深沢明人 プロフィール
(ふかざわ・あきと)
一勤労者。
日々の思いを綴っています。
ちまたの旬な話題から、日本の未来像を問うテーマまで。
見出しから当然、アンケートか何かの結果、菅が第何位なのかが語られているのだろうと思いきや、記者の主観から菅は最悪の首相だったと述べられているだけの、詐欺のような記事だった。歴史観に齟齬をきたした?「齟齬」とは、物事がうまくかみ合わないこと、食い違うことを言う。藤井が歴史観に齟齬をきたしたって何だ。何と何が食い違っているというのか。意味もわからずに小利口ぶって誤用する記者も記者なら、これを通す校閲も校閲だ。
菅政権とはいかなる政権だったのか。これに関連し首相補佐官の藤井裕久氏は先月31日、民放テレビ番組で「最後は歴史が評価する。悪いことばかりじゃない。戦後32人の首相がいるが、パッと見て12〜13人は菅さんより下だ」と述べた。
歴史に造詣が深いとされる藤井氏とは思えない発言だ。小沢一郎元民主党代表の「側近」から「反小沢派のご意見番」へと、立場を180度変転させる中で歴史観にも齟齬(そご)をきたしたのではないか。
菅首相より評価の劣る歴代首相とは誰だろう。旧大蔵省出身で財政規律を重視する藤井氏が自民、新進、自由などの各党を経て「民・由合併」へ至った経歴からすると、まず野党として対峙(たいじ)した森喜朗元首相以降の5人の自民党首相が該当すると思われる。勝手な憶測で話を進めるなよ。藤井が野党として対峙したからといって評価に値しないとは限らないし、藤井が閣僚として支えたからといって高評価に値するとも言えないだろう。何を言っているんだろうこの記者は。
その他7〜8人の候補には、高度成長期を担った本格政権や長期政権、藤井氏が閣僚として支えた首相らを除く、片山哲、芦田均、石橋湛山、三木武夫、鈴木善幸、宇野宗佑、村山富市の各氏あたりが恐らく挙がるのではないか。多くは占領期の混乱や健康問題、政争の中で短命政権に終わった首相だ。
人格者として与党内や国民から慕われた人物も少なくない。在任2カ月余の石橋、宇野の両元首相との比較は土台無理がある。残る元首相は実績、人格両方において、まず菅氏を下回る者はない。そもそも官房副長官や首相補佐官として菅氏を支えた藤井氏自ら、32人の戦後歴代首相の中で菅氏を「中の下」と評していること自体が何よりの証拠ではないか。この記事を書いた森山昌秀記者が石橋と宇野を除く歴代首相のうち「実績、人格両方において、まず菅氏を下回る者はない。」と考えるのは彼の自由だ。しかし、藤井が菅を「中の下」と評していることがその「何よりの証拠」だと述べているのは、何を言っているのかさっぱりわからない。支離滅裂としか言いようがない。
政権就任後、消費税をめぐる場当たり発言から参院選で惨敗し、中国漁船衝突事件では法をねじ曲げて対応、ロシア大統領初の北方領土訪問を許した。これらが森山が菅を最低ランクだとする理由だが、参院選大敗の要因は必ずしも消費税発言のみだとは言えないし(民主党政権自体への失望感と前回衆院選で勝たせすぎたことへの反動では)、中国漁船衝突事件では法をねじ曲げてなどいないし(法に基づいて釈放し起訴猶予としている)、ロシア大統領が北方領土を訪問するのはロシアの勝手だし、その要因はわが国が4島返還論に固執して問題が全く前進しないこと(私はそれでもいいと思っているが)に加え、前原外相の「不法占拠」発言に見られる産経流の強硬論にあるのではないか。 私には、菅政権のこの1年余で、わが国がどこまでも落ちていったなどという印象はない。逆に上昇したという感じも全くないが。震災や原発事故への対応も、たしかに手際が良かったとは決して言えないが、菅以外の誰が首相であっても菅よりはうまくやれたはずだなどとお気楽に言うことは私にはできない。
首相の伸子夫人は菅政権発足直後、「あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの」というタイトルの著書を出版したが、程なく国民は「あなたが総理になって、いったい日本はどこまで落ちるの」との思いが増すばかりだった。
東日本大震災や福島原発事故での対応の不手際は、もはや説明を要しまい。退陣発言は、1年余にわたる無為無策で国会や霞が関、国民から見放され、「万事休す」となった政権の末路に他ならない。
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