東京電力福島第1原発事故への対応や、国主催の原発シンポジウムでの「やらせ問題」を受け、12日に更迭される経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長が10日、記者会見した。同原発のメルトダウン(炉心溶融)について、震災翌日の3月12日に放射性セシウムの検出があり、「可能性は否定できないと考えた」と述べた。当時広報担当の保安院審議官が炉心溶融の可能性を認める発言の直後に交代した経緯があり、寺坂院長の認識が注目されていた。
寺坂院長は事故後の対応について、「多くの人が避難して不自由な状態となっており、規制部門として大変申し訳ない。結果について批判があるが、私としては精いっぱい務めてきた」と述べる一方、原発の外部電源喪失対策や住民の避難態勢など、保安院の責任を問われると「事故調査・検証委員会で作業が進められている」と回答を避けた。
「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)のデータ公表が遅れたことについては、「報道発表の少し前に知った」と弁明。事故後、記者会見にほとんど応じなかったことに「批判は真摯(しんし)に受け止めたい」と話した。【平野光芳】
毎日新聞 2011年8月11日 東京朝刊