なぜ、Tカードは提示するだけで割引が受けられるのか
プレジデント 6月15日(水)10時30分配信
このTカードと提携している企業は多く、ロッテリアやENEOS、ドトールコーヒー、ガスト、ファミリーマートなど、多様な業種から70社を超えている。
Tカードと提携する企業にとって最大のメリットは、顧客情報の共有である。
ある日、TSUTAYAでDVDを借りたAさんが、ファミリーマートで買い物をし、ガストで食事をして、代金を支払う際に、ポイントをためるためにTカードを提示した。Aさんの買い物情報は提携企業の間で共有される。Aさんは、どんな映画が好きで、どんな飲み物、食べ物が好きで、どんな所に行っているかといったことが共有されるのだ。
別の日に買い物をしたAさんがTカードを提示すると、レシートと一緒に新商品の割引クーポンを渡された。Tカードと提携する企業の新商品で、いかにもAさん好みのものだった。そんな顧客サービスも当たり前のように行われるのだ。
いま企業が重視しているひとつが顧客情報の収集だ。データから、顧客の動きを知り、買い物行動を分析する。顧客情報を収集する方法のひとつが、ポイント付きの会員カード発行である。
例えば、セブン-イレブンやローソンは独自のカードを発行している。これに対してファミリーマートはTカード(ファミマTカード)である。独自のカードを発行して、ゼロから顧客情報を収集するよりは、既存の会員カードと提携することで、一気に幅広い顧客情報を手に入れることができる。
TSUTAYAの主要な事業はDVDやCDなどのレンタルだ。これはお金を貸すのと似ていて、一種の金融サービス業だといえる。金融業には顧客の年齢、勤務先や年収、資産内容など詳細な情報が集まっている。TSUTAYAでも、会員が映画や音楽ソフトを借りる際にはTカードが必要で、確実に顧客情報を集めることができたのだ。
それがいま、膨大なデータとして蓄積され、提携先でTカードが使われるたびに情報が加わっていく。その情報に基づいて、買い物をすると割引があり、客の好みに合ったクーポンがもらえる。詳細な顧客情報で、ピンポイントの価格戦略が講じられるのである。商品の販売情報とともに、買い物客の性別、年齢をレジ担当者が主観で打ち込むPOSシステムとは大きな違いである(図参照)。
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エコノミスト・著述家
吉本佳生
1963年、三重県生まれ。名古屋市立大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科満期退学。専門は金融経済論、生活経済学。元銀行員、元大学教員。近著に『マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか?』。
山下 諭=構成
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最終更新:6月15日(水)10時30分
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