最新の医療ルネサンス・医療解説
- 最新の医療ルネサンス・医療解説
読売新聞朝刊くらし家庭面の連載「医療ルネサンス」から最新記事や夕刊医療面に掲載の解説記事を紹介しています。
連載は1992年に「心と体に優しい医療」の実現を願ってスタートし、すでに5000回を超えています。これまでに新聞協会賞(94年)、菊池寛賞(95年)、ファイザー医学記事賞(2007年)などを受賞しました。
がついている記事には、専門記者が最新情報などを書き加えた「情報プラス」があります。
シリーズ
- 放射能と暮らす(6)簡易測定器 誤差に注意
- 川の土手の放射線量。二つの簡易測定器が表示する数値は大きく異なった(千葉県柏市で)
市民自らが放射線測定器を購入し、身の回りの放射線量を測る動きが広がっている。放射線量が高い場所を知ることは、無用な
被曝 を避けるのに役立つが、簡易型の測定器は誤差も大きいので注意が必要だ。千葉県柏市に住む本紙記者(43)も、市内の放射線量が首都圏では高めと聞き、インターネットで中国製という簡易型の測定器を約6万円で購入。子どもを連れて散歩する川沿いの遊歩道などを測ってみた。
川の土手で自分で測った数値は、毎時0・1マイクロ・シーベルト程度と表示された。そこで今度は、同僚記者が持っていた別の機種を借り、同時に測ってみた。すると同じように測ったのに、同僚の機械が示す値は同0・3マイクロ・シーベルト以上と、約3倍開きがあった。
測定器によって、どうして、こんな差が生じるのだろうか。
高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)教授の野尻美保子さんによると、業務用の測定器は出荷前に1台ずつ正しい値を示す機械と同時に測り、値の調整をしている。これを「校正」と呼んでいるが、簡易型の測定器は校正をしていないものが多いという。
「特に毎時0・2マイクロ・シーベルト以下の低い線量を測る時は、機械の内部から出るノイズ(雑音)を拾ったり、自然界にある微量の放射線を実際より高く測ったりするので、値が高めに表示されやすい」と野尻さんは指摘する。
今年6月、野尻さんたち同研究機構の研究者は、東京・秋葉原で、市民が購入した簡易型の測定器の精度を測る会にアドバイザーとして参加。実験用のセシウム密封線源を中央に置き、一斉に測定を開始した。
集まったのは、日本製のほか、米、独、仏、中国、ロシア、ウクライナ製などの簡易型測定器約40台。毎時0・60、0・20、0・10マイクロ・シーベルトの放射線を測ったが、すべて正確に表示したのは1台もなかった。
毎時0・10マイクロ・シーベルトを0・09~0・23、同0・20マイクロ・シーベルトを0・15~0・44と表示し、最大で2倍以上の差があった。多くの機械が実際より高めに表示する傾向がみられた。
首都大学東京教授、福士政広さんは「簡易型の測定器は、30%くらいの誤差はあるので、自分で測った値は目安として考えてほしい」と話す。
ただ、機械の誤差は減らせなくても、測り方に気をつけることで、測定時の誤差を減らすことはできるという。次回は、簡易型の測定器を使った測り方のコツを紹介しよう。
(2011年8月16日 読売新聞)
シリーズ
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