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日本の原発産業めぐるスキャンダル、次々と明るみに


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 【佐賀】福島第1原子力発電所の事故は、日本の原子力発電を大きく後退させた。だが、電力業界が事故後に、原発に対する支持を維持するべく行った対応のほうが、業界に対する信頼をより大きく揺るがした可能性がある。

イメージ Reuters

東京で抗議デモを行う福島県の人々(12日)

 政府の規制当局や電力会社が、各地の原発に関する公開討論会を操作しようとしていたことがここ数週間で明らかになり、停止している原発の再稼働に急ブレーキがかけられた。

 論争の発端は、定期点検のため停止していた原発の再稼働を議論するため、6月に佐賀県で開かれた説明会で、九州電力が議論を短縮しようと「やらせメール」を依頼したことだった。その後、佐賀県知事が電力会社の経営陣に対して、原発賛成の意見を促すようアドバイスしたことがわかり、人々の怒りはさらに高まった。

 これをきっかけに日本政府による調査が実施され、日本の大手電力会社が日本国中で意見を操作しようとしていたことが明らかになった。すると、電力会社数社が逆に、そもそも規制当局がそうした行為を促していたと指摘した。

 この「にせ草の根運動」には、討論会に支持者を送り込むことから、電子メールの送信を指示することまでさまざまなものがあった。そうした行為がいまになって裏目に出て人々の怒りを買い、定期点検のため5カ月間止まっている原子炉の再稼働を困難にしている。

 6月の政府主催の説明会に招かれた、数少ない地元住民の一人は、参加した説明会が原発推進のためのものだったと分かり、非常に後味が悪いと話す。九州電力が地元の信頼を回復するには、長い時間がかかるだろうという。

 説明会では、原子炉の再稼働に賛成の意見が286、反対意見が163寄せられた。国内メディアの報道によると、賛成意見のうち140以上が九州電力から圧力を受けて送られたもので、その数により賛成と反対の票が逆転した。ここで得られた「コンセンサス」を理由の一つとして、政府が再稼働に向けて動き出すこととなった。

 6月27日に発表された経済産業省の資料によると、合計7社の電力会社が、2005年以来各地の公開討論会に社員を送り込み、聴衆の半分を占めるまでにしてきたという。

 中部電力と四国電力は、原子力安全・保安院からそうするよう指示を受けたと話した。海江田万里経済産業相は、そうした行為が行われたことを認め、謝罪した。野党議員から原発の不祥事が拡大していることを激しく非難された海江田経産相は、議会審理の場で泣き崩れた。

 そして、九州電力の6月の説明会での意見の操作は、保守色の強い佐賀においても、原発に対する信頼を揺さぶっている。

 佐賀在住の25歳の女性会社員は、福島の事故の前は原発について考えたことはなかったが、今はとても心配だと話す。原子力を放棄している国もあるのだから、日本もそうすべきだという。

 佐賀県の古川康知事も非難を受けているが、辞任は拒んでいる。地元の反原発団体は、先週も抗議デモを実施。知事の辞任と玄海原発の閉鎖を求める横断幕を掲げながら、佐賀県庁の周りを20名ほどで行進した。

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