経済産業省原子力安全・保安院が国主催の原発シンポジウムで四国電力に動員と円滑な運営を依頼したとされる問題で、2日に毎日新聞の取材に応じた元保安院課長(55)は、四電だけでなく九州電力幹部に対してもシンポに社員を積極的に参加させるよう依頼したことを認めた。四電は「やらせ問題」に関する内部調査で、保安院が社員の参加を促した事実を認めた一方、九電は保安院の関与を否定している。近く設置される経産省の第三者委員会は、元課長から事情を聴いて事実関係を明らかにする方針。
2電力会社に依頼していたのは、保安院の元原子力安全広報課長。四電伊方原発でのプルサーマル発電を巡って愛媛県伊方町で開かれたシンポ(06年6月)の直前に東京支社幹部を呼び、「電力会社は当事者であり、どんどん参加して意見を出してほしい」と要請。九電幹部に対しても玄海原発でのプルサーマルを巡るシンポに関し、同様の依頼をしたことを認めた。しかし、時期など詳細については「覚えていない」と話した。シンポは05年10月に佐賀県玄海町で開かれた。
九電は2日、「本社原子力管理部幹部などに再確認したが、国から動員要請があった事実は認められない」とコメントした。九電が先月29日に公表した内部調査などで、原子力管理部幹部(プルサーマルグループ長)らが社員と協力会社員に対して「シンポへの自主的な参加と発言」(九電)を呼び掛けていたことが判明している。シンポジウム当日は一般市民を含めて626人が参加したが、このうち九電関係者は96人(15%)を占めた。元保安院課長の依頼が、こうした動員を誘発した可能性もある。【中西拓司】
毎日新聞 2011年8月2日 20時24分(最終更新 8月2日 22時35分)