【大連支局】中国遼寧省大連市で14日、市郊外にある化学工場の移転を求める市民ら１万人以上が市政府前に集まり、抗議活動を行った。デモ発生を受けて大連市の共産党委員会と市政府は同日、工場の即時操業停止を指示。工場を移転させることも確約した。

　市などの発表を中国国営通信の新華社が伝えた。抗議行動への参加者は約１万2000人。市民らが移転を要求したのは大連福佳大化石油化工のパラキシレン（ＰＸ）工場。パラキシレンはポリエステル繊維などの原料となるが、吸入すれば人体に有害な影響を与える物資とされる。今月８日に台風が接近した際に、同社の工場近くの防波堤が決壊。有毒物質が流出する恐れから住民らが避難する騒ぎとなった。

　８日の騒動を受けてインターネット上では工場移転を求める書き込みが続出。14日午前10時に市政府前に集合するようにとの呼びかけもなされた。これに応じる格好で抗議デモは同日午前に市政府庁舎前で始まった。市民らは「福佳大化は出ていけ」「我々は生存、環境を求める」などと書かれた横断幕を掲げて参加した。

　集まった市民らに対し、市トップの唐軍・共産党党委書記や李万才市長が工場移転の方針を提示。だが、市民らは明確な移転の日程や手順を求め、一部が座り込みを続けたほか、市内繁華街に場所を移しながら抗議活動を継続した。これを受けて、大連市党委と市政府は声明で、同工場に即時の操業停止を命じたと発表。工場を移転させるとも公約した。

　パラキシレン工場を巡っては2007年に福建省アモイ市で台湾系企業の工場建設計画に対し、地元住民が抗議行動を展開。市当局が計画撤回を決めたことがある。