2011年6月15日 20時16分 更新:6月16日 1時46分
81年の「ロス疑惑」を巡って、08年に米側に逮捕され移送先のロス市警の留置場で自殺した三浦和義元社長の妻が、ウェブサイト「YAHOO!JAPAN」掲載の記事と写真で精神的苦痛を受けたとして、提供元の産経新聞社とサイトを運営するヤフーに損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(松並重雄裁判長)は15日、「手錠姿の写真は、亡夫に対する敬愛追慕の情を受忍しがたい程度に侵害する」と述べ、両社に連帯して66万円を支払うよう命じた。
新聞社から配信された写真を掲載したことで、ヤフーが賠償を命じられたのは初。
問題となったのは、三浦元社長が死亡した08年10月、被害女性の母親の「(元社長が)知人に殺害を依頼して、巨額の保険金を詐取した」というコメントを引用して書かれた記事と、85年に警視庁に逮捕された際の連行写真。死亡の数日後に「YAHOO!ニュース」に掲載されたが、判決は写真について「20年以上前の手錠姿を掲載する必要性は認められず、不法行為に当たる」と判断。記事については「母親が信じることについては一応の理由がある」などとして請求を退けた。
ヤフー側は「新聞社側が『第三者の権利を侵害するものではない』と保証して(記事や写真を)提供しており、サイト側の過失はない」と主張したが、判決は「人格的利益を侵害する写真が掲載されないよう注意する義務を怠った」と過失を認めた。
妻の代理人を務める弘中惇一郎弁護士は「若い人を中心にデジタルニュースが主流となる中、ヤフーの賠償責任を認めた意義は大きい」と話した。ヤフー広報室は「判決文を見た上で今後の対応を検討したい」とコメントした。【伊藤一郎、野口由紀】
インターネット関連訴訟に詳しい落合洋司弁護士の話 新聞社の記事や写真を掲載したサイト運営会社の法的責任が問われたケースは極めて珍しい。米国では情報発信元の違法性が認められても掲載側に悪意がなければ免責されるが、日本はそうした法制度になっていない。