「なぜ文末に『取り急ぎ用件まで』と書くのでしょうか?」
大学生の質問者の方は、当然社会人経験がありません。しかし社会人のよく参加するメーリングリストにこの「取り急ぎ用件まで」という文章が多く見られ、そう書くことがビジネスマナーなのかと疑問に感じています。
「本来、手紙を出すときには、『拝啓』で始まり『敬具』で終わるなど、細かい礼節があります。それを省略した手紙だと『前略』とか『取り急ぎ〜』と書いて『本当はちゃんと形式にのっとらないといけないけど、ごめんね〜』的なかたちで使っています。なので、メールでもその思考(名残)で使っていると思います」(tky-nyさん)
「当り前のマナーではないと思います。文字通り、取り急ぎ用件だけ知らせたいときに書くものだと思います。内容について詳細を検討していないので問題があるかもしれません。詳細についてはあとから連絡しますので概略だけ先に伝えますといったエクスキューズが含まれている」(water-cooledさん)
「私でもごくたまにしか見ません。本当に火急の用事で緊急で回さねばならず、あいさつの暇とかない(状態を表す)ぐらいです。担当の急な退社、訃報、突発事項などで、関係各位に正式な挨拶は置いといてただちに連絡しなければならない場合ぐらいです」(hutagoさん)
■前略・草々と同じ意味と考えられる「取り急ぎ用件まで」
似たような言い回しに、「前略」「草々」があります。前略は本来ならきちんと挨拶文をいれるところですが、ちゃんとした手順を踏めず省略します。(火急の用件の場合など)草々はあわただしいという意味の「怱々」を同じ音の草々に文字を換えたもので、ちゃんとした手順を踏まずに「あわただしくて申し訳ありません」という意味です。
「取り急ぎ用件まで」は、メールであまり拝啓・敬具などが時節の挨拶が使われなくなり、発生した表現ではないでしょうか。前略・草々もやむなく「礼節を省略する」もので、通常使用しません。特に目上の方には使用しないという方も多いでしょう。
「取り急ぎ用件まで」は、それよりはまだましだと思いますが、肝心の本文が本当に礼節を省略する内容なのかが気になります。時間がないから、面倒だからという理由で使用している方は、ただちに改めるべきかもしれませんね。
桜井 規矩之左右(Kikunozou Sakurai) →記事一覧
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