<NEWS NAVIGATOR>
◆放射性セシウムに汚染された牛を食べると危ない?
なるほドリ 放射性セシウムに汚染された牛がまた出荷されたんだね。そもそも汚染された餌を食べた牛の体にはどれくらい放射性物質が残るの?
記者 福島県南相馬市で検出された稲わらの放射性セシウムは1キロあたり最大約7万5000ベクレルで、そのわらを食べた肉牛からは最大同4350ベクレルの放射性セシウムが検出されました。農林水産省によると、IAEA(国際原子力機関)は餌に含まれる放射性セシウムが牛肉に移行する比率(移行係数)について、最大約0・1としています。つまり、1キロあたり1万ベクレルの放射性物質を含む餌を毎日1キロ食べ続けた牛からは、最大で同1000ベクレルの放射性セシウムが検出されることになります。ただし、尿などで体外に排出されるため、実際の値はもっと低くなるとみられています。
Q 人間が汚染された牛を食べた場合は?
A 放射線医学総合研究所の資料を基に、放射能の強さを表す単位のベクレルを、人体への影響を表すシーベルトに換算してみましょう。例えば南相馬市から出荷された1キロあたり4350ベクレルの牛肉に含まれる放射性物質の場合、すべてセシウム137(換算係数0・000013)と仮定すると、毎日100グラム食べ続けたとすれば、1カ月で摂取する放射線量は約0・17ミリシーベルトとなります。国際放射線防護委員会が示す人工被ばく限度は年間1ミリシーベルトですが、365日食べ続ければ約2ミリシーベルトになる計算です。
Q そもそも放射性セシウムって、人体に入るとどんな影響があるの?
A 臓器に蓄積して内部被ばくを引き起こし、細胞やDNAを傷つける活性酸素を作り出します。セシウム137は野菜や果物に多く含まれるカリウムによく似た物質で、きちんと栄養がとれていないと代わりに吸収しやすくなります。
Q 心配だなあ。もし出回ってしまった汚染牛肉を食べてしまったら、健康に影響が出るのかなあ。
A 何度か食べた程度では心配はなく、放射線の影響に詳しい東工大の松本義久准教授(放射線生物学)も「今の値ではほとんど影響はない」と話しています。ただし、乳幼児は放射性物質の影響を受けやすいので、流通経路の確認をしっかり行い、なるべく内部被ばくのリスクを避けた方がよいでしょう。(社会部)
==============
なるほドリコーナーへの質問をお寄せください。〒100-8051(住所不要)毎日新聞「質問なるほドリ」係 naruhodori@mainichi.co.jp
毎日新聞 2011年7月16日 東京朝刊