ。元々、港湾だったところを埋め立てて平地にした場所で、それはそのまんま浦安から幕張、そして東京ではお台場と同じである。とはいえ、そのリスクを見越してか、高層あるいは重量級の建物が立つところは、それなりの土壌改善というか対策が施されている。一戸建てが前提の住宅地だと、軽いからそれは不要と、地盤対策が行なわれないのが、昔では普通のことだったようだ。そのために浦安から舞浜地区にかけての一戸建てエリアは悲惨である。1989年のサンフランシスコ大地震と液状化現象については、こちらをどうぞ。写真も、同サイトから了解を得て使用させていただいた。(リンクを示すのが約束でした。ここです)http://pubs.usgs.gov/fs/1999/fs151-99/

その結果、地盤沈下が起きる。銀行や病院、そしてそれなりの高層建築等については、念入りな基礎工事が行なわれているようで、建物はそのまんまでも、周囲が沈下する。そのためアプローチの部分が割れ、たとえば駐車場だけが全面的に地盤沈下を起こしてクルマが道路に出られなくなるところが続出した。悲惨なのは、一戸建ての住宅地で、比較的軽量な木造住宅を主に造成された地域の家は、軒なみ、わずかであれ、傾いた。わずかでない悲惨な家も少なくない。一戸建ては銀行やマンションのような重量級の建築ではないので、地質あるいは地盤改良なりは、さして必要ないと判断されたからだろう、それらの地域では、逆に道路はそのままで家の方が傾き、沈んだ。たとえそれが10cmであろうと、大騒ぎだ。なんとなれば、下水本管への下水路が下がったことで流れなくなり、それはすなわち水が使えないことになるからだ。


Youtubeにアップされている震災発生時の新浦安地域の生々しい映像だ。画面の左側に見え隠れしているセブンイレブンは、この後、閉店せざるを得ない状況となった。はす向かいのK'sデンキは、一階部分の駐車場の舗装がヤラれた。歩道のタイルがあっちとこっちでズレるようにして揺れ、地震によってその下で土や石、水が分離され、水がすき間から出てくる様子がわかる。周辺の重量級の建造物には、あまり被害はなかったけれど、周辺の道路や歩道、そしてアプローチ部分は地盤沈下を起こし、マンションや一戸建ての駐車場では、出たら入れない、あるいは、出られないというところが続出した。まだ建設中だった超高級マンションは、売れ行きがよろしかったそうだが、震災後の週末から、購入予約キャンセルが殺到し、周辺の道路に渋滞が起きた。

それだけではない。耐震やら免震構造というのも命の安全を保証するものではない、ということがわかった。なんと、ボクとスミレ、そして奥さんは、12階建ての集合住宅の11階に住んでいるのだが、古い耐震構造は、地震のエネルギーを逃がすため、上の階に行けば行くほど揺れる。まるでムチのように振れ、揺れるのだ。その結果どうなるか。わが家の居間にあった本棚やガラス戸棚、そしてテーブルやイスは、文字通り全壊した。もうバッキバキのコナゴナである。本棚は、TQハンズご推奨の組立式の耐震構造の家具を本棚にしていたのだけれど、それが災いした。ビルトイン式の耐震のつっかえ装置が天井に接したまま、重い本を満載していたがため、まるで重量級のアンコ型力士のように倒れないまま部屋の中をねり歩き、あらゆる家具を破壊しつつ、自らもダメージを負い、そこから考えられない状態に自壊していた。しかも、そのうえに本をすべて文字通り吐き出しての狼藉ぶりときたもんだ。

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いわゆる居間のダイニング&リビングのところだが、この惨状の中で何がショックだったかといえば、左のカウンターの向こう側に底の部分だけを見せている、そこで倒壊している本棚だ。その前はキッチンで、さすがのボクもキッチンの通路に本棚は置かない。それは、この写真の正面の白い壁のところにこちらを向いて立っていたのだ。それは耐震用のつっかえ板を内臓している耐震仕様のもので、そこには本がギッシリと収められていた。つまりが重量級であったのだが、この耐震仕様が災いした。それは天井を持ち上げるような格好で居間の中を練り歩き、ヘビー級チャンプの関取がごときパワーで当たるものをすべて破壊し、自らも傷つき、最後にキッチンのところまで行って自壊して倒れたのだ。こんなことが起きるほど、古いタイプの耐震構造は揺れる。そして建物は倒壊せずとも、人にとっては危険きわまりないのだ。みなさま、重い家具、そしてガラス扉は危険です。ちょっとした金具と木ネジで壁に留めておくことをお勧めします。

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象が乗ってもとは言ってはいないが、「強度については自信がある」とされていた組立家具も、このとおりである。日本の集合住宅を鑑み、軽く、各所に工夫がされている良品ではある。しかし、パーツ単体、あるいは試験時の完成品は、耐震強度の確認には適していなかったのだろう。そうとしか言えない。アルミの鋳造金具が曲がっているのを見つけたときは、その裏側にある強度付加用のリブがあることも手伝い、大地震によって揺らされる際の力の強大さをあらためて思い知らされた。それはメーカーの人もそうで、連絡したところ見に来た誠実そうな担当者はそれを見て言葉をなくしていた。すべてが想定外だったということだ。

無論、その後始末を含め、会社のほうもけっこうな騒ぎとなった。一見、なんともないように見えたオフィスの二階建ての建物も、市の測量みたいな検査で、少々歪んでいることが判明した。わずかではあるが、それでも妙なところでそれが露見した。たとえばトイレ。トイレの扉は、たまにだが、ロックをしていても、あるとき突然にパァ〜ンッと開いたりする。オフィスにあるトイレは広く、ドアを開けて3〜4歩で便器に到達する。なんでかって、そういう作りだからしょうがない。でもって、お客さんが使っているときにそれが起きたもんだから、みんなビックリ。でもお客さんは、ドアに手が届かないから、誰かが背中を向けて近づいて後ろ手で閉めて上げないとならないのだ。バツの悪そうなお客さんのほうに、背中を見せて近づくなんてのは、まるでコントだ。でもホントの話だ。

ということで、今回は被災した番外編のお話でした。次回から、野生界の犬の親戚たちのお話に戻る。最後に、スミレは、無事だった。もし、居間にいてドアが閉まっていたりしたら、彼女は、それはものすごい恐怖を体験したうえ、最悪の場合、死んでいたかもしれない。倒れてきたタンスだか戸棚の下敷きになり、その怪我がもとで亡くなったペットもいるくらいだから、そんなことがあっても不思議はなかった。でも、スミレは、いつもそこに入り込むと怒られるベッドの下に潜り込んでいて助かった。ホントによかった。とはいえ、入っちゃダメよの場所からホコリだらけで出て来たときには、ああ、と安心したのと、掃除機かけなきゃというのがゴッチャになった妙な気持ちになった。ま、いいか。いいことにしよう。スミレは無事だったんだから。

そんな浦安市は、東京にもっとも近いにもかかわらず、激甚被災地に指定された。とは言っても、傾いた家が元通りになるワケではなく、保険金の支払いや補償を受ける際、対策関連の融資の際の考慮になるくらいだ。中央公園と名前だけ立派な公園の芝生には地割れが走り、いまでは立ち入り禁止のロープが張ってあるだけで放置されている。いまでは、雑草が生い茂り、何の手も打たれていないので、小さな子供が入り込んで怪我をしないかと心配になる。管理事務所があるけれど、死角はたくさんあるからね。首相が、青春スターの成れの果ての県知事とやってきて市長の案内を視察をしていた光景が報道されたが、どこまで何をやってくれるのか、心の底から知りたいもんだと思う。その際、真剣な表情の首相と市長の背後でおちゃらけてなかりいる県知事の姿は、実に印象的だった。

とことん地震と液状化でヤラれた交番も、どうやら市の土地と施設であるらしく、それは一番あとまわしになるらしい。その壊れ具合からして見て、手抜きというか、耐震以前の安普請造りであることは明らかで、そこに勤務するおまわりさんに思わず同情してしまった。古いと言えばそうだけれど、こりゃないだろうという出来の悪さが露見してしまった。普段は、災害時のためのナントカカントカ言っていた設備もてんで使い物にならない。今回の震災は、千葉県の東京湾沿いの自治体、中でも浦安市のダメさ加減を浮き彫りにしている。ディズニーランドがあるだけで、そこからの事業税だか地方税歳入があるだけ。それだけのイメージ先行の街だということがイヤになるほどわかっちゃったのだ。

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これは、押して内側に開くドアの部屋の内部だ。その向こう側で倒れた本棚やら、そこから吐き出された本の山やらのためにドアを開けることはかなわなかった。では、どうしたか。ニュースでよく聞く「バールのようなもの」の1めーとる強あるのをホームセンターで購入し、それでドアの蝶番、ヒンジのところを引っこ抜いたのだ。幸い、地震の揺れでか、長い木ネジが甘くなっていて、予想外にスッコンと引っこ抜くことができた。で、そのままドアを外して横にどけたのだけれど、その際は、山となっていた本が雪崩のごとく廊下に流れ出てきた。実は、まだこの部屋は片付けきれていない。見るだけでゲンナリしてしまうからだ。あの揺れの恐怖、液状化現象とそれによって引き起こされた様子が、まざまざとよみがえってくるからだ。でも精神上よろしくないという指摘を受けたので、近々、一気にやっつけるつもりだ。




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