日本原子力発電敦賀原発1、2号機(福井県敦賀市)の直下にある「破砕帯」と呼ばれる軟弱な断層が、敷地内を通る活断層「浦底断層」の影響を受けて動く危険性がある――。専門家がこんな指摘をしていることが分かった。
日本原電はこの破砕帯に活動性はないとして耐震設計の対象にしてこなかった。東日本大震災を受けた評価のなかで原発への影響を再検討し、8月中に結論を出す方針だ。
危険性を指摘するのは、宇根寛・国土地理院関東地方測量部長。経済産業省原子力安全・保安院で敦賀原発の耐震性の再評価をする作業部会の委員を務める。
敦賀原発の直下にある破砕帯は水平方向に引っ張る力でできた「正断層」とされ、圧縮力でできる「逆断層」とは違い、地震を起こしたり、地震時に動いたりする可能性は低いとされていた。
しかし、4月11日、福島県浜通り地方でマグニチュード(M)7.0の地震が起きた際、正断層の井戸沢断層(長さ19キロ)が動いたことが判明。宇根部長は「日本では正断層は動かないはずだが、東日本大震災でこれまでと違う力が地殻に働くようになった。破砕帯は全国にあるが、敷地内に活断層が通る敦賀原発は特に影響を考えるべきだ」と話している。浦底断層は約4千年前に活動したとみられている。
保安院は、今後活動する可能性が否定できない断層がある場合、8月末までに報告するよう電力会社に求めている。直下で破砕帯が動くと、原発は損傷を受ける恐れがある。日本原電の広報担当者は「正断層は考慮しなくても問題ないとされていたが、再評価する」と話す。(高橋孝二)