名古屋市が誘致し、来年4月に開校を予定している不登校対応の私立中学校「星槎(せいさ)名古屋中学校」(仮称)の開校準備が遅れている。私学関係者でつくる審議会で「隔離につながる」などと異論が相次ぎ、生徒募集も始まっていない。
名古屋市教育委員会が、私立中学校誘致を表明したのは昨年7月のことだ。
市内の不登校の生徒は2007〜09年度で毎年1300人ほどいたが、学校に通えるようになったのは35%前後。そこで、教育課程を柔軟に編成して進学を後押ししようと、「受け皿の一つ」として発案。公募で、同様の中学校を運営する学校法人国際学園(横浜市)を選んだ。
ところが、3月の愛知県私立学校審議会で、委員から「不登校の生徒の隔離につながらないか」「不登校の生徒への対応は、公立が担うべきだ」などの意見が出て、設置計画の承認は9月に持ち越された。
星槎名古屋中は、名古屋駅に近い旧市立六反小学校(同市中村区)の土地と校舎を年間約1千万円で借り、初年度に150人を募集。3年目以降は270人に増やす計画だが、審議会が認めないと、県に設置認可を申請できず、生徒募集やPRもできない。
審議会は愛知県内の学校法人理事長を中心に20人で構成する。関係者の間では当初から「遠方でなじみのない学校法人の新規参入はすんなり通さないだろう」との見方があった。
95年4月に開校した不登校向けの全寮制の黄柳野(つげの)高校(愛知県新城市)の場合も、93年の審議会が「財源不足」を理由に94年の開校は認められないと答申。開校が1年後にずれ込んだ。
審議会では今回、「不登校の生徒を確保できるのか」との指摘も出た。国際学園が横浜市旭区で運営する星槎中学校では毎年、定員の2、3倍の応募があり、生徒集めには自信をのぞかせる。国際学園の角木(かどき)孝生理事は「9月の審議会でも認められないと、来春の開校に間に合わない。学校の意義を理解してもらいたい」と話す。
来年度から中学校で武道が必修科目となる。柔道を選ぶケースが一番多いと見られているが、柔道家としても知られる二村雄次医師は、安全対策が不十分として、このままの必修化に警告を発している。