2011年6月16日 21時42分 更新:6月16日 23時17分
政府の原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)は16日、福島第1原発から20キロ以上離れた地域で、放射線量が高く「ホットスポット」と呼ばれる地点を「特定避難勧奨地点」に指定し、住民の避難を支援すると発表した。
指定されるのは、警戒区域と計画的避難区域の外で、年間被ばく量が20ミリシーベルトを超える可能性がある場所。今後、詳細な調査をした上で、住居単位で来週以降に指定する。文部科学省の調査結果を踏まえ、県や関係市町村と協議して指定し、該当する世帯に個別に連絡する。今回の調査対象地域は、福島県伊達市霊山(りょうぜん)町石田地区と上小国地区、南相馬市原町区大原地区。
枝野幸男官房長官は記者会見で、「地域的な広がりはないので、一律に避難を指示したり産業活動に規制をかけたりする状況ではない」と指摘した上で、特定避難勧奨地点について「除染や近づかない、などの対応では対処が容易でない地点を住居単位で特定する」と説明。指定された場合は放射線の影響を受けやすい子供や妊婦には避難を促すとした。放射線量が低下すれば解除を柔軟に行う。
枝野氏は避難した場合の賠償に関し「政府の勧奨に基づくものなので、方向性は明らかだ」と述べ、対象になるとの認識を示した。
一方、内閣府原子力安全委員会は16日、特定避難勧奨地点の設定について「被ばく低減を図る観点から行われるものであり、差し支えない」と容認した。
そのうえで、勧奨地点を設置する場合の留意点として、(1)同地点の周辺環境のきめ細かいモニタリングを実施。場所によって放射線量の高さが異なる理由を明確にし、線量を低減する(2)被ばくを低減するために住民に実行可能な方策を示す(3)個人に線量計の携帯を求め、実際の生活で予想される被ばく量を示す(4)適切な情報公開に努める--ことを列挙。政府の原子力災対本部に対し、周辺地域に混乱を招かないよう慎重な対応を求めた。【影山哲也、比嘉洋】