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◆セシウム汚染、新米は大丈夫?
なるほドリ もうすぐ新米の収穫シーズンだね。今年は放射性セシウム汚染が心配だ。
記者 同じように心配する消費者が多いようですね。そこで農林水産省は、コメのセシウム濃度を収穫をはさんでダブルチェックする調査を17都県に求めています。主食なので他の農産物より厳しくしました。汚染米を出荷前に見つけ、安全なものだけを流通させようと、国も自治体も躍起です。
Q 野菜や茶では出荷停止になった地域もあったよね。汚染米も各地で出るのかな。
A コメは少し事情が違うようです。暫定規制値を超えた野菜や牛肉汚染で問題となった稲わらは3月の福島第1原発事故の時、既に畑や田にあって放射性物質を直接浴びました。人間でいえば「外部被ばく」です。でも、田植えは事故からしばらく後に行われました。今年の新米で心配されているのは、汚染された田んぼから放射性セシウムを吸い上げる「内部被ばく」なのです。
Q そうだったのか。でもどれくらい吸い上げるの?
A 放射性物質が土から農作物の内部に移る割合は「移行係数」と呼ばれ、作物により異なります。農水省はセシウムのコメへの移行係数を0・1としています。つまりコメのセシウム濃度は土の濃度の10分の1ということになります。政府は4月、新米が暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を超えないよう、土の汚染が5000ベクレルを超えた福島県内の農地での作付けを禁止しました。
Q 少し安心した。
A 実際の移行係数は0・1より低いとする研究データもあり、調査結果が出る前からいたずらに騒ぐ必要はありません。
Q でも、待てよ? 原発から離れた場所でも放射線量が高い「ホットスポット」があちこちで見つかっているけれど、本当に大丈夫なの?
A 確かに、現段階では暫定規制値を超える汚染米が見つからないとは言い切れません。調査の網の目を少しでも細かくし、汚染米が出ても流通させず、主食の安全安心を確保する努力が国や自治体に求められています。(社会部)
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毎日新聞 2011年8月14日 東京朝刊