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仙台市議選 選挙区変更有権者苦悩「棄権するかもしれない」
仙台市議選(19日告示、28日投票)で、東日本大震災に被災した有権者が転居したため選挙区が変わり、長年支持してきた候補者に1票を投じられないケースが生じている。震災の影響が色濃く残る中での選挙は、政治参加に積極的に取り組んできた被災者たちにも、混乱を招いている。
宮城野区のJR仙石線沿線にあった自宅が全壊し、5月に太白区の仮設住宅に移った自営業の男性(57)は「一番困っているときに助けてくれた。今度はこちらが支援する番だったのに…」と残念がる。 震災直後、最も頼りにしたのが親しくしてきた市議。避難所に食料を運んでくれたり、生活資金などの支援情報を伝えてくれたりした。男性は「先が見えず不安だったが、気持ちが落ち着いた。今でも感謝している」と言う。 健康保険や車庫証明の手続きなど現住所を記載する機会が増え、6月に異動届を出した。区をまたいで引っ越した有権者は、5日までに転居届を出した場合は新住所、出さなければ旧住所の選挙区で投票する。 男性は「入居期限2年の仮設で、任期4年の議員を選ぶのには無理がある。旧住所の選挙区で投票できる特例があればいいのに」と悔やむ。 青葉区の民間借り上げ住宅で暮らす学校職員の男性(62)は、市選管から届いた投票所を知らせるはがきを見て驚いた。住み慣れた宮城野区で投票するつもりでいたが、記されていたのは青葉区の投票所。「意中の候補を応援するため、住民票を移さなかったはずだが」と記憶をたどった。 引っ越した5月上旬、母親の介護関係の手続きで宮城野区役所を訪ね、何かの書類に現住所を書いたことを思い出した。住民票も移していたのだ。男性は「いずれ地元に戻るのだから、前の住所で投票できないか」と納得しかねている。 津波で自宅を流され、青葉区の公営住宅に身を寄せる男性(73)は4月に住民票を移し、長年応援してきた現職に投票できなくなった。「引っ越したら手続きするのが当然だと思っていた。選挙権のことまで考える余裕はなかった」と言う。 住所録も旧知の連絡先を登録した携帯電話も津波で失った。それでも「できることをやりたい」と知り合いの転居先を人づてに探し、電話で支持を呼び掛けている。 肝心の自分の1票は行き場を失った。「今回は棄権するかもしれない」と話す。
2011年08月17日水曜日
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